2020年のファブレス半導体ランキング、トップ10社は26%成長
2020年における世界ファブレス半導体メーカーのランキングが発表された。QualcommがBroadcomから再び首位を取り戻し、前年比33.7%増の194億700万ドル(約2兆円強)となった。トップ10ファブレス半導体の合計成長率は同26.4%という数字になった。このランキングは市場調査会社TrendForceが発表したもの。
表1 2020年ファブレストップ10社ランキング 出典:TrendForce
2020年前半は、新型コロナウイルスの影響で半導体工場が休止したり、半導体の応用としての自動車メーカーが生産工場を休止したりするなど、マイナスの要素が大きかった。しかし、テレワーク(WFH)やテレ教育といったリモートワークが常態化したために、パソコンやタブレット、ネットワーク機器、データセンター、家電などが潤った。同時にスマートフォンも徐々に回復してきた。そのような中で、米中貿易戦争が起き、9月15日以降、エンティティリストに載った華為への部品供給が事実上止まった。その分、小米やOppo、Vivoなどの中国のスマホメーカーへの5G用半導体供給が急増した。
この中でWFHをたっぷり享受したのがNvidiaだ。ゲーム機やゲーム用のグラフィックアクセラレータカード、さらにデータセンター需要も重なって52.2%も成長、売上額は154億1200万ドルと大きく伸ばした。データセンターでのサーバを増設する場合のネットワーク機能を上げるMellanox社を買収し手に入れたことが大きい。これにより同社のGPUを多数並列動作させることができ、データセンターの演算能力を増強できるようになった。同社のデータセンター向けの売り上げは、何と前年の2倍以上の121.2%増の64億ドルとなった。
トップのQualcommの伸びは、Appleとの間でのモデムチップ(ベースバンドIC)に関する特許係争に終止符を打ち、Appleからの売り上げが大きく増えたことによる。Appleはモデム特許料が高すぎるとして係争中、Intelの5Gチップを使おうとしていたが、残念ながらIntelの5Gモデムは生産が間に合わなかった。このため、Qualcommのモデムを再び使うことを決めた。同時にIntelは5Gモデムの生産を停止した。片やAppleは独自にモデムを設計開発中であり、設計が終わり実際に機能を確認した暁には、再びQualcommを切り捨てることになろう。表1ではQualcommの売上額の中に特許料収入は含めていない。単純にICの売上額だけを示している。
その他、AMDがIntelの市場を食い、ノートパソコンやデスクトップ、サーバ向けのCPUで45%増の97億6300万ドルを売り上げた。これもWFH需要で稼いだ事例となる。Xilinxは残念ながら米中貿易戦争の影響を受け、5.6%減の30億5300万ドルにとどまったが、TrendForceは、直近の四半期ごとの売り上げが伸びていることから回復途上にあると見ている。
台湾トップのMediaTekも37.3%増の109億2900万ドルと好調だ。5Gスマホ向けのアプリケーションプロセッサやモデムチップ、さらにはノートPCやWi-Fiをはじめとするネットワーク製品も売れ、売上額1兆円の大台に乗った。NovaTekもWFH需要で成長、ディスプレイドライバICやテレビ用ICで30.1%増の27億1200万ドルになった。残念ながら、今年もファブレス10位に日本メーカーは入っていない。
参考資料
1. 直近の世界ファブレス半導体ランキング、Qualcommがトップに返り咲き (2020/06/11)
2. ファブレス半導体市場、2020年に22%も成長 (2021/01/06)