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依然として浮き沈みの激しいメモリビジネス

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メモリビジネスはかつて、浮沈が激しく、安定的な成長を得ることが難しいと言われた。実は今でも、この構造は変わっていないことが市場調査会社IC Insightsの調べでわかった。この5年間、メモリを除く半導体IC市場はプラス成長を続けてきたが、メモリ市場では今年は良いものの、15年にはマイナスを記録した。

図1 この5年間のIC市場成長率 出典:IC Insights

図1 この5年間のIC市場成長率 出典:IC Insights


半導体ビジネスが今年は絶好調だが、これはひとえにメモリビジネスの好調によるもの。メモリを含むIC市場全体では前年比22%成長になるとIC Insightsは見ているが、メモリを除くと9%増の一桁成長に落ち着く(図1)。この22%成長も年央では、16%成長とみていたため、さらに6%ポイントも伸びることが予想されるようになってきた。

図1が示すものは、IC市場は2015年には2%減を記録したが、17年には22%増となっており、メモリの変動幅の大きいことだ。メモリを除くIC市場では、2013年の2%が、翌14年3%、15年2%と、16年6%とマイナスにはなっていない。しかし、メモリを含むIC市場は15年に2%減となってしまう。これはメモリの在庫がたまってしまっていたからで、15年、16年と生産調整して増産を抑えてきた結果、17年は逆にメモリ不足になった。

17年の市場見込みがこれほどまで大きく変わるのは、生産量の拡大ではなく、DRAMやNANDフラッシュのようなメモリ単価が急上昇したことによる。DRAMの平均単価は今年77%上昇し、DRAM市場は74%増加するという。これはパソコン用DRAMの不足によりDRAM市場が78%も成長した1994年に次ぐ増加率だ。また、NANDフラッシュも平均単価が今年38%も増加したため、NANDフラッシュ市場も44%成長するだろうとみる。両者を合わせたメモリ全体では2017年には58%増になりそうだ。2018年もさらに11%増とみている。

2017年のDRAM市場が、半導体全体のビジネスの中で最大の720億ドルになりそうだという。これに対してNANDフラッシュは498億ドル、と222億ドル低い。

この差は今後も続き、やはりDRAM市場の方がNANDフラッシュ市場よりも大きいだろう。というのは、コンピュータシステムや組み込みシステムでは必ずCPUとDRAMはセットとして使うからで、NANDフラッシュはDRAMと違ってマストではないからだ。低コストで高速性を要求しない応用ならCPU+DRAMのシステムにHDD(ハードディスク装置)を使えば十分。NANDフラッシュは必要ない。スマホやデジタルカメラのような携帯機器ではストレージデバイスは、低消費電力を優先するからNANDフラッシュを使う。また、最近では金融市場に高速性を求めてHDDからSSDやNANDフラッシュを使うフラッシュストレージへとシフトしている。

しかし、一般の汎用組み込み市場では、性能よりもコストを優先するため、安いHDDで十分なので、NANDフラッシュは要らない。だから、DRAMはCPUのある所には必須だが、NANDフラッシュは必ずしも必要ではないため、市場はDRAMの方が大きいのである。

また、ICにディスクリート半導体を加えた半導体市場全体では2017年20%成長と見込んでおり、これも年央の予想15%増よりも5%ポイント上がった。ICの出荷数量も増えてきた。年央では前年比11%増と予想していたが、どうやら14%増は行きそうだという。

(2017/10/24)

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