Infineonの2番目の300mmウェーハ工場がオーストリアに完成

図1　Infineonのオーストリアフィラハ工場　奥に見えるのが新300mmライン　出典：Infineon Technologies

Infineonは、予定よりも3ヵ月前倒しで工場を完成させた。新工場は天井にウェーハトラックを配備した完全自動化工場としている。しかも生産工程の自動化をAIで支援しており、CO2を出さない工場でもあるという。この工場は人間の髪の毛（通常は70〜100µm）よりも薄い300mmウェーハ（厚さ40µm）をプロセス処理する工場であることを何度も強調しており、その目的はパワー半導体の量産である。特にIGBTはクルマやエネルギーなどモーターを駆動するデバイスだ。

これに関して同社CEOのReinhard Ploss氏は、「Infineonはモビリティ（自動車や電車、航空機などの輸送手段）やエネルギー効率を上げるための半導体で成長してきた。これまで経営危機があったが長期的な視点で投資してきた。新工場で何を作るかは、製品と応用で決まる。EVやソーラー、風力など高電圧で少ないロスが求められる分野、デジタル化とそのための電源に向けた応用、さらに地球温暖化という大きなロスにも挑戦している。300mmの薄いウェーハは成長を続けるためのカギとなる」と述べている。

欧州で半導体の新工場を設立したことはEU（European Union：欧州連合）も大歓迎している。EUは、2030年に現在の半導体のシェア10%を20%に引き上げるという目標を持っているからだ。EUコミッショナーのThierry Breton氏はビデオ出演して「半導体は全ての産業で欠かせない重要な製品となっている。クルマや航空機、スマートフォン、パソコンなどあらゆるものに欠かせない。しかし、今は半導体不足だ。産業だけではなく社会的にも半導体はとても重要だが、今はまだ供給が追い付いていない。EUはこの新工場を強く歓迎する」と述べている。そして、「フィラハの新工場は欧州の野心そのものであり、半導体産業における欧州のキャッチアップが始まった」と表現している。

300mmの薄いウェーハはポテトチップのように曲がってしまい、手で持つことはできないため、ウェーハを支持する透明なパッケージに入れて、オープニングセレモニーの前に開催された記者会見の場で手に持って見せた（図2)。

図2　300mmの薄いウェーハを手にするInfineon 関係者　真ん中がInfineon Technologies CEOのReinhard Ploss氏、右がCOOのJochen Hanebeck氏、左がInfineon Technologies Austria社のCEOであるSabine Herlitschka氏　出典：Infineon Technologies

オープニングセレモニーでは、テープカットではなく、関係者がそれぞれスマホを手に持ち、アプリで開いたスイッチボタンの画面をタッチすることで、ビデオでオープンするという映像が流れてきた。新型コロナを避ける意味と、ハイテクのセレモニーを印象付けるという二つの意味があった。また今回Infineonは、「Ready for Mission Future（重要な使命の将来への準備）」という標語を掲げ、半導体が将来を担うデバイスであることを訴求している。

参考資料
1. "Infineon opens high-tech chip factory for power electronics on 300-millimeter thin wafers", Infineon Technologies (2021/09/17)