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変化の兆しが見られた2016 Symposium on VLSI Technology and Circuits

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2016 Symposium on VLSI Technology and Circuitsは、6月13〜17日、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ(ハワイ・ホノルル)で開催された(図1)。半導体・集積回路技術開発に携わるエンジニアが日米だけではなく、世界各地から集まる国際会議である。年1回ハワイと京都で交互に開催されており、昨年は京都で、今年はハワイでの開催に当たる。VLSI Symposiumの委員であり、産業技術総合研究所の研究員でもある遠藤和彦氏がレポートする。(セミコンポータル編集室)

図1 ハワイで開催された2016 Symposium on VLSI Technology and Circuits

図1 ハワイで開催された2016 Symposium on VLSI Technology and Circuits


本年度から、VLSI技術と回路の合同シンポジウムのテーマが導入された。今回初の試みとしてのシンポジウムテーマは、「スマート社会への変革の兆し」と題するものであり、技術シンポジウム、回路シンポジウムの各セッション、あるいは技術と回路の合同セッションや、ハイライトセッション、パネルセッションなどが、「変革の兆し」という本テーマに沿って企画されることとなった。最近は、VLSI技術・回路シンポジウムで2日間のオーバーラップを設けて開催されており、どちらか登録するだけで両方のセッションが聴講できるように工夫されている。

以下、Symposium on VLSI Technologyのトピックスを中心に紹介する。今回のシンポジウムに出席して感じた大きな印象としては、まさに「変革の兆し」を感じさせる多くの発表が見られたことである。今の半導体業界の関心事の一つとして、微細化がいつまで続くのかという大きな命題があり、様々な機会でその議論を目にする。今回のシンポジウムで注目すべきは、それでもなお着実に微細化が行われていることであり、10nm世代以降の微細デバイスに関しての多くの発表があった。一方で、微細化に頼らない高性能化として、GeやIII-V材料、さらには2D材料をチャネル材料として適用する発表や、Z方向への集積化として三次元集積を行った報告も見られた。更には、電子のスピンを利用した量子コンピューティング素子の提案まで、「スマート社会への変革」のための多岐に渡るデバイス技術が議論された。

個々の論文を紹介する前に、まずは採択論文数について述べよう。本年度のVLSI技術シンポジウムの採択状況を図に示す。本年度は VLSI技術シンポジウムで220件(内6件がレートニュース)の論文投稿があり、86件(内1件がレートニュース)の論文が採択された。図2に採択論文の国別推移を示す。下から2段目の赤色の部分が日本からの投稿である。


図2 採択論文数の推移 出典:VLSI Symposium委員会

図2 採択論文数の推移 出典:VLSI Symposium委員会


日本からの論文数はこのところ低迷し、往年の半分以下まで低下してしまった。一方、ヨーロッパや台湾は発表件数を伸ばし、アメリカはほぼ横ばいである。この様な日本国内の状況は、様々な要因が重なってであろうし、既に様々な切り口で分析がなされているところである。この先も日本の論文数低迷が続くのは寂しい限りであり、是非「変革の予兆」期であるこの過渡期を利用して、日本の得意分野を再び開拓し、論文数が復活することを祈りたい。

内容に関してシンポジウムの発表論文について紹介したい。まずVLSI技術シンポジウムの初日に行われたプレナリーセッションでは、InvenSenseのエンジニアリング・新製品開発担当VP、Stephen Lloyd氏による基調講演「MEMSセンサが可能にする次なる新製品の波」、次いで日産自動車専務執行役員、浅見孝雄氏による「VLSIを通じて実現するインテリジェント・モビリティ」と題する基調講演が行われた。いずれも、VLSIに関わる技術が社会に実装されたときの、多様なIoTアプリケーションに関する発表であり、これからのVLSI技術の方向性を示唆する基調講演であった。Lloyd氏は、製品のコモディティ化を防ぎ、継続した価値を保ち続けるには、デバイスとそれが生み出すデータを組み合わせた、新たなサービスとしての価値の重要性を指摘していたのが印象的であった。もしかすると、IoTの幕開けは、デバイスのコモディティ化を防ぐための格好の救世主にもなるのではないかとも感じた。一方、浅見氏の発表では、自動運転もいよいよ実用化かと思わせるような、近未来を感じさせるデモンストレーションを示していた。しかしながら、想定外の状況に対しても完全に対応しなければならないこと、デバイスが壊れたときの安全性をいかに確保するか等、課題は山積のようで、実装の難しさも改めて感じさせる発表であった。

