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Infineon、CAGR17%の高成長分野に絞り、センサ開発を推進

Infineon Technologiesがセンサをこれまでのクルマ応用から、スマートフォンやレーダ、3D ToFイメージセンサ、CO2の環境センサへとさまざまな分野へ拡大してきた。もともと車載用途ではヨーレートセンサや加速度センサなどMEMS技術を駆使したセンサでは実績があった。最近はその用途を拡大している。MEMSマイクロフォンではトップに立った。

車載用センサーでは市場トップクラス / Infineon Technologies

図1 Infineonのセンサの実力 出典:Infineon Technologies


Infineonは、車載用半導体が全社売り上げの51%もある車載に強い会社だ。パワー半導体だけではなく、ゲートドライバICやマイコンなどをチップセットとして、ソリューション提供できる点が強いことをすでに伝えた(参考資料1)。このほど明らかにされたことだが、車載センサもBoschと並ぶほどの実力になっている(図1)。

Infineonはさらにセンサビジネスを伸展するため、用途を拡大している。例えばMEMSマイクだ。この分野はこれまでKnowles社がトップを走っていたが、2021年のMEMSマイクのシェアではInfineonがトップに立った。これは、技術的にMEMSマイクのメンブレンを2個作製して感度を上げSN比で最高73dBと極めて高い性能を示したことが大きい。

高感度のマイクは、AIスピーカーに採用され(参考資料2)、英国XMOS社の音波のビームフォーミング技術と合わせて使うことで、AIスピーカーから離れて声をかけても十分応答してくれるという特長をもつ。

ただ、MEMSセンサといっても、すでに実績のある加速度センサや、回転を検出するジャイロセンサなどのセンサの成長率は鈍ってきているとして、高い成長率の見込まれる4つの分野にフォーカスしていく。MEMSマイク、レーダIC、3D ToF(Time of Flight)イメージセンサ、そしてCO2検出などの環境センサである。これら4つの市場は、今後5年間で21億400万ユーロから2027年には46億2400万ユーロへと成長が見込まれており、そのCAGR(年平均成長率)は17.1%と見込まれている。市場調査会社OMDIAがリリースしている世界のセンサ市場全体の成長率が4.7%の成長率しかないため、Infineonは高成長分野に絞って製品開発に力を入れていくことになる。

MEMSマイク以外では、レーダICセンサは自動車の前方の物体検出に使われているがこれを自動車だけではなく、医療機器や、人感センサとしての人数のカウント、スマートフォンなどでのタッチしないジェスチャー入力などにも使われ始めている。医療機器では、人間の呼吸数と心拍数を24GHzあるいは60GHzのミリ波レーダで心臓や肺の伸長・収縮を検出することで、60秒間のパルスを検出する。人感センサはオフィスやビルでの入退出管理に適用できる。かつてのGoogleスマートフォンPixel 4ではジェスチャー入力用に使われていたが、これはあまり普及しなかった。

3D ToFセンサは、面発光レーザーから複数の光を発し、物体から反射する光の往復時間から距離を測定する。空間的にスキャンすることで物体の3次元画像を描くことができる。ただし、写真のカメラほど解像導波高くないため、かえってプライバシーが保たれるというメリットがある。車内での幼児の置き去りを検出するセンサとして有効である。もし車内に幼児がいれば、そのセンサ情報を両親のスマホに知らせることもできるため、期待されている。


PAS Principle / Infineon Technologies

図2 PAS法を用いた新しいCO2センサ 出典:Infineon Technologies


CO2センサは、PAS、(Photoacoustic Spectroscopy)と呼ばれる方法を使い(図2)、化学センサではないため、信頼性が高い。しかも小型にできる。この方法は、赤外線パルスを出力し、光フィルタに当てると波長4.2µmの赤外光だけを通すことになり、この波長の赤外光を吸収するガスはCO2分子だけになる。CO2分子は赤外光を吸収したことでわずかな振動を起こすため、それをMEMS圧力センサで検出する。従来の近赤外光を使う場合は光の送受信の原理を使うためセンサが大きくなっていた。PAS法だとセンサのサイズは従来の1/4と極めて小さい。このため、室内のCO2の量を測ることによって、室内の人数制限や換気などの対策を行うことができる。

また超音波センサの新しい開発も行っており、水中でもジェスチャーやタッチセンサとして使えることを目指している。

参考資料
1. 「パワー半導体の王者Infineonが語る、これからのパワー事業に必要なもの」、セミコンポータル (2023/10/25)
2. 「AIスピーカーの感度を上げるXMOSのマルチスレッドプロセッサ」、セミコンポータル (2017/12/12)

(2023/12/08)
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