Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 産業分析

ライセンスフリーのRISC-Vコアの老舗SiFiveが日本オフィス設立へ

ライセンスフリーのRISC-VコアをSoCやマイコンなどに使いやすいレベルに上げ、すぐに付けるようなIPコアを提供する米SiFiveが日本にオフィスを開くことを決めた。すでに日本法人は設立されており、SiFive Japanの代表取締役社長は、元ザイリンクスジャパンのSam Rogan氏(図1)。都内に物件を探している。

図1 SiFive JapanのSam Rogan社長(左)とSiFiveコーポレートマーケティングCXのビジネス開発担当のシニアVPのJack Kang氏(右)

図1 SiFive JapanのSam Rogan社長(左)とSiFiveコーポレートマーケティングCXのビジネス開発担当のシニアVPのJack Kang氏(右)


SiFiveは、RISC-Vアーキテクチャを開発した米カリフォルニア大学バークレイ校のDavid Patterson教授やKrste Asanovic教授らが設立に携わったRISC-VコアのIPベンダー。Asanovic教授(図2の右)は今でもSiFiveの共同創業者兼チーフアーキテクトだ。


SiFive: The RISC-V Founder and Brand Standard / SiFive

図2 SiFive社創設メンバーたち 右端がAsanovic教授 出典:SiFive


RISC-Vコアは、2020年あたりから急速に出荷個数が増えてきており、2022年上期までに100億個のCPUコアを出荷しているという。2025年までに624億個が出荷されるという予想がある(図3)。米国から生まれたRISC-Vは米国企業を中心に少しずつ広がってきたが、最近急増しているのは中国企業によるもの。中国のArm Chinaの株式の51%をソフトバンクが中国のファンドに売却したことから、Arm本社(英ケンブリッジ)がコントロールできなくなり、Armはもはや中国に力を入れなくなった。この間隙を縫って中国企業がRISC-Vを採用したCPUコアやSoCを積極的に開発している。


The Rise of RISC-V

図3 急増するRISC-Vコアの出荷個数 出典:RISC-V International、SiFive

 
RISC-Vは元々ライセンスフリーが目的ではなく、CPUコアの他にGPU(グラフィックプロセッサ)やDSP(積和演算専用のマイクロプロセッサ)、ISP(画像/映像処理プロセッサ)など異なるプロセッサを集積するヘテロ集積SoCの命令セットを統一して、簡素化しようという概念である。UCバークレイという大学で開発してみんなに使ってもらおうという考えからフリーにした。数年前に来日したAsanovic教授は、このように語っていた(参考資料1)。

ただし、ライセンスフリーと言っても現在のCPUは簡単な構造ではない。パイプライン技術を採り入れたり、マルチコアを用意したりするなど複雑化しているため、それらを取り込み、性能・消費電力が確実にすぐ得られる実用的なコアに仕上げるために手を加える必要がある。それを扱っているのがSiFiveであり、台湾のAndes Technologyである。64ビットのCPUを集積したSoCを販売しているルネサステクノロジはAndesのコアを使ったが(参考資料2)、SiFiveのIPコアを使ったSoCや、自社でも独自CPUコアを開発中である。

欧州のCodasipは、同じRISC-Vコアを提供する企業と言っても、ユーザーが使いやすい形に仕上げるIPを提供することよりもカスタマイズするためのツール開発にも力を入れている(参考資料3)。独自のSoCを設計するために、命令セットを追加、カスタマイズするサービスを提供している。

SiFiveが提供するIPコアは、性能・消費電力のバランスが取れたCPUコア「SiFive Essential」、性能最優先のCPUコア「SiFive Performance」、そしてAIエンジンコア「SiFive Intelligence」の3種類。例えばSiFive Performanceファミリーには、P600、P500、P200の各シリーズを備えており、ハイエンドからミッドレンジまで各種CPUコアのポートフォリオを揃えている。また、AIエンジンコアは顧客の要求に基づいて作製したベクトルプロセッサであり、今後も顧客次第で製品ポートフォリオを広げていく、と同社コーポレートマーケティングCX(カスタマーエクスペリエンス)のビジネス開発担当のシニアVPのJack Kang氏は述べている。

SiFiveは現在まで300以上のデザインウィンを勝ち取り、100社以上の企業が使い、半導体メーカー上位10社の内8社が使っているという。社員は750名以上。最近1億7500万ドルのシリーズFの資金調達に成功し、企業価値は25億以上になっていると見ている。

参考資料
1. 「半導体プロセッサメーカーが集結した師走(IoT/セキュリティ編)」、セミコンポータル (2017/12/22)
2. 「ルネサス、64ビットRISC-Vでリードする半導体メーカーを目指す」、セミコンポータル (2022/03/01)
3. 「Codasip、MPUを自由にカスタマイズできるRISC-Vコアを提供、日本法人設置」、セミコンポータル (2022/03/18)

(2022/08/10)
ご意見・ご感想