続くハイライトセッション(セッション2)やセッション9では、冒頭に述べたように10nmノードの発表が相次いだ。関連する論文を以下に(発表機関、講演番号)と共にピックアップする。

10nmプラットフォーム
・10nm Si-FinFETプラットフォーム(Samsung, T2.1)
・10nm以降のSiGe-FinFET(IBM, GLOBALFOUNDRIES, T2.2)
・バルクFinFETによる高密度SRAM(TSMC, T9.1)

半導体の微細化限界がクローズアップされる中で、微細化による高性能化を着実に示した発表が多数披露されたのが特徴的であり、今後もしばらくは微細化による性能向上というムーアの法則が引き続き維持されることが示された。セッションでの議論も盛り上がり、往年のシリコンプラットフォームの発表を彷彿させる活気あるセッションとなった。

微細化による性能向上に合わせて、各プロセス技術も着実に進化している。特に、Fin型トランジスタ世代では、微細なチャネルへのコンタクト抵抗をいかに下げるかが鍵であり、セッション7ではコンタクト抵抗低減化に関する議論が展開された。

コンタクト技術
・プリアモルファス化によるTiシリサイドコンタクト(imec, KU Leuven, Applied Materials, Samsung, T7.1)
・NiPt/Tiシリサイドコンタクト(IBM, GLOBALFOUNDRIES, STMicroelectronics, T7.2)
・プラズマ注入とレーザアニール(Applied Materials,T7.3 )
・低温アモルファス化イオン注入と再結晶化(United Microelectronics, Applied Materials, T7.5)

シリコンに代わるチャネル材料に関しても、そのデバイス技術やプロセス技術が盛んに発表されており、SiGeやIII-V材料に併せて、最近は2次元のMoS2等遷移金属ダイカルコゲナイド材料も注目を集めている。SiGeに関しては、特性が年ごとに向上している。またIII-Vに関してはTSMCやIBM、imecが300mm基板上への良好な結晶の作製とインテグレーションに成功しており、シリコンプラットフォームへの搭載の道が開きつつある。一方MoS2は、大面積のCVD技術が確立されておらず、加工やコンタクトに関する課題も多く、まだまだこれからの材料ではあるが、そのような材料がVLSIの論文として発表されること自体が「変革」の表れであろう。代表的な論文を下記に示す。本年度は化合物系の発表が特に多く、旬なテーマとなっているようである。

SiGeやGe
・SiパッシベーションしたGe nMOS (Liverpool John Moores Univ., imec, Peking Univ., T4.1)
・14/16nmノード歪Ge pFinFET (imec, T4.2)
・SiGeプロセスでのGeOx除去(IBM, GLOBALFOUNDRIES, STMicroelectronics, T4.3)
・高Ge濃度pMOS SiGe-FinFET (IBM, T4.4、T9.3)
InGaAs
・300mm Si基板上へのInGaAs FinFET形成 (TSMC, T2.3)
・InGaAsゲートスタックの信頼性 (imec, KU Leuven, ASM, T5.1)
・InGaAs(nMOS)+SiGe(pMOS) SRAM (IBM, T9.2)
・高アスペクト比InGaAs-FinFET (MIT, T13.3)
・InGaAs表面処理と界面層による特性向上 (imec, KU Leuven, ASM, T 13.5)
・InAsナノワイヤーMOSFET (TSMC, Lund Univ., Texas State Univ., T15.2)
・InGaAsナノワイヤーMOSFET (Lund Univ., T15.3)
・InGaAsナノワイヤー縦型FET (imec, KU Leuven, Lam Research, T15.4)
・300mm基板上のInGaAsゲートオールアラウンドFET(imec, ASM, T15.5)
MoS2
・10nm チャネル長 MOS2 pMOS (National Nanodevice Laboratory, King Abdullah Univ., Academia Sinica, National Chiao Tung Univ., National Tsing Hua Univ., UC Berkley, T6.1)
・MoS2 FET (MIT, T6.2)

