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ルネサス、組み込みAIを前面に

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ルネサスエレクトロニクスは、デバイスの開発者会議「DevCon」を東京芝公園で開催(図1)、これまで自動運転の物体認識などでディープラーニングAI(人工知能)を使ってきたが、それを工業用にも応用するとして、e-AI(embedded artificial intelligence)を組み込みシステムにも応用するデモを行った。

図1 ルネサスエレクトロニクスの代表取締役社長の呉文精氏

図1 ルネサスエレクトロニクスの代表取締役社長の呉文精氏


ルネサスのe-AIの基本はIoTのエッジ側である。ただ、ルネサスはエッジとは言わず、エンドポイントという言葉で表現する。クラウドで学習させ、その学習データを推論の基準として用いる方法に徹している。IoT端末のあるエンドポイントは、あくまでも家電と工場の設備などIoTデバイスのそばでAIの推論機能を使う。ルネサスの開発しているSoCやハイエンドマイコン(MCU)で推論させるとしている。エンドポイントで生データを収集し、それをクラウドに上げクラウドで学習させる。その学習データをエンドポイントで使うようにするのだ。こうすると、負荷の重い学習機能をエンドポイントに置かなくて済む。


図2 工業用のIoTを人工知能e-AI(Embedded Artificial Intelligence)で実現 出典:ルネサスエレクトロニクス

図2 工業用のIoTを人工知能e-AI(Embedded Artificial Intelligence)で実現 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスは、エンドポイントで推論処理をするために、ディープラーニングを組み込んだe2 studioと呼ぶa-AI開発ツールを11日に発表している(図2)。この工業用の推論処理するためのMCUであるRZシリーズ、RXシリーズ、RL78シリーズ、Renesas Synergyを用いて推論可能にした。具体的には、クラウドから学習済みのAIソフトウエアとして、オープンソースのCaffeやTensorFlowで表現したソフトウエアをMCU開発ツールに変換するe-AIトランスレータ、変換したソフトをチェックするe-AIチェッカに加え、組み込みシステムに特化したAIフレームワークからのソフトに対してはe-AIインポータで対応する。

これによって、ディープラーニングで学習した結果を、MCUに組み込むことでさまざまな組み込み機器に使えるようになる。例えば、e-AIトランスレータでは、簡単なGUIで、ディープラーニングの結果をMCUやSoCに実装できる。

AIは特に、いかに短時間で効率よく精度の高い学習を習得するかが、AI技術者の腕が問われている。学習という機能はクラウド上で実行し、学習した教師データあるいはリファレンスを推論マシンに組み込むことで、MCUに強いルネサスという特長を生かすことができる。

e-AIのデモの例として、人だかりが多かったのは、水を入れたコップを台車に載せ、凹凸のある道路を走らせて、水をこぼさないで走行することを学習させた台車ロボットのブースだ(図3)。これは、水を入れたコップを載せたトレイにサスペンションを備えており、そのサスペンションをモータ制御する。台車が山を登り降りする時にトレイは斜めになり水がこぼれやすくなる。ここでは、トレイを制御するのにモデルを立てて制御アルゴリズムを作るのではなく、トレイの傾きと加速度の向き、強さのデータを収集しておき、水がこぼれたらそれらのデータはNGであることを学習する。このようにしてセンサデータを収集し、GO/NG判定の結果と共にクラウドへ上げる。クラウド上では反復学習させることで、どの程度のセンサの値の場合にGOだったからという統計データを教師データとした後、エンドポイントでダウンロードし、ハイエンドマイコン化SoCのフラッシュメモリに焼きこむ。そのROMデータを基準の教師データとして、水の入ったコップを載せた台車が凸凹道を通っても水をこぼさなくて済むような制御ができるようになる。


図3 水の入ったコップを運ぶ台車のデモブース

図3 水の入ったコップを運ぶ台車のデモブース


IoTでは常時インターネットとつながっているため、SOTA(Software on the air)によってMCUやプロセッサのソフトウエアを更新することができる。反面、サイバー攻撃を受けやすくなるというデメリットもある。自動車向けのチップでは、暗号キーを格納するフラッシュメモリのアクセス権なしでは引き出せないようにしたが、一般的な工業用では、開発用にはセキュアなRoot of TrustなどのIPや、改ざん防止の書き込みツール、運用・保守などのカギ管理、ソフトウエアの更新をセキュアにする、などエンドポイントのハッキングを防ぐことが必須になる。エンドポイントがハッキングされるとクラウドに上げるデータが意味を失う恐れがある。

そこでエンドポイントのセキュリティの専門家であるセコムおよびセコムトラストシステムズと協業することを発表した。認証によって管理可能なIoT認証セキュリティプラットフォームを共同で開発する。チップメーカーであるルネサスがチップレベルでのセキュリティを担保することがその狙いである。セコムがICTを使ったさまざまなセキュリティで実績があるのに対して、ルネサスはチップ上で認証や暗号化技術をインプリすることが得意だ。しかもルネサスにとってセコムは直接の顧客ではなく、さらにその上の顧客であり、セキュリティのシステムソリューションを知るには優れたパートナーとなる。

e-AIが今回の大きなテーマであったが、クルマ関係でもルネサスはコラボレーションを進めている。例えば、77GHzのレーダーシステムでは、Analog Devicesのレーダーを使い、その反射データをデジタルに変換し、データパターンを集めルネサスのマイコンでパターンを認識・判断する。

今年のCESで見せた、レベル4の自動運転車でもコラボは増えている。ECU開発のオーストリアのTTTech社、自動運転のアルゴリズム研究やレベル4の車両を開発するカナダのWaterloo大学とコラボし、そのクルマを国内に持ち込んだ(図4)。


図4 ルネサスが開発したレベル4の自動運転車

図4 ルネサスが開発したレベル4の自動運転車


ルネサスは自動運転に向けマイコンやSoCのソフト開発、ツール開発などを含めたR-Carコンソーシアムに加入しているパートナーが200社以上いる。自動運転に向けたルネサスのブランドを「Renesas autonomy(ルネサスオートノミー)」と呼ぶことを決めた。今後、自動運転向けのソリューションは、Renesas autonomyブランドで展開していく。

(2017/04/13)

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