Renesas 365がAltium 365と何が違うのか、MCU選定期間を大幅に短縮
プリント回路基板(PCB)の設計ツールに強いAltiumを91億豪ドルで買収したルネサスエレクトロニクスの狙いがようやく明確になった。PCBツールは半導体のユーザーが使う設計ソフトウエアであり、半導体メーカーが約9000億円もの大枚をはたいてまでも買収すべき企業だろうか。2024年の買収以来ずっとこの疑問が残っていた。ルネサスが「Renesas 365」と称するツール製品を発表して初めてわかった。
図1 Renesas 365の第1弾はRAマイコンの選定期間を大幅に短縮 出典:Renesas Electronics
今回ルネサスが発表したRenesas 365は、2024年に買収したAltium社のプリント回路基板設計ツール「Altium 365」にルネサスの半導体製品を組み入れて半導体製品の検索を簡単にできるようにした上に、ハードとソフトの統合を含めたシステム設計全体のプラットフォームである。Renesas 365もAltium 365もクラウドベースの設計ツールであるが、Renesas 365は、半導体メーカーであるルネサスが顧客のシステム設計まで面倒を見る設計のプラットフォームといえそうだ。顧客のシステム設計では、ハード(例えばマイコン)の中にソフトウエアを組み込んで独自の製品を作り上げるが、ハードとソフトの統合プラットフォームである。
ルネサスは、この新しい設計ツールをルネサスの製品を使う顧客に提供する。My Renesasに登録すれば誰でも使えるという。最近の組込システムは、システムの要求案件が決まるとマイコンの選定から設計作業が始まる。ルネサスのマイコンにはArmのCPUコアベースのRAマイコンをはじめ独自仕様のRL78シリーズやRXシリーズ、RZシリーズ、RH850シリーズなど種類が極めて多い。それもRAシリーズだけでも550品種以上あるという。
これまで半導体ユーザーは、半導体メーカーが提供するデータシートを読み込みながら設計要件を満たしていたが、データシートだけではわからない情報も多い。例えば「CANバスのピンの本数だけでは判断できない。多重化されているピンもあるため、データシートを見ながらピンの特性をメーカーに問い合わせるという面倒な作業がかなり多い」と同社ソフトウエア&デジタライゼーショングループ、Renesas365統括部シニアダイレクターの堀仁一氏は述べる。
今回リリースした設計プラットフォームRenesas 365の第1版ではルネサスのRAマイコンの特性情報をこのプラットフォームに搭載しているため、部品選定が短時間で済む。顧客は、「RAマイコンでCANインターフェイスの付いた製品を探してほしい」と依頼するとこのプラットフォームは候補を絞って表示する。このため顧客は本来の業務に専念できる。
マイコンの候補が示されると、インテリジェントなモデルベースの設計環境がシステムレベルでマイコン選定を支援する。システムのコンテキストを踏まえて支援してくれるという。マイコンの仕様ではなく、システム全体の要件に基づいた最適なマイコンを選択するという。このようにしてRAマイコンの選定時間が1分以内でできるようになった(図2)。

図2 部品選定が1分以内に済む 出典:Renesas Electronics
RAマイコンが決まるとルネサスの持つマイコン開発のIDEツールも組み込まれているので、それを使って顧客独自のプログラムを行い、コンパイラやリンカーなどで機械語にコンパイルやデバグなどを行う。マイコンへのプログラミングが済むと、顧客がプリント回路基板の設計を行い、システムの電子回路として完成させた後も、システムの運用までもRenesas 365が担う。つまり、OTA(Over The Air)というワイヤレス通信によってソフトウエアの更新を行うことができる。
例えば、監視カメラのシステムを運用中にOTAでソフトウエアをアップデートして顔認識ソフトを追加する例として、認識した人物を四角で囲むソフトをデモンストレーションで見せた。また暗闇だと見えにくい場合にはリモートで監視カメラの露出を明るく調整できる。ルネサスはこのOTAのデモを見せている。ルネサス側でこのプラットフォームを実際に使った経験者は、もう従来のやり方には戻れないと話しているという。
今後、ルネサスはRAマイコンだけに留まらず、保有するマイコン全ての情報も追加し、顧客の望むマイコン選定情報を提供できるようにする。また、自社のマイコンだけではなく他社のマイコン情報も含めたいとしている。さらに人間が使いやすいプラットフォームだけではなく、AIエージェントが使いやすいプラットフォームへと進化していきたいという。
ご意見・ご感想