微細化に頼らない集積化技術としては、三次元集積化技術が挙げられる。セッション17のフォーカストセッションでは、三次元集積化技術に関する論文が発表された。東京工業大学からバンプレスウェーハ積層技術(WOW)(招待講演)、LetiからCoolCubeと呼ばれる2層トランジスタ積層化技術、台湾精華大学他からポリシリコントランジスタ積層化技術が発表された。今のところ三次元の構造デモンストレーションが主体であり、三次元に適した回路レイアウトや発熱対策などの未解決の問題も多々存在するが、横方向の微細化がストップした場合、残される手段は材料を変えるか、あるいはZ軸方向の利用であり、今後期待できる分野である。

3次元積層技術
・バンプレスWOWプロセス(東工大, T.17.2)
・CoolCubeプロセスインテグレーション(Leti, STMicroelectronics, T17.3)
・ポリシリコントランジスタ積層(National Tsing Hua Univ., National Chiao Tung Univ., National Taiwan Normal Univ., Academia Sinica, T17.4)

また、レートニュース論文として、シリコンプロセスを用いた量子コンピューティングに関する論文がLetiから発表された。最近超電導ジョセフソン接合を利用した量子コンピュータが人口知能ブームとの相乗効果もあり大変注目されているが、本論文では、微細なゲートオールアラウンド・ナノワイヤーによる量子キュービットを実現している。同様の検討は、シリコンウェーハ上に注入されたドーパント原子や、シリコンの量子ドット等で過去にも実現されてきたが、通常のシリコンプラットフォームを利用して、LSIレベルでインテグレーションされたところが本論文の注目される点である。今年度12月に開催予定のIEDM(International Electron Device Meeting)においても、フォーカスセッションで量子コンピューティングを企画中のようであり、今後も目が離せない分野となっている。

量子コンピューティング
・量子情報処理のためのシリコンCMOSプラットフォーム (Leti, T6.6)

最後に、メモリ関連の発表について触れる。MRAMに関しては、書き込み速度の高速化の発表が目立った。TDK、東芝、および東北大から相次いで、1ns以下の書き込み速度達成に関する報告がなされた。また、メモリに関しても三次元化による容量増大がホットなトピックスであり、三次元化の波は着実に進んでいるようである。セッションでは、三次元NANDフラッシュや3次元ReRAMに関する発表が見られた。他、新規のメモリとして原子スイッチのインテグレーション等も発表されている。

MRAM
・STT-MRAMのサブnsスイッチング (TDK Headway Technologies, T2.3)
・サブnsスピントルクスイッチ (東北大, T 6.5)
・MTJのサブ3ns, サブ100μAスイッチング(東芝, T14.2)
三次元メモリ
・3D-NANDフラッシュリテンション特性 (Kookmin Univ., SK Hynix, T8.1)
・3D-NANDフラッシュのメモリウインドウ評価 (Macronix, T8.2)
・3D-縦型ReRAM (Chinese Academy of Science, National Chao Tung Univ., Univ. Wisconsin-Madison, T8.4)
・3D-縦型ReRAM とFinFETの集積化 (Stanford Univ., National Nanodevice Laboratory, T18.2)
原子スイッチ
・固体ポリマー電解質を用いたCu原子スイッチ(NEC, 12.2)
・CuコンダクティブスイッチRAM (imec, T12.3)

その他、本年度のシンポジウムテーマに沿って、回路と合同のアナログやRFインテグレーションセッション、(セッション11)、IoTセンサ(セッション20)やイメージセンサ(セッション22)、トンネルFET等の極低消費電力向け新原理デバイス(セッション21)など多くの優れた発表があったが、紙面の都合もあり割愛する。以上報告した論文の中のいくつかの論文は、VLSI Symposium委員会により注目論文として選定されている。VLSIウエブサイトのプレス欄にティプシートとして記載されているので是非ご参照頂きたい。

来年のシンポジウムに向けた準備も既に始まっている。来年は京都に舞台を移し2017年6月5日にショートコースが、また6月6日〜8日にテクニカルセッションが行われる予定である。来年は、是非日本から多くの論文投稿があることを願いたい。

VLSIシンポジウム委員 遠藤和彦
(2016/06/30)

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