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自動運転はドライバーの楽しみを奪う?

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セミコンポータル主催のSPIフォーラム「カーエレクトロニクスの未来」が9月16日東京御茶ノ水で開かれた(図1)。カーエレでは、車両制御やインフォテインメント、車内通信など様々なテーマがあるが一つに絞らず自動車全体に渡ったテーマとした。このため、自動運転に対する考え方、欧州の動き、卓上でECUやワイヤハーネスをテストするツール、ダッシュボードを変革するグラフィックスIPなど新しい考えやコンポーネントが出てきた。

図1 SPIフォーラムの会場風景 講演開始前の一コマ

図1 SPIフォーラムの会場風景 講演開始前の一コマ


ルネサスエレクトロニクスのグローバル事業戦略統括部シニアエキスパートの金子博昭氏は、自動運転につながる賢いクルマとしてダッシュボードやインフォテインメントのようなドライバーの前面にあるシステムとして「統合コックピット」というコンセプトについて述べた。統合コックピットは「安心」「安全」「快適」を実現するために、さまざまなセンサからの情報を認識、総合的に判断し、ドライバーに通知するユーザーインターフェースの総称である。

クルマには大きく分けて制御系とIT系のシステムがあり、ルネサスは制御系のマイコン、IT系のSoCを持つ。総合コックピットは、いろいろなクルマメーカーの仕様に応えるためのフレキシビリティと、小型車から高級車までカバーするためのスケーラビリティ、そして個人差を吸収するためのパーソナライズという三つの要素に対応する。例えば、フレキシビリティにはハードウエアとソフトウエア、OS、品質などに対応するため、プラットフォームを提供する。

総合コックピットでは高度なグラフィックス表示が求められるが、イマジネーションテクノロジーズは、グラフィックスの進化に触れた。3次元画像の裏にある見えないトライアングルやピクセルは除去してしまうという独自のアルゴリズムを使い、面積当たりの性能が高く小さな面積を少ない消費電力で実現していることを同社の技術部長である古峰聖治氏が述べた。光の陰影を描くレイトレーシング(Ray Tracing)技術を、今後のスマホやタブレットにも導入できるほどの低消費電力化にも取り組んでいる。ハリウッド映画での写真並みのグラフィック画像処理エンジンのチップは数百Wという高い電力を消費している。それを1〜2Wで実現しようとしている。

車載用半導体では世界市場でルネサスの次、欧州ではトップのInfineon Technologies日本法人のオートモーティブ事業本部パワートレイン&エレクトリックヴィークルセグメントのシニアスタッフエンジニアの新井達也氏が次に講演した。欧州におけるメガトレンド、クリーン(低CO2排出)・安全・スマート(賢い)に沿って、2020年のカーエレの構造進化について述べた。その頃には車内の高速通信のバックボーンにはEthernetを使い、パワートレイン、ブレーキやエアバッグ、ADAS(先進ドライバー支援システム)、車体制御、インフォテインメントなどがつながるというイメージを描く。

インフィニオンは機能安全に力を入れ、32ビットのマルチコアマイコンAurixを使った冗長構成のバスモニターシステムや、ファイヤーウォールによるセキュリティ確保、さらにはセンサについても述べた。回転を検知する磁気センサも紹介した。360度回転を分解能0.1度で検出できるという。さらに欧州における48Vシステムの問題やその進行状況についても語った。

メンター・グラフィックス・ジャパンは、回路の配線設計に定評のあるEDAツールを持っているが、同社のマーケティング部ディレクターの三橋明城男氏はクルマのワイヤハーネスの最適化設計について述べた。また、カーエレに必要な基本ソフトウエアAUTOSAR仕様を盛り込んだEDAツールのVolcanoをはじめとして、クルマのECUシステムのハードとソフトの両面を開発するツールを紹介した。HILS(Hardware in the Loop Simulator)環境で使えるとしている。

日本ナショナルインスツルメンツは、ソフトウエアベースの測定器メーカーであるが、基本のハードウエアであるPXI計測モジュールシステムと汎用の設計ソフトウエアLabVIEWのVeriStandなどを使い、HILSとして卓上でECUをテストできる、と同社テクニカルマーケティングマネージャの久保法晴氏が述べた。例えば、48V系のシステムの配線を間違って12系につないだ時などの波形をシミュレーションする。あるいはハイブリッド車のモータのテストを机上でテストできる。


図2 ブース展示にも人だかり メンター・グラフィックスと日本NIのブース

図2 ブース展示にも人だかり メンター・グラフィックスと日本NIのブース


最後の講演では、センサから信号処理、アクチュエータまでのECUシステムを実現する半導体を手掛けながら、自動運転の画像センシング技術についてデンソーIC技術部第2部担当部長の石原秀昭氏が述べた。より安全にするため、2次元空間+距離という3次元センサの開発を進めており、さらに夜でも歩行者を検出するナイトビジョンの低価格化も必要だとする。

完全自動運転については、クルマメーカーは望んでいないとして、むしろ手動と自動が共存するだろう、と石原氏は述べている。会場からも自動運転は気持ち悪い、という声があった。クルマ好きはドライバーの運転感覚を無視してほしくないと思っているようだ。なお、講演資料の在庫はわずかだが、まだ入手可能である。問い合わせは以下のURLから。

(2014/09/19)

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