セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

ルネサス、64ビットRISC-Vでリードする半導体メーカーを目指す

ルネサスエレクトロニクスは、64ビットのRISC-Vコアを集積した汎用のMPU「RZ/Five」を開発、サンプル出荷を始めた(参考資料1)。RISC-Vは米カリフォルニア大学バークレイ校が開発したフリーのCPUコアIP。RISC-VのISA(命令セットアーキテクチャ)に準拠したコアで64ビットの汎用MPUはルネサスが初めてのメーカーとなる。

64ビットRISC-V CPUコア搭載汎用MPU RZ/Fiveを世界に先駆け発表 / ルネサスエレクトロニクス

図1 64ビットRISC-Vコア集積の汎用MPU 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスはこれまでの、ArmコアをCPUコアとするRZファミリのプロセッサにRISC-V(リスクファイブと発音)コアも加えることでユーザーの選択肢を広げる。RISC-Vコアは、UCバークレイのDavid Patterson教授らが開発したフリーのCPUコアだが、元々の狙いはフリーではなく、GPU(グラフィックスプロセッサ)やDSP(積和演算専用のプロセッサ)、ISP(画像処理プロセッサ)など異種(ヘテロ)のプロセッサを集積する時にそれぞれバラバラな命令セットを統一しようということだった。つまり未来志向のSoCを作るためのCPUコアとなる。

今回、ルネサスが採用したRISC-Vコアは台湾のIPベンダーであるAndes Technologyの製品「AX45MP」コア。64ビットデータの8段のパイプライン構造を持ち、最大4コアまで対称的なマルチプロセッシングができる。レベル-2キャッシュやキャッシュコヒーレンス(他のプロセッサとキャッシュを共有できる技術)をサポートしており、RISC-VのISAに準拠している。

CPUコア部分だけはRISC-Vだが、実用的なCPUとして使うための機能を搭載したのが、Andesのコアだ。Andesと同様、SiFive(サイファイブと発音)社もRISC-Vプロセッサコアを設計している。ルネサスがAndesのコアを採用したのは、フリーのRISC-Vコアを使ったCPUをゼロから開発するのでは時間がかかるからだ。


CPU CORE SELECTION / ルネサスエレクトロニクス

図2 RISC-Vコアの4つの選択肢 出典:ルネサスエレクトロニクス


図2のように、RISC-Vコアを使ったプロセッサやSoCの開発には4つの選択肢がある。一つ(図2左上)は完全なオープンソースの基本的なCPUコアで、自分で開発するには長い時間がかかる。2番目のオプション(図2右上)は、商用のCPUを利用するもので、早期に開発できる。3番目のオプション(図2左下)は、半導体メーカー内部で開発するもので、自分の好きなような製品ができる反面、開発に時間がかかる。4番目のオプション(図2右下)はパートナーと共有する製品プラットフォームで、最も安易に入手できるが差別化できない。

ルネサスはRISC-Vを活用した製品開発を早めるために産業用と商用コアをAndesから調達し、ハイエンドコアが必要な車載用のRISC-Vコアは、SiFiveから購入するという。産業用の短期間に製品開発をしたい組み込みシステム用途では、「Andesコアはすぐに使用するため最速のスケジュールを達成できるよう、Andesコアを選択した。高度なカスタマイズオプションによって仕様を最適に調整できる点が魅力的」とルネサスは筆者の質問に答えている。

ルネサスのIoT・インフラ事業本部SoCビジネス担当の執行役員である新田啓人氏は「ルネサスがRISC-Vコアの普及を促進するためにエコシステムの拡充をリードしていくことにより、お客様が早期にRISC-Vを活用できるようになると確信しています」とニュースリリースで述べている。

64ビット汎用MPUのローエンドラインアップ / ルネサスエレクトロニクス

図3 64ビット汎用MPUのローエンド製品ライン 出典:ルネサスエレクトロニクス

ルネサスは64ビットの汎用MPUのローエンドの製品ラインには従来のArm 64ビットコアCortex-A55シリーズに加え、64ビットRISC-Vコアが加わり、ユーザーの選択肢が広がった(図3)。ArmコアのRZ/G2ULとはピン互換性があり、従来のArmプロセッサを使うICをそのまま交換することができる。

このRZ/FiveプロセッサはIoTエッジデバイスやゲートウェイでの様々なデータを収集しサーバーやクラウドに接続するIoTデバイスに向けている。ギガビットイーサーネット2本、USB2.0を2本、CANインターフェイス2本などのインターフェイスにA-Dコンバータも2本周辺回路として集積している。RZ/Fiveチップの量産は2022年7月を予定している。

実際にこのプロセッサを使ったCPUボードをリファレンスボードとして提供しているため、顧客は開発を早めることができる。

参考資料
1. 「世界に先駆けて、64ビットRISC-V CPUコア搭載の汎用MPU『RZ/Five』を発表」、ルネサスエレクトロニクス (2022/03/01)

(2022/03/01)

月別アーカイブ