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10年度の東芝の設備投資、2008年度並みの2000億円強になると日刊工が報道

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今日の日刊工業新聞の一面トップに「東芝、半導体投資を倍増」という記事があった。東芝が今年度(2011年3月期)の設備投資費を前年比2倍強の2000億円に増額するというもの。投資額の8割がNANDフラッシュへの投資になる。今朝のNHKニュースでも同様のニュースが報じられた。新聞各紙のトップ記事が最近NHKでも報道される傾向がある。

東芝はNANDフラッシュの生産能力向上を目的に四日市工場に新たに第5製造棟を本年7月から建設すると本日付けで発表した。2011年春の竣工を予定している。

昨年と比べると確かに増額であるが、過去と比べるとそれほど多くはない。2006年度には3500億円、2007年度には4000億円にも達した。かなり強気の設備投資ではあったが、2007年のDRAMはビスタ不況とサブプライムローン問題、2008年にはそこから派生した金融危機、リーマンショックと引きずったため、投資が裏目に出てしまった。今回は2008年度並みのレベルに抑えたということは、供給過剰を警戒していることの表れでもある。

もう一つ懸念されることは、2008年度、2009年度と設備投資を抑えたことに対する結果として、2010年度のフラッシュメモリーやDRAMは需給関係にバランスがとれていてメモリーメーカーは正当な利益を上げられる状況に来ているが、投資額が大きすぎると再びチップ単価の下落という悪夢が始まる。かといって、韓国のサムスン電子と東芝がカルテルを結ぶわけことは許されない。

フラッシュメモリーは携帯電話のNOR型から市場へ大量に受け入れられるようになり、その後デジタルカメラ、音楽プレーヤーへと応用が広がると同時に速度よりももっと大容量に、という要求に応えるためにNANDフラッシュへと発展してきた。今後ストレージは、さらに多くの携帯機器、スマートブック(超小型PC)やスマートフォンだけではなく、キンドルやiPad、e-Readerなど今後登場してくる電子ブック市場にも入り込んでいくだろう。HDDのキャッシュとしての応用も進んできている。音楽プレーヤーからビデオプレーヤーという応用にも欠かせない。ストレージは安ければ容量はいくらでも欲しいはず。こういった成長市場に向けてどのくらいの量を生産し、そのためにどのくらいの設備投資がいるのか、正確で定量的な見積はマストになる。

DRAMも好調で、NANDフラッシュと同様、単価が上がり需給バランスがとれるようになってきた。エルピーダメモリの2010年3月期における業績は200億円弱の黒字になりそうだと3月17日の日本経済新聞が報じている。2009年度の第3四半期(10〜12月)は304億円の黒字を計上、第1四半期の赤字分をカバーすることになりそうだ。1年間でようやく黒字化してもDRAMなどのメモリービジネスは設備投資に手を抜くことは許されない。

目を離せないメーカーとして、EMS(electronics manufacturing service)の鴻海精密工業(Hon Hai Precision英語名Foxconn Technology)である。台湾に本拠を持つ鴻海精密はEMSメーカーとしてトップをゆく。傘下に群創光電というディスプレイメーカーを持つが、液晶テレビ用のディスプレイメーカーの奇美電子(Chi Mei Optoelectronics)と中小パネル向けのメーカー統宝光電を買収、合併させ台湾最大のLCDパネルメーカーを誕生させた。3月19日の日経新聞にその記事が掲載された。新しい会社名は世界的にもブランド力の高い奇美電子とした。

鴻海精密が目を離せないのは、独特のビジネス観を持ち、いつまでたっても成長への情熱を失わない企業だからだ。1990年初め、まだケーブルやコネクタなどパソコンのアクセサリ製品を製造していたころ中国の深せんで取材した。そのころ、台湾では人件費がもはや耐えられないレベルになり深せんに進出、IBM互換機PCだけではなくマッキントッシュPCのアクセサリ製品に拡張、上海にも工場を建設した。中国への溶け込みにいち早く成功し、2000年前後からEMS事業を手掛けた。2002年のEMSランキング(Electronic Business誌調べ)では社員一人当たりの売上額が2〜3億円と、飛びぬけて高かった。その後、瞬く間にEMS事業のトップにランクインされ、今後の挙動が注目されていた。

(2010/03/23)

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