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衰退する米国製造業を日本の反面教師に

米国の製造業が衰退していると言われている。

20世紀にはキラ星のごとく輝いていた。その輝きは眩しく超弩(ド)級のものだといえよう。超弩級と言い得るためには米国が発明し世界をリードした20世紀の製品2つを挙げれば十分だろう。その1は半導体であり、その2は自動車である。

他に例を挙げればキリがないが、強いてほんの一部を挙げれば、電球、真空管、電話、飛行機、PCにMacとグラフィックユーザインターフェース、液晶、集積回路特にCMOS、そしてステッパーがある。これだけ例示すればその偉大さがわかる。1930年代の不況を克服し40年代は戦争に勝ち、50年代60年代と米国消費文化が花開いたのは工業製品が圧倒的に強かったためである。

一方、製品開発の面では日本も善戦した。トランジスタを使ったラジオ、集積回路を導入したTV、VTR、ウォークマン、CDやDVDの実用化等で頑張ったが、残念ながら全体として米国に勝るとはいえない。

エジソンは電球を発明した。1878年になって電球を事業化する目的で有名なGE(ジェネラルエレクトリック)社が誕生した。液晶を発明し、CMOSや初期のカラーTVで貢献したRCA社もGEから派生した。筆者は幸運にも今や日本で半導体トップになった会社で10年間半導体技術を学んだ。敢えて書くがGEもRCAも半導体技術の先生だった。技術契約に従って半導体製造の基本を教えてくれた。それも70年代には日本の進展が著しく契約は終了した。

50年代頃から米国には豊かな中産階級が生まれた。高卒後2年制の専門教育を受け製造ラインで働きフォアマンと言われる班長が一つの典型例だろう。50年代日本が戦後の復興に汗をかく頃、米国の家はまぶしかった。広い庭に緑の芝生が陽光に映え自動散布で給水している。庭から家に入れば製氷機がついた大型冷蔵庫があり、豊富な食品とビールやコーラ等の飲料が冷えている。主婦は洗濯機や自動皿洗い機に恵まれ相当な余暇を持てた。日曜の朝は、自家用車で教会に行く。その帰りは外でランチを楽しめた。その後は買い物に行った。ハリウッド映画全盛期で明るく楽しい映画が大量に作られ世界中に輸出していた。前進した製造業のお蔭でアメリカンドリームが実現した。

その米国製造業が衰退している。時代は60年近く経ったこの08年、その米国製造業が苦戦し中産階級が消えている。

ものづくりを推進する日本は、今のうちに学んで参考にするべきだろう。米国の製造業が苦戦しているのは労働者の「賃金が高すぎるためというのは間違い」と、貿易専門評論家のギル・カプラン氏はワシントンポスト紙(6月29日号)で述べている。雑貨などを除き、ICや製鉄など設備投資型の製造業の人件費は、総コストの10%に満たないからだ。仮に新興国の賃金が米国の10分の1であっても、他の要素が同じならば製造コストはたかだか100対91にしかならない。この程度の差なら米国は新興国に負けない、としている。

愚痴っぽくなるカプラン氏が問題にするのは外国の政府援助である。ブラジルは税制で法人所得税を17%カット、中国は通貨の元を不当に安く設定している等々。

イノベーションで発展するハイテク分野も状況は厳しい。欧州の誇るエアバスはEUがメーカーに150億ドル(約1兆5000億円)も援助した、と言われている。米政府がイラク、イラン、北朝鮮の諸問題にかかりっきりになっていて貿易面交渉をサボっているのが問題なのだ、との意見もある。

80年代の日米半導体摩擦の時もそうだったが、どう言う訳かアメリカ人は負けがこんでくると不公平論を始動させる。米国には日本や欧州のように国が管理する健康保険制度がない。だから良い企業は従業員にヘルスケァと称して民間の保険に参加させ企業も一部を負担する。それが負担になり外国と比べて不公平だとする。日本の制度でも保険料は本人が半額そして残り半額は雇用主が払う制度なのに、そのようなことには触れない。

20世紀にアメリカがリードしたPCメーカーのデルやHPは、今や海外で製造する状況だ。LCDもステッパーも初期には米国がリードしていたのに、もはや生産は海外だ。結果、職が奪われ米国の労働者が減少する等々とカプラン氏の愚痴は続く。米国人が得意のMBA的発想で問題を解決することを忘れてしまっている。80年代に日米貿易摩擦が発生したが、特に半導体はひどかった。日本は米製半導体を8%しか輸入せず日本製DRAMが50%も米国で使われている。この格差がケシカランという訳だった。

その内、問題が解決した。マイクロソフトOSを搭載したPCが世界標準になりIntel Insideと謡うPCを日本中が使うようになった。結果、日本はマイクロプロセッサを大量に輸入し半導体摩擦はこれで解決した。種々施された政府の施策は効果がほぼゼロだった。

最近は原油価格が跳ね上がり海外の製品を米国に運ぶ運搬費が無視できなくなった。アメリカで製造するというビジネスモデルも可能になるかも知れない。それで米国の製造業は復活するのだろうか?


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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