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Makimoto’s Waveを巡る次の10年:FPGAか低価格ASICか

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旧日立製作所の専務取締役であった牧本次生氏が提唱する、Makimoto’s Waveによると、次の10年は専用化の時代になる。Makimoto’s Waveとは、専用製品と標準(汎用)製品が10年周期で切り替わるという、牧本氏が提唱したサイクルの法則である。次の10年を乗り越える手法について2つの見方が出てきた。これは、Globalpress Connection社が主催するElectronics Summit 2008でXilinxとeASICの両CEOがMakimoto’s Waveを引用し述べたもの。

Xilinx社の新CEOであるMoshe Gavrielov氏は、専用化の時代となる次の10年をソフトウエアすなわちプログラマブル手法で乗り切ると主張したのに対して、eASIC社のCEOはハードウエアすなわち専用チップで乗り切ると主張した。この二つの講演はそれぞれ発表した日は違うものの、それぞれ得意な技術を披露して、Makimoto’s Waveに対する時代に対処する方法を提案した。

Xilinx社は、プログラマブルデバイスの典型であるFPGA(field programmable gate array)のメーカーであるが、次の10年でコンピュータ(C)とコミュニケーション(C)、コンシューマ(C)が統合(convergence)するような時代になると、Gavrielov氏はいう。これまでは三つのCの分野は重要だという業界の認識ではあったが、三つが統合してしまうという考えはこれまでにはなかった。三つのCがコンバージェンスすると、パソコンは半年で古くなり1年もすると市場から消えてしまう。これまでよりももっと競争が激しくなるとみており、プログラマブルなソリューションに向いているという。加えて、ワイヤレスのベースステーションは規格変更が多くなってくるためプログラマブルが最適だとする。特に、通信の世界はもっと小さな単位のネットワーク、PicocellやFemtocellが登場してきて、新しい規格に間に合わせる必要がある。


Xilinx社CEOのMoshe Gavrielov氏

写真1 Xilinx社CEOのMoshe Gavrielov氏


これまでの応用ではFPGAにとって最も少ない民生、すなわちコンシューマ用途でも顧客の要求が目まぐるしく変わるため、プログラマブルデバイスはまだ少ないが、これからは増えてくるとみている。特に、日本ではプログラマブルな民生用とは増えていると、Gavrielov氏は言う。

ASICやASSP(application specific standard products)の専用チップの設計数は確実に減ってきている。10年以上前はASICやASSPを使う製品のライフサイクルが長かったから、専用のチップを起こしてもペイできた。しかし、今のデジタルコンバージェンス市場では、イノベーションとリスク緩和、安いライフサイクルコスト、短い開発期間が、強く求められる、と同氏は述べた。

これに対して、eASIC社CEOのRonnie Vasishta氏は、カスタムチップの最大の問題点はコストであり、カスタマイゼーションのコストを下げられればカスタム仕様はこれからでも通用するとみている。その理由として、ASICやASSPの設計件数は確かに少なくなってきているが、市場の売り上げはむしろ伸びている。つまり1個のASICの価値が上がっているからだとする。


eASIC社CEOのRonnie Vasishta氏

写真2 eASIC社CEOのRonnie Vasishta氏


Makimoto’s waveによると、次の10年は専用化の時代だということになる。この時代にカスタム設計のコストを下げて受け入れられる価格のカスタム化技術が求められていることになる。eASIC社は電子ビーム直描によるマスクレスのカスタマイゼーションを進める企業である(http://www.easic.com/)。その手段としてビア1個を利用するシングルビアによるカスタム化を提唱する。この方法は通常の9層配線ASICのうちの6層目をカスタム設計のビアとして使いカスタマイズする。設計からシリコンチップが出来上がるまで4週間で済むという。

この新しい考えのEB直描カスタムチップではすでに500万ゲートの製品を持っているという。これまでのFPGAとASIC、ASSPを置き換える技術としてVasishta氏は狙っている。消費電力はFPGAの1/10と小さいため冷却は不要だという。ちなみにEB直描を依頼するファウンドリは富士通だとしている。技術の詳細は、http://www.semiconportal.com/archive/editorial/technology/ebeasictensilicasoc.htmlを参照。

Vasishta氏は、Makimoto’s Waveの次の10年でASICとASSPのトレンドはこの10年間の設計件数の減少に対して、マスクレスの安いEB直描ASIC技術を使えば、設計件数はまた上昇傾向に変わっていくとみている。これまでの減少はあくまでもコストが高かったためだとしている。

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