セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

トリリオンセンサ時代のスマートセンサに向けた開発進む

|

第17回自動認識総合展に併設されたセンサエキスポジャパンでは、スマートセンサを狙う例がいくつか展示された。ゴムのように伸びると静電容量が増えるセンサ、長寿命のケミカルセンサ、安価なLIDARセンサ、放電によるプラズマを流せるデバイスなど、ロボットやスマホ、クルマなどに向けたデバイスが続出した。

図1 藤倉ゴムの新型容量センサ

図1 藤倉ゴムの新型容量センサ


藤倉ゴム工業は、ゴム材料で構成されたキャパシタセンサを開発した(図1)。誘電体であるゴム基材の表裏に電極を付け、キャパシタにしている。このゴムを引っ張ることで、電極面積が拡大すると同時に電極間距離が短くなるため、静電容量は増大する。容量の変化は、この材料を伸ばさない時の静電容量を1とすると、伸長率が100%で2に、200%で3、300%で4という数字になった。静電容量の変化と伸長率はほぼリニアな関係を持ち、200%伸長率の時のヒステリシスは±3%以下とまずまず。この場合のセンサ形状は、幅5mm×長さ100mmで、電極部分の長さは60mmである。ロボットの腕や、曲がる動作をするようなシーンでのセンサを考えている。

また、藤倉は、センサではなくフレキシブルに曲げられる導電配線材料も開発している(図2)。これは、容量センサとは違い、ゴム状の配線を伸ばしても配線抵抗がほとんど変わらないという特長を持つ。従来のフレキシブル配線だと、100mm/分の速度で伸ばしていくと、伸長率100%では、初期の抵抗値が1Ωに満たなくても500Ωにも増加する。しかし、このゴム配線だと、初期値0.81Ωから3.46Ωしか増えない。またゴム状であるため、伸縮回数を1000回にしても初期値0.35Ωから3.27Ωにしか増えない。従来のフレキシブル配線では伸縮回数を増やしていくにつれ、急激に抵抗値が上がり、200回も持たない。


図2 藤倉ゴムの伸縮可能な配線材料

図2 藤倉ゴムの伸縮可能な配線材料


加工できる幅は1〜5mm、長さは1m程度まで、膜厚は40〜300µmだが、カスタマイズ可能だとしている。ゴムベースの材料の中にフィラーのように導電性の金属粒子を混ぜているだめ、伸ばしても金属粒子が離れていかない。この結果、抵抗がさほど増えないという。

表面実装ガスセンサ
ガスセンサを展示したのは、2012年にカリフォルニア州のシリコンバレーの近くに本社を設立したベンチャーのSPEC Sensors社。独自のスクリーン印刷技術を用いたセンサ(図3)で、SPEC社はScreen Printed ElectroChemical sensor technologyの略から採ったもの。検出可能なガスは、CO、O3(オゾン)、NO2、SO2、H2S、エタノールなど。狙う応用は、産業向けのガス検知や、ウェアラブル機器・ヘルスケア機器、屋外大気汚染モニタリング、アルコール呼気検出など。


図3 SPEC Sensors社のさまざまなガスセンサ 右は開発キット 出典:SPEC Sensorsホームページから

図3 SPEC Sensors社のさまざまなガスセンサ 右は開発キット
出典:SPEC Sensorsホームページから


ベンチャー設立の狙いを同社のホームページを見ると、これからのIoTビジネスを推進する上で重要になるセンサをさらに増やして、スマートフォンやIoTに備える狙いがあるようだ。トリイオンセンサ時代が2020年ころにやってくると言われ、従来の物理センサに加えて、化学センサがこれからのスマホを豊かにするだけではなく、ヘルスケア機器にも欠かせなくなる。従来パッケージのTO-92などの金属封止ではなく、プリント回路基板上に形成できる表面実装タイプのパッケージに収容する。しかもこのパッケージだと、センサだけではなく、アンプやA-Dコンバータ、マイコン、Bluetooth送信機などIoTに必要な半導体も形成できるため、デジタル時代にふさわしい。例えば、NO2やH2Sのセンサだと20mm×20mm×3mm(厚さ)といった大きさだ。

印刷技術を使ったセンサでなぜ長寿命にできるのか、については出展者の商社は把握していなかった。ただ、10年のサービスライフを提供するとしている。開発キットも用意している。

LEDによる測距計
また、光センサを利用したスマートセンサも登場している。Googleの自律運転のクルマ、グーグルカーの屋根に取り付けられているLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)システムは、レーザーレーダーを使い、反射光からドップラー効果も加味して距離を測る装置である。高価なレーザーを安価なLEDに替えて、測距計を開発したのは、カナダのケベック市にあるLeddar Tech社。センサエキスポでエレクトロニクス商社コーンズテクノロジーのブースに展示した(図4)。このシステムはLIDARで使われる回転動作をさせずに固定し、その代わりに最大16個のLEDを組み込む。一つのLEDがカバーする角度範囲を割り当て、最大95度の範囲までカバーする。


図4 Leddar Techの測距計 出典:Leddar Tech社資料から

図4 Leddar Techの測距計 出典:Leddar Tech社資料から


Leddar Tech社は、センサモジュールだけではなく、距離を計算する重要な半導体チップも開発するファブレスでもある。

センサではないが、風変わりなデバイスとしてプラズマ発生器がある。村田製作所は、LTCC(低温焼成セラミック)基板に電極を形成し、高電界で放電させることでプラズマを作り出し、さらに櫛状に配置した電極にかける電圧をサイクリックに変えていくことで、プラズマの流れ(プラズマ気流)を起こすデバイスを試作した(図5)。ファンを使わずに小型のプラズマ清浄装置を作ることができるようになる。O3(オゾン)を発生させることで人間の汗やアンモニア臭などを消すことができる。印加電圧は数百Vと市販のプラズマ装置の数kV(数1000V)よりは低い。電極間の感覚を数十µmに短縮したため。


図5 村田製作所が試作したプラズマ発生器

図5 村田製作所が試作したプラズマ発生器

(2015/09/25)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.