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戦略的な提携やコラボの発表が多い11/12-16

先週のニュースを大きく分類すると、9月期の決算発表、戦略発表、製品・技術発表などに分けられる。決算発表があったのは、大日本印刷、浜松ホトニクス、タカノに続き、米国のQualcomm社、大日本スクリーン製造、ディスコなどの発表があった。

製造装置メーカーの決算では概して液晶製造装置が不調で、半導体製造装置が好調、という図式が出来上がった。ただし、要注意なのは、半導体製造装置の先行指標となるべきテスターが低迷し始めたことである。

決算発表の中でも圧巻なのは、米国の携帯電話向けチップのファブレスQualcomm社である。2007年度(9月終了)通年での売り上げは75億3000万米ドル、利益は24億7000万ドル、利益率は32.8%と特筆すべき結果である。しかし、市場での評価は期待よりも低いという。市場はQualcommにもっと高い利益率を要求していたといえる。

戦略発表では、東京エレクトロンが米コンソーシアムSEMATECHのTSV(SiP向けの貫通電極)技術プロジェクトに参加すると発表したが,ドイツのInfineon社は台湾のASEと共同で新型のLSIパッケージ開発に乗り出す。特に、ウェーハレベルBGA技術の早期実用化を進める。

このようなコラボレーションは世界中でおきている。米Freescale Semiconductor社は、中国の鉄道輸送会社であるZhuzhou CSR Times Electric社と共同で、研究所を設立したというニュースもある。両社が協力して鉄道の電力変換、制御・診断や情報システム、安全性モニタリング、パワーエレクトロニクス、テスト制御などを開発する。韓国のHynix Semiconductor社と台湾のProMOS社との共同プロジェクトの一環で、66nmDRAM生産を台湾でも始めるというニュースも流れた。第二位のDRAMメーカーのHynixはトップのSamsungを追いかけるためのコラボではあるが、Samsungは台湾への技術の流出を懸念しているという。熾烈なトップ争いを垣間見ることができる。

米国のTIは、暗号処理技術のベンチャー企業であるCenticom社からライセンス供与を受け、自社のチップに組み込むことを発表した。政府が発行する電子IDを組み込んだ暗号処理機能付きのチップとなる。

国内でもソニーが非接触IC技術「フェリカ」でオランダのNXP Semiconductor社と提携したのをはじめ、米国のeラーニング企業のBlackboard社と組み、認証カードシステムに組み込むことを狙っている。また、キヤノンは有機ELの製造装置メーカーの突起を買収することで合意したと発表している。キヤノンは以前、独自の強誘電性液晶ディスプレイを開発したが製品化に失敗したという苦い経験がある。今回、新型ディスプレイのSEDも商品化時期のめどがまだ立っていないところにこの買収による有機ELへの進出は、SEDをあきらめたか、と見られる向きもありそうだ。加えて、NECエレクトロニクスと東芝との提携のニュースもあったが、またかという印象で、真意のほどはまだわからない。常識的に考えると32nmプロセスが標準化の方向にあるのに32nmチップを単独あるいは共同で開発する意義は全くわからない。

製品・技術の発表では、センサー技術の大手、オムロンがMEMSセンサーを相次いで商品化、3年後に100億円を目指す。Intelが45nmプロセスのPenrynを発表し、AMDも同様なコンピュータチップBarcelonaを来年発表する。コンピュータチップの両者の競争は相変わらず続く。その他、LSIチップの製品発表は多い。

注目したい記事は、「半導体の一里塚(A Semiconductor Milestone)」というタイトルで、2007年には、SoC半導体チップに組み込むソフトウエアのコストが設計コストを抜くという記事である。入力検証する言語をVHDLや、Verilogといった特殊な言語からC言語で設計できるような傾向に変わってきつつあるが、これでも設計工数は大きく減らない。2013年をメドにC言語に替わる新しい言語が期待されるというが、プルダウンメニュー方式のオブジェクト指向言語でワードやエクセル感覚でLSIをプログラムしたり設計できるようにならなければ、解決には至らない(「私にも開発できるソフトウエアを作って欲しい」参照)。


分析:津田建二

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