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AIとのコンビでCMOSセンサの成長性が高まってきた

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半導体デバイスの中で、CMOSイメージセンサが大きく成長しそうだ。IC Insightsの調査によれば、2019年のCMOSセンサは前年比19%増の168億3000万ドルに成長するとみている。これは同4%増の168億8000万ドルのパワートランジスタ市場に匹敵する。2020年にはCMOSセンサが成長速度の遅いパワー半導体を抜くのは間違いなさそうだ。

表1 2019年に最高の成長が期待されるIC以外の製品群 出典:IC Insights

Record-Setting Sales Expected in 2019


表1は、IC以外の半導体製品を集めたO-S-D(Optoelectronics-Sensors & actuators-Discrete semiconductors)製品の中で成長が見込まれる製品を集めたものである。2019年に過去最高レベルに成長を見込まれているものが多い。例えば光エレクトロニクスには、これらのCMOSイメージセンサやレーザー送信機、光センサに加えて、LEDやフォトカプラ、CCDイメージセンサ、赤外線センサなどの光を感知したり放出したりする半導体製品があるが、それら全体の市場は前年比3%増の415億ドルと成長しそうだ。

この中で最も成長率の大きいCMOSイメージセンサは、これまでスマートフォンで成長してきた。今年はスマホのカメラが2眼から3眼へと増えたことがCMOSセンサ市場を大きく持ち上げた。CMOSイメージセンサ市場の中で市場シェアが約50%と最も大きいソニーもほぼ20%成長する見込みだ。10月末に行われた2019年度第2四半期決算発表において、半導体部門を含むイメージング&センシングソリューション部門は、22%増の3107億円を稼ぎ出している。しかも営業利益率は24.6%と健全な経営だ。今年度上半期でも売上額は前年同期比18.5%増の5414億円、営業利益率は23%と好調である。

今後、スマホ以外でも期待される分野が目の前にはっきりと存在する。クルマのセンサとマシンビジョンである。クルマには、人間の目に相当するカメラを10台程度搭載する。フロント2台とバックに1台、サラウンドビューモニター(4台)、左右に死角センサ2台、ドライバの顔認証カメラ1台は、すでに高級車には搭載されている。これが高級車から大衆車へと降りてくる。しかもスマホと同様、フロントカメラが長距離、中距離、短距離の3眼を搭載するとなると、1車両当たり10台を超える。

しかもクルマ用途では、CMOSセンサだけではなくレーダーやLiDARも使われるようになるが、CMOSセンサがなくなることはありえない。やはり人間の目と同様な働きをするCMOSセンサはADASの自動運転レベルを上げるにつれ、使用台数が増えていく。しかも要求事項がスマホとは違い、暗い所と明るい所をどちらもはっきり見えるようにダイナミックレンジを広げる、LEDランプの常時点灯が点滅しているように見えるフリッカーを抑える、が求められる。さらに、欧州のように通常がハイビームの地域では、ハイビームのまま対抗車のドライバだけを自動的にロービームに下げる場合でもCMOSセンサが必要となる。

マシンビジョンにはこれまでもCMOSイメージセンサが使われてきたが、撮影した映像をAI(機械学習やディープラーニング)で分析できるようになったため、カメラとAIとの組み合わせがこれから工場にどんどん入ってくる。AIと組み合わせることで例えば、ウェーハの外観検査を自動的に行えるようになり、しかも良品と不良品、あるいは現れやすい不良モードを持つ不良のウェーハなどを自動的に分類できるようになる。外観検査は、半導体工場だけではなく、食品工場、薬品のラベル検査など、絶対に検査が必要な工場や産業でマシンビジョンとAIのコンビが強力な自動化ツールとなる。

さらに、CMOSイメージセンサはこれまでRGBのカラーフィルタを通してカラー画像を表示してきたが、カラーフィルタの隣に赤外線のフィルタやフォトダイオードを画素内に置くことで、赤外像と通常の可視光映像を同時に撮影、表示できるようになる。例えば、透明な袋に入った塩と砂糖を瞬時に見分けられる。さらに赤外分光分析(スペクトロスコピー)のように赤外波長を近赤外から遠赤外にかけて徐々に変えながら光強度を観察するIRスペクトロスコピー技術で成分分析ができるようになる。ここでもAIと組み合わせれば、例えば麻薬検査の自動分析が可能になる。こういった研究開発も活発になっている。

(2019/11/15)

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