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グーグルのクロムOSは半導体メーカーにとってビッグチャンス、生かせるか

先週のニュースで最大のインパクトはグーグルが新型OSを発表、これを搭載する小型ノートパソコンが来年にも出てくる、というニュースだろう。ネットブックあるいはスマートブックにおけるOSとして、ウィンドウズやLinuxがあるものの、新しくかつ無料のOSとして期待がかかる。もう一つ大きなニュースは沖データがルネサスの高崎工場の一部を買い取ったこと。

グーグルはChromeという名称のブラウザソフトウェアを無償で提供していた。同じ名前のOSを今度はパソコンのOS用として年内にソースコードを公開する。正式名称は、「グーグルクロムOS」。これまでブラウザソフトとして、軽くて速く、使いやすいという特長を前面に打ち出したクロムをさらに進化させてOSまで設計したもの。軽いという特長を持つため、電源をオンしてからブラウザなどの初期画面の立ち上げにかかる時間を数秒で済ませられるとしている。

携帯電話や軽いネットブックなどにはやはり無償のアンドロイドプラットフォームを使い、ノートパソコンやデスクトップ用途にはクロムOSを使うという、使い分けをグーグルは最初から想定している。

クロムOSを搭載するパソコンメーカーには、米HPや台湾のエイサー、中国のレノボ、台湾アサス、東芝という名前が連なるが、半導体メーカーにはクアルコムとテキサスインスツルメンツ、フリースケールセミコンダクタという米国のメーカーしか発表されていない。軽くて速く使いやすいという新型OSで動くマイクロプロセッサ、メモリーや周辺回路をプロセッサとつなぐノースブリッジやサウスブリッジのチップセットなど、大きなビジネス機会がある。残念ながらここにはルネサスとNECエレの名前がない。例えばクロムOSで動くSHやV850などが生まれると新しいノートパソコンをはじめ各種の組み込み機器が面白くなりそうだ。

一方、これまでマイコン開発を自社だけで閉じこもって開発してきた東芝や富士通、エプソンにとってオープン作戦へと移行できる新しい機会になる。これをチャンスとして捉え、マイクロソフトの牙城であった重いパソコンOSに代わり、ノートパソコンやスマートブックなど軽いパソコンOS用のプロセッサを生み出すビッグチャンスでもある。ここでは、いかにオープンにしてそのプロセッサとつなげられるチップセットとの共通バスを規格化するか、も重要なポイントとなる。

携帯電話や組み込み機器のプロセッサメーカーであるARMは、そのプロセッサIPを使ったマイクロコントローラ(マイコン)市場にも力を入れている。NECエレやルネサスにとっても、うかうかしていられない。新しい市場を開拓し、攻め込んでいかなければ、座して死を待つことにもなりかねない。

OKIデータとルネサステクノロジは、100%子会社である沖デジタルイメージングが、やはり100%子会社のルネサス東日本セミコンダクタ群馬開発デバイス本部の旧半導体前工程ラインの土地と建物・用役設備を買い取ることに合意した。3,521平方メートルの土地とそれよりも広い9,043平方メートルの建屋のうち、クリーンルームの面積は2,760平方メートルで、沖デジタルイメージングが持つクリーンルームの2倍と広く、沖グループにとってLEDプリンタやLED応用製品を強化するのに最適とみている。

沖デジタルイメージングは、シリコンCMOSICの上にGaAsLEDを集積する技術をLEDプリンタ向けに開発しており、クリーンルームは不可欠。これは厚さ2μmのGaAsのエピタキシャル薄膜をシリコンのCMOSウェーハ上に貼り付ける技術で、分子間力によってシリコンとGaAs薄膜を接合させるというもの。LEDとCMOS回路との間をつないでいたボンディングワイヤーが不要になり回路面積が小さくなる。

沖グループは、この独自技術を生かし、LEDプリンタだけではなく、小型のLEDディスプレイにも応用する。沖グループにとって、ルネサスが不要になった土地や建物、設備を利用できるため、低コストで工場を拡張できることに等しい。一方、ルネサスは不要になった土地と建物を売却できるため、今回の合意は双方にとってウィンウィンの関係になっている。このルネサス側のラインは2007年10月に閉鎖していた。

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