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Bluetoothは今後5年間でなぜ9%も成長するのか

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Bluetoothデバイスは、これまでの5年間よりはこれからの5年間の方がもっと成長する。こういった見方をBluetooth SIG(Special Interest Group)が発表した(図1)。これまで単なる近距離通信規格でしかなかったBluetoothが位置検出技術や、電子棚札(ESL)などへとその応用を広げているからだ。2023年から2027年までの成長率は9%になるという。

Total Annual Bluetooth Device Shipments / Bluetooth SIG

図1 Bluetoothを搭載したデバイスの出荷数 27年に76億個に 出典:Bluetooth SIG


Bluetooth SIGは、2018年から2022年までのCAGR(年平均成長率)は6.6%という実績
を示したが、2023年から27年までには8.9%に跳ね上がると予想する(参考資料1)。なぜこれほど強気の予想ができるのか。Bluetooth技術が性能や使い勝手、消費電力など進化すると同時に、それを使う応用を拡大しているからだ。応用をこれから見ていこう。

近距離通信としてのBluetoothには、従来からあるBluetooth Classicから低消費電力のBluetooth LE(Low Energy)版の二つの規格がある。古いパソコンやスマホともつなげるような場合にはClassicを、最近の低消費電力を求める場合はLEを使うが、チップとしては両方に対応するICもある。ただ、2027年までには全Bluetoothデバイスの97%がBluetooth LEに変わるだろうと予測する。

Bluetoothはかつて、クルマを運転中、イヤホンあるいはハンズフリーでハンドルを両手で操作しながら通話するために使われた。特に、運転しながら通話する片手運転に飲酒運転並みの罰則が設けられている欧州で先行した。米国では、イヤホンとつないでスマホを持たずに通話するビジネスシーンが流行していた。日本はクルマの運転での通話の罰則が緩かったためBluetoothの普及は遅れた。しかしスマートフォンが導入されてからは日本でもBluetoothデバイスが広がってきた。

スマホ通話はBluetoothによるワイヤレスイヤホンが当たり前になり、さらにAuracastによる音声のブロードキャストが昨年リリースされた。これはAuracastをインストールしているスマホやパソコンから複数の人たちが音楽を共有できるというもの。友達や恋人同士で同じ音楽を自分のイヤホンで聴けるという楽しみ方ができる。

さらにセミコンポータルでも最近紹介したように、電子棚札(ESL)に使う応用が提案され、スーパーマーケットやコンビニ、家電量販店など小売店の値札として自由に書き換えられる用途で普及し始めている(参考資料2)。

電子棚札のようなIoTデバイスへの応用では、Bluetooth Meshというネットワークが使えるようになっており、ビル内の大きな部屋で様々な照明器具に取り付けた多数のIoTデバイスを結ぶ応用で使われている。いわばスマート照明で、太陽光の当たらないところだけ照明を強くすることで電力の削減を実現している。広いオフィスやショッピングモール、工場などで使われている。Bluetoothを使うネットワークデバイスは2023-27年の5年間で21%のCAGRが見込まれており(図2)、27年には16.3億個のデバイスに使われると見ている。


Annual Bluetooth Device Networks Shipments / Bluetooth SIG

図2 Bluetooth Meshネットワークを利用するデバイスは16.3億個に急成長しそうだ 出典:Bluetooth SIG


さらに衛星からの電波が入りにくい建物の中や地下などでの位置情報を得るためにもBluetooth技術が使われている。これは4〜5台の受信機あるいは発信機を予め並べて配置しておき、別のBluetoothデバイスが近づくと、アレイ状に並べた受信機または送信機がBluetoothデバイスの信号を送信または受信するとその向き(角度)が受信機あるいは送信機で異なることから距離の精度を上げられるという位置検出の応用である(参考資料3)。

Bluetoothは、建物の施錠・解錠のデジタルキーとしても使われている。家庭やビルの玄関口からレンタカーやカーシェアリングなどのクルマにも使われ始めている。これは個人を特定するスマホだからできる応用といえる。

Bluetooth LE PHYは、高速のデータレートを実現する技術であり、大きなメディアのストリーミングや、IoTデータレートを高速にしたいという要求にも応えられるようになってきた。今のところ最高2MbpsのBluetooth LE 2M PHYの仕様が使われているが、8Mbpsまで対応できるような仕様を決めるプロジェクトが始まっている。

さらに今後は、現在の2.45GHzという無免許周波数帯に加えて、やはり免許のいらない6GHz帯の周波数を利用する新しいBluetoothの仕様の検討も始まっている。Bluetoothの進化はいつまでも止まらない。

参考資料
1. "2023 Bluetooth Market Update", A Letter from the CEO, Bluetooth SIG (2023/04)
2. 「IoTシステムで小売店舗の売り上げ増を支援するSES-imagotag社」、セミコンポータル (2023/04/07)
3. 「センチメートルの位置精度で進化を続けるBluetooth」、セミコンポータル (2020/05/13)

(2023/04/14)

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