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IPビジネスで成功する方法―Imagination社にみる秘訣

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SoC(システムオンチップ)に設ける回路の一部であるIP(知的財産)でビジネスに成功したという日本企業はまだいない。2〜3次元グラフィックスコアや全世界のデジタルテレビに対応する受信回路IPを販売してきた英国のImagination Technologies社がこのほど黒字への転換に成功した。プロセッサコアでは英ARM社や米Tensilica社、英ARC International社などが手掛けているが、プロセッサ以外のコアで成功したところは珍しい。秘訣は何か。

Imaginationは2008年4月末での2007年度売り上げは6000万ポンド(129億円;1ポンド=215円で換算)と対前年比25%増加、税引き前利益190万ポンドとIPビジネスへビジネスモデルを転換して2度目の黒字に転換した。最初はセガエンタープライズのドリームキャストが大ヒットしたおかげでそのハードウエア用に設計したグラフィックスがヒットしたときである。セガだけに頼りっきりであったため、企業として健全な財務状況ではなかった。「黒字化を達成した今回は、20社以上もの多数のユーザーを抱えている点が大きく違う」、と同社CEOのHossein Yassaie氏は語る。


Imagination社CEOのHossein Yassaie氏

Imagination社CEOのHossein Yassaie氏


なぜ、IPベンダーの黒字化が重要か。ARMのようなIPベンダーの先駆者のビジネスモデルは、ライセンス収入とロイヤルティ収入、サービス収入からなる。ライセンスは、IPを使ってSoCを組み込むための収入、ロイヤルティ収入は、そのSoCを量産すると定期的に受け取る収入、サービス収入はIPのカスタマイズや修正などの収入である。デザインウィンを勝ち取ってSoCメーカーを顧客としたからといってもライセンス収入しか当初は入らない。そのSoC企業が量産しなければロイヤルティ料は入ってこない。だから黒字化には時間がかかる。

しかも、IPベンダーは極めて革新的な技術ではないとビジネスが成り立たない。IPコアはSoCに使う回路の一部である。IPコアを半導体メーカーのSoCの中に組み込むのに1~2年かかる。そのSoCを電子機器に搭載して最終製品として出荷されるのにまた1~2年かかる。すなわち、IPに持つ技術は2~4年先でも十分に通用するような最先端の技術でなければ使われない。だから研究開発費は極めて多くかかる割に当初は収入が入りにくい。

だが、デザインウィンの件数が増えれば将来のロイヤルティ収入が入ってくる見通しが明るくなる。実は、Imagination社のデザインウィンの設計件数は2008年4月時点で67件獲得しており、IPを購入した顧客がSoCを開発している件数は41件、そのSoCを量産出荷している件数は26件となっており、毎年2ケタ成長率で伸びている。


Imagination社のデザインウィン件数の推移

Imagination社のデザインウィン件数の推移


Imagination社はIPベンダーとしてビジネスを始めたが、デジタル変調受信回路のIPとして欧州でのデジタルラジオメーカー向けに売っていたが、自らデジタルラジオそのものまでもビジネスとしてしまっている。欧州のデジタルラジオは6~7年前から始まっており、ラジオ単体として欧州で売れているが、近い将来インターネットラジオにもすぐに使える。インターネットラジオだと、世界中の放送や音楽を無料で聴くことができるが、変調方式は世界中で統一されているわけではない。しかしImaginationのIPは全世界の規格に対応するためパソコンで海外のラジオを優れた音質で聴くことができるようになる。Imaginationの売り上げ6000万ポンドのうち、デジタルラジオ部門PURE Digitalは3010万ポンドと半分を占め、利益は160万ポンドと大きい。

IPビジネス部門はライセンス収入1900万ポンド、ロイヤルティ収入は1090万ポンドである。損益は10万ポンドの赤字まで減らすことができた。ARMの財務は、ライセンス収入とロイヤルティ収入はほぼ同じ程度になっているが、Imaginationのビジネスはロイヤルティ収入が今後増えていくことが予想され、ライセンス収入と同等なロイヤルティ収入が達成させるのはそう遠くはないだろう。

IPビジネスでのImaginationの位置づけとしては、2007年にIP市場全体は9%増の14億ドルに成長したが、Imagination社は29%成長した。ちなみにARMは7%成長とやや勢いが鈍ってきた。

デジタルラジオも含めた、Imagination全体では来年には利益は800万〜1000万ポンドに増加するとJ.P. Morganのアナリストは予想する。これはデザインウィン件数から予測したもの。

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