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ファウンドリ2社が成長戦略を語る〜Samsung編

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前回のTowerJazzのファウンドリ戦略(参考資料1)に続き、今回は韓国Samsung Electronicsを紹介する。Samsungは現在7nmプロセスを進め、さらに3nmまでの道筋をつけていて微細化をまっしぐらに行く。

Samsung Electronicsは昨年、ファウンドリ部門を事業部から切り離し、日本の大手総合電機と同様、カンパニー制に沿った組織とした。今はメモリ部門とは独立に運営しており、ファウンドリカンパニーは2017年以来、ピュアプレイファウンドリだと称している。しかも7nm以下のFinFETプロセスを扱う数少ない半導体メーカーを目指している。今のところ、Intelは狙うべき製品戦略上の理由から7nmプロセス導入を遅らせ、GlobalFoundriesは7nm以下のプロセス開発を断念した。


図1 Samsung Electronicsが開催したSamsung Foundry Forum 2018

図1 Samsung Electronicsが開催したSamsung Foundry Forum 2018


7nm以下のプロセスを扱う企業はファウンドリの王者TSMCとSamsungだけになった。TSMCは米国や台湾でテクノロジーシンポジウムを開催、メディアが取材しているが、日本のシンポジウムだけメディアを締めだしているため、その様子を報じることはできない。しかしSamsungは、このほどSamsung Foundry Forum (SFF) 2018-Japanを開催し(図1)、メディアを招待した。

Samsungは、リスク生産(新しいシリコンICプロセスにおいて、レシピやデバイスモデル、設計ツールなどの基礎ができたばかりの生産体制)の年として、2018年は7nmFinFET、2019年には5nm/4nmのFinFETおよびEUVと、18nmのFDS(Fully Depleted SOI):RFとeMRAM)、そして2020年には3nmのGAA(Gate All Around)FETとEUVを始めると発表している。Samsungはチャンネル層シリコンを全てゲート絶縁膜で囲んでしまうGAA方式のFETを1年前は4nmから使うとしていたが、今年になり3nmから使うとしている。同社は明言を避けたが、この1年間で詳細なシミュレーションと試作を行ってきたようで、4nmではFinFETで行けることを確信したという。

EUVリソグラフィに関してはASMLのNXE3400リソグラフィ装置を導入し、自社が目標としていた1日当たりに生産できるウェーハ枚数、すなわち量産レベルにこの9月には達すると自信を持っている。マスク検査技術に関しても自社独自のマスクの欠陥を検出できる技術を確立したとしている。韓国のHwaseong工場内にEUVラインを新たに建設しており、2019年での稼働を目指している。

Samsungのファウンドリ戦略は微細化だけではない。現在同社が最も多い製品のプロセスは28nm以上のこなれたプロセスを利用する製品だという。14nm以下の微細化プロセスの方がまだ少ないが、これからは伸びていくとみている。300mmおよび200mmウェーハラインでのスペシャリティテクノロジーも用意する。このラインでは、CMOSイメージセンサや指紋センサ、eFlash+RF/IoT、ディスプレイドライバなど特殊な製品に対応する。

Samsungはテスト&パッケージセンターを韓国内に持っており、FOPLP(Fanout Panel Level Package)とそのPoP (Package on Package) や4個のHBM2(High Bandwidth Memory:DRAMを複数個TSVでつないだ3次元IC)を集積した2.5DのSoCモジュールの量産準備を終え、2019年には本格的なヘテロなチップの3D-ICを準備するという。

ファウンドリは、自社のラインが余っている場合に他社のチップを生産するビジネスではない。顧客のレベルに合わせて、設計ツールやIPを揃え、さらにデザインハウスを子会社やサードパーティとパートナーシップを組み必要がある。ファウンドリ側としてもできるだけ自分らの製造プロセスに合った標準のPDK(プロセス開発キット)を用意する。デバイスのSpiceモデルやDFM(Design for Manufacturing)などを含めたPDKと、EDAベンダーの設計手法、Si実証済みのIPコア、そして提携先のデザインハウスなどのエコシステムを構築している。これをSAFE(Samsung Advanced Foundry Ecosystem)と呼び、EDAベンダーとのコラボレーションを強調している。

Samsungは応用指向のファウンドリエコシステムの構築を目指しており、SoCのセキュリティにも言及している。例えばチップのばらつきをIDとして用いるPUF(Physically Unclonable Function)やセキュアなフラッシュメモリを用意したMCUや、通信のSIM機能をアプリケーションプロセッサに集積したコネクティビティ機能付きのSoCなどを将来の製品として想定している。

IC Insightsによる2017年のファウンドリランキング(参考資料2)では、Samsungの売上額は46億ドルとなっているが、Samsungのファウンドリビジネスはこの数字よりもずっと大きいと述べている。

参考資料
1. ファウンドリ2社が成長戦略を語る〜TowerJazz編 (2018/09/12)
2. TSMCの独占続く、2017年のファウンドリランキング (2018/04/27)

(2018/09/14)

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