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欧州で工場内をLTE/5Gネットワークでつなぐ - Ericsson Mobility Report

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世界の携帯電話やスマートフォンの加入者が人口である76億人を超え、モバイル加入契約数が79億件に達した(図1)。2018年第1四半期におけるモバイル加入契約数だ。人口普及率で104%に達したことになる。このうちスマホ加入者は43億人である。

Subscription penetration Q1 2018 (percent of population)

図1 世界での携帯電話の人口普及率は104%に 出典:Ericsson Mobility Report 2018


スマホが世界の人口と同じ加入者数になれば、スマホの成長は止まるのか。これまでのスタンドアローン的なハードウエア機器単体だけだったら、おそらく止まる、と言ってよいだろう。しかし、スマホは、コンテンツを自分で見つけたり探したり作り出したりできるコンピュータである。このため、実はコンテンツのデータ量はむしろこれから指数関数的に伸びていく(図2)。これらの予測は、この6月にEricssonが例年出している「Ericsson Mobility Report 2018」によるもの。このほどEricssonは日本語版を発行した。


Mobile data traffic per active smartphone (gigabytes per month) / Global mobile data traffic (exabytes per month)

図2 データトラフィック量はますます増える 2023年には現在の5倍の100EB(エクサバイト)/月に 出典:Ericsson Mobility Report 2018


コンテンツ量が伸びてもスマホというハードウエアは伸びないということは実はない。スマホの最大のメリットは自分の好きな機能を使えることであり、自分にカスタマイズできる。ところが、使いこなせばこなすほど、今度はスマホのハードウエアに不満が出てくる。電池が長持ちしない、もっとメモリが欲しい、カメラ機能が不満、など新しい機種が欲しくなる。買い替え需要だ。しかも古い機種は中古市場に流れる。つまりコンテンツの量が増えるにつれ、アップグレードが求められるガジェットだといえる。

スマホが従来のハードウエアデバイス機器とは違うもう一つの理由は、これからのウェアラブルのような民生用IoT機器では、通信する相手やプラットフォーム機器となるからだ。つまり民生用IoTはスマホと協調して使われるようになる。IoT時代にはますます必要になる。また、スマートホームやビルの点検機器のプラットフォームになる。

今年のMobility Reportでは、LTEセルラーネットワークを企業内や工場内で使おうという動きが出てきた。大企業では工場内や企業内ではエッジシステムとして扱ったり、プライベートクラウドの形で管理したりしていることが多い。その内部をプライベートLTEという取り組みをドイツなどで始めているという。ただし、ドイツは使用する周波数帯を通信オペレータとは別の周波数帯を使うという考えを示している。

構内にセルラーネットワークを展開する場合、通信業者のクラウド側とエッジ側を要件によって使い分けることができる(図3)。また構内にセルラーネットワークを入れると、高信頼・低遅延を実現でき、ほとんどリアルタイムでIoTシステムを使うことができるようになる。セルラーではない無線ネットワークでは信頼性が低く、ノイズの影響などで通信が切れることが多い。このため、LTEないしこれからの5G NR(New Radio: 新無線)の無線アクセスネットワークを使うメリットは大きい。構内のローカルだけで済ませなければならない要件では、公衆回線から切り離せるような装置(ローカルブレイクアウト)を入れる。


On-premises cellular network deployment with local data breakout

図3 構内をセルラーネットワークにする提案が欧州で 出典:Ericsson Mobility Report 2018


構内のセルラー接続は、工場内のほとんど全ての設備を接続・管理できるようになり、運用上の課題解決につながるとしている。特に、自動化と位置情報、監視という3つのユースケースがある。自動化では、生産ライン全体では業務効率と品質を高められ、サプライチェーンの自動化も可能になる。またクラウドロボティクスを利用した柔軟な生産にもつながる。位置情報では、資産管理や倉庫管理、作業員の安全確保などにも活用できる。監視では遠隔操作やトラフィック管理、さらには環境コンプライアンスと規制に関しても守ることができる。Ericssonは自社の中国南京工場のスクリュードライバ作業の監視で効果を上げているという。

工場内のネットワークを全社的に展開できるため、将来のコネクテッドマニュファクチュリングで工場内のロボットとの連携だけではなく、PLCとエッジサーバの協調、さらには本社や別の工場との遠隔による連携もしやすくなる。ロボットメーカーのComau社はLTEネットワークを用いた実験を行っており、2018年末には5Gを用いたトライアルを始める計画である。Ericssonの工場でもLTEや5Gを利用した自動制御を行っており、エストニア工場では25%のコストダウンを図ることができたという。

工場内のセルラー接続により、ケーブルの削減をはじめ、建設コストの削減にもつながったとしている。あるジェットエンジンのブレードディスクの研磨作業に5Gモジュールを導入、振動を抑制する制御での遅延をmsに削減できた結果、無駄な研磨がなくなり短時間で処理できるようになり1600万トンのCO2削減と3億6000万ユーロのコスト削減ができたとしている。

Ericssonはビッグデータの分析やネットワーク管理にAIを利用したり、無線基地の保守作業で機器の端子名、コネクタ名などにAR(拡張現実)を利用したりするなど自らスマート工場に向けた新しい取り組みを進めている。

(2018/07/25)

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