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電池の共同開発、電池サイズの標準化、充電設備など電気自動車開発が加速

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先週は電気自動車一色の週であった。週末には、慶応大学発の電気自動車ベンチャーであるシムドライブが推進する標準プラットフォームを利用する自動車の試作に34もの企業や自治体が参加するというニュースがあった。欧州からEU一体で電池を共同開発、充電施設などのインフラ形成を急ぐ、など電気自動車の開発が加速していることがはっきりした。

商品化された電気自動車 左は三菱自動車のアイミーブ、右はスバルプラグインステラ

商品化された電気自動車 左は三菱自動車のアイミーブ、右はスバルプラグインステラ


慶応大学教授であり、シムドライブの代表取締役社長でもある清水浩氏が推進する電気自動車は、インホイールモーター方式と呼ばれる、車輪ごとにモーターを組み込みそれぞれ独立で動かす方式を利用する。最大のメリットは走行距離を伸ばすこと。清水氏によると従来の電気自動車よりも30〜50%走行距離は延びるという。さらに、モーターは内燃エンジンと違ってトルクが大きいため加速性能が良い。しかも車輪を増やすほど推進エネルギー当たりの電力が少ないという、いわば省エネ性能が増す。このため6輪、8輪の乗用車がありうる。ここに半導体の大きな市場が見えてくる。

清水氏のビジネスは、さまざまな自動車関係の企業や機関が集まり、試作車を作り、そのノウハウを持ちかえることができるというもの。試作車はインホイールモーター部分以外にも電池収容プラットフォームを確立する。電池を収納する筐体をプラットフォームとして標準化することで車体の形やデザイン、それらに伴う「燃費」などで差別化を図ることができる。そのために電池の大きさを標準化する必要がある。ここにも電池制御ASSPの巨大な市場が見えてくる。

34社の参加料は1社当たり2000万円。参加メンバーには自動車メーカー、電池メーカー、材料メーカーなど自動車製作に必要な企業がずらりと並んだ。2013年には自動車メーカーが量産できるまでのノウハウを積んでいく。

欧州連合(EU)も日本や中国に負けるまいとEU一体で電気自動車を開発するというニュースが1月22日の日本経済新聞で報道された。これは欧州議会においてスペインのサバテロ首相が記者会見し、EU域内の官民が一体となって電気自動車向け電池を開発する計画があることを明らかにしたもの。欧州では、電気自動車向けの充電設備やインフラが進んできているものの、電池技術で日本に遅れていると意識しているため、電池開発などでEUが結束する必要があると述べたという。

フランス電力公社は2011年からパリなどの大都市で充電施設を整備する。充電スタンドと自動車との間で支払情報のやり取りを行う通信技術を実用化するとしている。さらにドイツの電力会社RWEパワー社はフランスのルノーと組み2011年に向けて充電スタンドを整備する。オランダでは国内電力会社10社が共同出資して充電スタンドをはじめとするインフラ整備のためのファンドを設立した。スウェーデンでも電力会社とボルボが共同で充電スタンド網を整備する。デンマークでも電力会社とルノー、IBMと共同で風力発電による充電実験を始めたと伝えている。

こういった欧州の動きに対して、日本でも三菱商事と三菱地所が電気自動車向けの充電施設を1000カ所作ると発表し、事業を推進するための協議会を発足させると新聞は伝えた。東京-新潟間の関越自動車道沿いに充電器を設置したり、サービスエリアや高速道路の出入り口付近に急速充電設備を置いたりする計画だ。さらに、東京都心と首都圏の空港を結ぶルートや、首都圏と中部圏を結ぶルートなどにも順次拡大していく方針だという。

もう一つの動きとして、パソコン需要が立ち上がるというニュースがある。3年前に「ビスタ不況」でパソコンが伸びなかった状況に「金融不況」が追い打ちをかけ、ここ2年間パソコン市場は成長が止まっていたが、企業の買い替え需要が本格化し、さらに新興国での小型・低価格パソコンが急速に回復してきている。HDDメーカーの日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)が中国の深せんとタイの工場に設備投資を行い、2010年に前年の2倍に当たる400億円をつぎ込み生産能力を10〜15%増強する。東芝は四日市工場に1500億円を投じてSSD用のフラッシュメモリーを増産する。SSDは、国内とフィリピンの組み立て工場の生産能力を現在の2倍に当たる240万台に引き上げる。

(2010/01/25)

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