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IntelがIoT分野に参入、セキュリティ重視のハイエンド市場を開拓

IntelがIoT(Internet of Things)の分野に参入した。先月、Internet of Things Solution事業部を新設、このほど本部長のJim Robinson氏(図1)らが来日した。IoTといえばセンサや小さな端末の方に目が行きがちだが、Intelの狙うのはもっと上位のシステムだ。

図1 Intel IoT Solution事業部長Jim Robinson氏

図1 Intel IoT Solution事業部長Jim Robinson氏


IoTは、インターネットにつながるものすべてを指すため、モバイル端末やワイヤレスセンサ、M2M(Machine to machine)などの端末などが注目されているが、Intelの狙うのは、ゲートウェイやクラウドとの接続システム向けのチップや、IoTの応用の一つであるデジタルサイネージ向けのコンテンツマネジメントシステム(CMSソフトウエア)である。Intelの指す端末(エンドポイント)とはあくまでもPCであり、やや大きなM2M設備向けなどハイエンドの端末を指す。だからこそ、Intelのチップが生きる。BAN(body area network)やPAN(personal area network)などのヘルスケアやBluetooth Smartなどの低消費電力のIoT端末にはARMのCortex-Mシリーズマイコンコアや、ルネサスエレクトロニクスのRL78マイコン、Texas InstrumentsのMSP430マイコンなどが超低消費電力マイコンとして有力なチップだ。

IoTは現在でも109億個のデバイスがインターネットとつながっており、最も数の多いデバイスはスマートフォンであり、タブレットやパソコン、サーバーなどへと続く。これがもっとさまざまなデバイスにも広がる。ワイヤレスセンサネットワークのセンサ端末や、カメラ、白物家電などから、工業機械、建機、工作機械、自動車、インフラ施設(橋梁やビルの壁、トンネルの天井、パイプライン、鉄道列車など)など産業用装置にも使われる。加えて、農業用の土壌センサやヘルスケアモニターなど、ありとあらゆる分野の端末がインターネットとつながっていく。将来に向けたこの市場をIntelが見逃すはずはない。

IoT市場向けのチップとしてIntelが先月発表した、クワッドコアのAtomプロセッサE3800ファミリーと、さまざまなインタフェースと512KバイトのSRAM、DDR3メモリコントローラなどを集積したQuark SoC X1000ファミリーがある(図2)。さらにGalileoという名の開発ボードも用意した。いずれも実績のあるプロセッサコアをベースにしており、消費電力が2W程度と比較的低く、さらに産業用の使用温度範囲を想定している。


図2 IntelのIoT向けチップと開発ボード

図2 IntelのIoT向けチップと開発ボード


IntelはIoTのビジネス価値を念頭に、以前買収したセキュリティソフトウエア会社のMcAfee(マカフィー)のシステムソフトを通してゲートウェイからインターネットへつなげる仕組みをGreenfieldとして提案している。このゲートウェイデバイスに先ほどのチップを使う。

Intelの目指すIoTは、GEのIndustrial Internetであり、IBMのSmarter Planetであり、言葉は違うが概念はみな同じだ、とRobinson氏は言う。ARMが低消費電力の端末側のプロセッサなのに対して、Intelはもっと上位のゲートウェイや、セキュリティを通るデータの集積(アグリゲーション)に向けている。もちろんクラウド上にはデータセンターがあり、そのサーバー用のプロセッサもIntelのチップである。

Intelは当然、日本のIoT市場にも進出するが、今回はE3800ファミリーと組み合わせて使う、ロームのパワーマネージメントチップ(電源用IC)とセットで発表した。最近は、プロセッサが1.2Vなどの低電圧化と共に動作電流がA(アンペア)レベルに達しているため、プロセッサの近くに配置する電源システムPOL(point of load)が増えている。Alteraが電源メーカーのEnpirionを買収したのは同じ理由による。Intelはロームとパートナーシップを組み、Intel仕様の電源ICを提供してもらう。


図3 スクリーン上で複数の画面を映し出したり、コンテンツの順番を決めたりなど番組表を作る作業を効率良くできるCMSもIntelはリリース

図3 スクリーン上で複数の画面を映し出したり、コンテンツの順番を決めたりなど番組表を作る作業を効率良くできるCMSもIntelはリリース


もう一つ、Intelは今回、デジタルサイネージ向けに番組編成表やスケジューリングを簡単に組めるコンテンツマネジメントシステム「リテール・クライアント・マネージャー」(図3)も国内販売する。デジタルサイネージは、M2Mの応用の一つで、渋谷や新宿などの繁華街にある巨大ディスプレイの広告コンテンツを遠隔操作する技術。広告対象者の顔や性別を認識して最適な広告を流すことで効果の高い広告を提供できるようになる。

(2013/11/18)
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