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Micronに見る生産工場の新型コロナ対策

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Micron Technologyが世界中の工場で行っている新型コロナ対策の様子を明らかにした。同社Global Operations担当(注1)上級VPであるManish Bhatia氏(図1)は、新型コロナウイルスへの対処法を世界中のMicronの工場に共通して当てはめている。日本の東広島工場の写真が入手出来ており、ここに掲載する。

図1 Micron Technology世界工場担当上級VPのManish Bhatia氏 出典:Micron Technology

図1 Micron Technology世界工場担当上級VPのManish Bhatia氏 出典:Micron Technology


Micronは、いち早く工場に新型コロナ対策を打った。その基本的なガイドラインは、武漢で発生した新型コロナに対して中国が示した手順や方法であった。このウイルスは人から人への感染力が強いために、人との距離を保ち、人と接触しないといった注意事項を基本にして、工場ごとに対策をカスタマイズしながら、稼働を続けていった。

Bhatia氏は「重要なことは、従業員を感染から守ることだ」と、その対策の基本は人にあることを主張した。対策は、二段階で進めてきた。第一段階では、工場内に持ち込まれるリスクをできるだけ低減することであるから、感染源である人の数をまず減らした。そのために総務や管理部門は在宅勤務とし、外部の人やコントラクタ、フィールドサポートチームの人々も工場に来ることを遠慮してもらった。

第ニ段階では、ウイルスの拡散リスクを減らすため、工場内で働く人を仕事の役割ごと、あるいは同じ業務でも大きく赤チームと青チームに分けた。例えば製造グループと生産計画グループに、あるいは同じチームを二つに分け、互いに接触しないようにした。図2のように通路を二つに分離し、赤チームの通路と青チームの通路を分けるなどした。


図2 通路を赤チーム用と青チーム用に分けた 出典:Micron Technology

図2 通路を赤チーム用と青チーム用に分けた 出典:Micron Technology


同じ作業の場合、赤チームと青チームでローテーションを組み、互いに触れ合わない日に来るようにした。青チームが来る時間と赤チームが来る時間を、例えば食事の時間も分けた。さらに食事時は、一人一人を透明な板で区切り、互いに接触しないようにした(図3)。同じ作業であるから、二つのチームはまるで冗長構成のようだったという。しかも、チームを管理するためにリモートコントロールセンターを設け、コックピットのように全ての業務をコントロールできるように可視化した。


図3 カフェテリアでは一人一人の場所に仕切り板を設けた 出典:Micron Technology

図3 カフェテリアでは一人一人の場所に仕切り板を設けた 出典:Micron Technology


工場では、マスクの着用や体温管理はもちろん言うまでもなく、その報告や出張する場合の経路の報告・管理も行う。これらの対策プロトコルは、世界の工場で全て統一した。ただし、マレーシア工場は、政府の指示により生産稼働が制限されているため、政府の指示に従った。マレーシア以外の世界の工場はこのような方策を施し、フル稼働を維持してきた。

「当社のチームは、とても信頼されており、Micronに対しても顧客に対しても、あるいは地域のコミュニティに対しても新型コロナに対応していて、とても誇りに思います」とBhatia氏は述べている。彼が特に感心したことは、「感染問題が報じられた当初でもマネージメントからの指示がなくても、カスタマーサービスの従業員自身でプロアクティブに問題を決め同定したことです」としている。顧客に対してMicronの製品を医療機器に使うべきか、あるいはサーバーに入れて緊急病院を支援するべきか、を熟知していたという。「顧客のシステムにDRAM、DRAMモジュール、NANDフラッシュ、SSDか、あるいはクラウドに納めるかというソリューションを見つけ、この病気のワクチン開発などの治療や、感染経路の探索に役立つ方法を見つける世界中の医師や科学者を支援しようと考えていました。さらにテレワークの広がりにより、e-ラーニングやビデオ会議などにもMicron製品が役に立つことに誇りを持っていました」と従業員を賛辞している。

Manish Bhatia氏は今後の製造工場についても触れている、「将来の製造技術は、AIやビッグデータ解析、産業用IoTを使ったスマート製造に向かうでしょう。この分野でも当社のDRAMやNANDフラッシュは拡大していき、今ある応用よりもさらに用途が拡大していくからです」とManish Bhatia氏は語っている。Micronでは、工場をリモートでモニターしコントロールするため、すでにそれに向けてスタートしている。また、ビデオ会議を通して、製造装置メーカーのエンジニアとMicronのエンジニアがディスカッションしながら装置をチューニングし、保守や設置に関してもリモートで対応できるようにしていく。さらにVR/AR(仮想現実/拡張現実)を使って実際の専門家がリアルタイムで行うようになり、作業効率は上がるという。こういったスマート製造により、従来のロードマップが加速され、12〜24カ月前倒しになると期待する。

「必要は発明の母ともいわれます。危機になるとそれに対処する技術が開発され、新しい世界を作ります。かつて1970年代にオイルショックがあった後、自動車は燃費改善に取り組み始め実績を上げてきました。我々の生活も変わりました。同様に、今後も世界中の顧客と共にディスカッションしながらもっと良い方法や技術を生み出していく。私は将来を極めて楽観的に考えています」と同氏は結んだ。

注1)MicronのGlobal Operationsは、世界各地の工場の稼働状況、生産技術、品質管理やサプライチェーン、生産計画まで担当するほか、工場でのITにも責任を持つ。

(2020/06/12)

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