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福岡県が日本の半導体開発をリードできるデザインセンターを開設

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福岡県が将来、日本の半導体をリードしていくかもしれない。県は、2001年からシリコンシーベルト福岡プロジェクトを開始してきたが、このほど福岡システムLSI総合開発センター内に、中小企業のためのデザインツールを揃えた「システムLSI設計開発センター」をオープンした。狙いは、自分でLSIを試作できないような中小のベンチャー企業が自分のLSIを設計開発し、試作までできるようにすることである。東京など日本の中心部にさえ、まだ存在しないような設計試作のできる半導体デザインセンターとなる。

開所式には福岡県知事の麻生渡氏まで駆けつけ、挨拶をするという熱の入れ方だ。福岡県はLSI半導体開発の重要性を認識しており、これから5年、10年のちにも確実に発展できる産業として半導体を位置付けている。福岡県内のシステムLSI関連企業はプロジェクト開始時には21社しかなかったが、161社にまで膨らんだ。このため中小企業でさえも半導体チップを開発できるように今回のLSI開発試作センターを作った。まだ企業化していないような生まれたてのベンチャーから見ると、このセンターはインキュベーションセンターとしても使える。


福岡県知事の麻生渡氏

福岡県知事の麻生渡氏


半導体の付加価値は微細化プロセスから、賢い設計、賢いアルゴリズムや付加価値の高い材料へとスマイリングカーブの両端へと移っている。このデザインセンターは、いわば賢いアイデアを具現化するための重要な施設になる。具体的にはLSI設計ブースが8室、実装設計ブースが2室ある。

LSI設計ツールは、NECシステムテクノロジーが提供する、C言語ベースのSystemCで設計できるCyberWorkBenchをはじめ、約40種類もの標準的なツールが備えられている。しかも開発期間を短縮できるツールも豊富だ。従来ならハードウエア設計が終わってからソフトウエア開発を始めていたが、VaST System Technologyの提供するComet Arch.Seatを使えばハードウエアの設計を待たずにソフトウエアの開発ができる。VaSTの提供する、ARMやSHのプロセッサコアモデルや各種のライブラリモデルを使い、C言語でのLSIの動作記述設計ができたらすぐに、ハード設計が出来ているという前提でソフトウエア開発も始める。物理設計が終わるころまでに終了し、ハードとソフトの協調設計ができる。物理設計に関しては、SynopsysのDesign CompilerやIC Compilerをベースに配置配線からタイミングシミュレーションに至る物理設計が可能である。もちろん、ケーデンスのVirtuoso物理設計ツールや、メンターのOPCツールのCalibreなどのツールも揃っている。

設計が終わると、実際の試作に移して論理設計回路がシリコン上で正しく動くかどうかの検証が必要になる。すぐさま専用ICを起こす前にFPGAやStructured ASICで動作を確認する。このセンターでは、配線のビア1層だけでカスタマイズできるASICである、eASICのデバイスを使う。これは、電子ビーム露光によるマスクレスのカスタマイズ手法であり、富士通マイクロエレクトロニクス/イー・シャトルのグループが電子ビーム装置で加工する。RTLレベルのデータをeASICのデバイスに作り込む。センターにおける各種のツールでは65nmプロセスまで対応できる。

さらに、出来たチップをパッケージに収容する場合の最先端パッケージも使える上、3次元実装もシミュレーションできる。長瀬電子サービスの提供する3次元実装のエントリーや熱、応力、電磁界などの解析を行い、インターポーザーを含めたワイヤーボンドかTSVか、など最適なパッケージの設計ができる。完成した半導体ICの特性を測る測定器はアドバンテストやアジレント、テクトロニクスなどが提供する。

麻生知事は、このLSI設計センターの活用により、半導体関係企業の数を現在の161社から、数年以内に300社にまで増やしたいと意気込んでいる。そのためには、デザインセンターを拡充する、ファウンドリを呼び込む、シャトルサービスを呼び込む、などさまざまな可能性が開けている。


(2008/10/20 セミコンポータル編集室)

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