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製造装置産業の新工場建設・稼働で回復へ、懸念材料はドバイ・バブルの崩壊

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半導体製造装置市場がゆっくりだが、着実に回復している。先週のニュースでは、製造装置の新工場建設、新工場稼働の発表があり、また半導体製造装置の応用製品である液晶製造装置の中国市場への取り組みがニュースとして報道された。景気後退の懸念材料は「ドバイ・バブルの崩壊」が表面化してきたことだ。

11月27日の日本経済新聞は、東京エレクトロンが昨年12月に一時凍結した仙台市近郊での半導体製造装置の新工場建設を今年度中にも再開する方針を固めた、と報じた。半導体市況が回復し、世界の半導体メーカーが設備投資を再開、製造装置の受注状況が改善しているため。新工場の投資金額は200億〜300億円。隣接の研究所と合わせ、仙台地区を装置の開発から生産までを手掛ける一貫拠点にするとしている。東京エレクトロンは7~9月期の受注額が倍増し、黒字化が見えてきたとして、今後の需要増に応える準備をする。

その前日には、JSRが次世代半導体向けの回路形成材料の新工場を稼働したと発表した。四日市工場(三重県四日市市)で約40億円を投資して新設したラインで、半導体メーカー向けに出荷を開始した。生産を開始したのはArFリソグラフィに対応した感光性樹脂のレジスト、保護膜に使う液浸露光用上層膜材料、塗布型ハードマスク材料など。新工場は半導体関連素材を幅広く製造する多機能工場となる。

半導体製造装置各社が中国での需要拡大を見据えて液晶製造装置事業を拡充すると11月26日の日刊工業新聞は報じた。ニコンは2010年から液晶露光装置を中国で発売、芝浦メカトロニクスはチップ・オン・グラス(COG)の実装機に参入するという。中国では家電下郷政策が奏功し、液晶テレビ需要が急増、パネル新工場計画が相次ぐ。ニコンは中国の複数社と商談に入り、今後、半導体露光装置の事業拠点に液晶関係担当者を配置し、10年度から供給を始めるとしている。芝浦メカトロは中小型パネル液晶ドライバICをパネルのガラス面上に作り込むモジュール製造用のCOG装置を開発。台湾の液晶パネルメーカーに試験納入した模様だと伝えている。 

海外では、世界最大手の米アプライドマテリアルズが米セミツールを買収すると発表した。TOB(株式公開買い付け)により、発行済み株式の66.7%以上を確保する。買収総額は3億6400万ドル。Cu配線用の銅メッキ技術を持つセミツールを取り込み、事業領域の拡大を図る。アプライドは今後、特にDRAMで銅配線の需要が高まると判断した。この買収合併は製造装置産業の業界再編の一環という位置付けもできる。

半導体製造装置を発注する国内半導体メーカーはゆっくりだが、稼働率が高まるようだ。日刊工業新聞は11月26日、NECエレクトロニクスが2010年1-3月期にNECセミコンダクターズ山形(山形県鶴岡市)の直径300mmウェーハラインの稼働率(出荷ベース)が7割程度まで回復する見通しを明らかにしたと報じた。NECは、7月後半からウェーハ投入量を約半分に抑えており、10-12月期の稼働率は5割強にとどまる見通しで、回復の動きは極めて遅い。

今後の懸念材料は、11月27日金曜日に円高ドル安の1ドル84円という円高に一時的になったことだ。新聞報道によると、これはドバイの政府系持ち株会社「ドバイワールド」が債務の返済猶予を申請したことで、ドバイの信用不安が広がったことに端を発し、欧州ユーロが下落、米ドルよりもマシな円買いに走ったために円高になった模様だ。株価は欧州・米国のみならず日本株にまで影響が及び下落した。

これまでビル建設ラッシュで、中東経済をけん引してきたドバイのバブルが遅れてはじけた格好だ。ビル建設はぴたりと止まったと日経新聞は報じている。

海外からみると日本の金融は他の地域と比べるとマシなため、何か不安材料があるとすぐに円買いに走り円高になってきた。しかし輸出志向の製造業は円高で収支が悪くなるため、金融業界のしわ寄せが製造業に来ていると言っても過言ではない。結局、迷惑をこうむるのは製造業であり、世界との競争力低下をどう防ぐかが、政府の腕の見せ所になるはずだ。

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