Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 大和田敦之の日米の開発現場から

グリーンITの進展を見守る

グリーンIT構想を進めよう。そのバックグラウンドから述べる。

ウェッブ百科事典のウィキペディにでは英国人、サーT. Berners-Lee が1990年のクリスマスに世界で最初にインターネット上で http プロトコルにて通信に成功したと記述されている。この新しいブレークスルーによって、サー Berners-Lee がインターネットの発明者と言われるのだが、実はこの時に使ったハードウェアがインターネットサーバーであり、サー Berners-Lee はインターネットサーバーの発明者でもある。

5年後の95年、ウィンドウズ95を搭載したPCがデビューしデファクトスタンダードとして世界に爆発的に広がった。さらに誰でもインターネット情報を簡単に楽しくにアクセスできるようにブラウザを開発した、当時学生だったマーク・アンドリーセンの存在も大きい。この年辺りを契機にインターネットが拡大しプロバイダは、ビジネスモデルとして確立した。プロバイダと契約すれば誰でもインターネットをブラウザで思う存分観ることができ、そして電子メールサービスが受けられる。半導体にとってもラッキーな展開であった。インターネットサーバーの最重要部品は半導体でありPCの最重要部品も半導体である。結果現在に至るまで、半導体の需要は大きく伸びた。そして300mmのファブが世界中で増殖し今や生産性を更に上げるために450mmウェーハの実用化が進められている。

だが見えない所でインストール数が爆発的に増えているのがサーバーである。ネットの大会社が保有するサーバー数は発表する会社がないので不明だが、大きい例では数百万台の上を行っていると考えられる。サーバーを使う会社は世界に何社あるだろうか?実際に世界の会社全体の総和を考えると相当な数のサーバーが稼働している。

サーバーは機密とセキュリティの面から密閉された部屋に閉じこめる。加えて、換気も行う必要がある。部屋の電力消費は莫大になることが考えられる。サーバーに給電するのはもちろんだが、照明や換気並びに冷却が必要だ。これらの制御にもパワー半導体やICが使われている。そして、このような施設をデータセンターと称する。

今や地球環境保全は焦眉の急である時代が到来した。本年8月、福田総理(当時)はG8議長として、北海道洞爺湖サミットを総括する議長会見を行った。引用すると次になる。

気候変動問題について、我々G8は、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減するという長期目標を、世界全体の目標として採択することを求める、との認識で一致した(引用は、以上)。環境省のHPのデータでは90年と2006年を比べると半導体工場などの産業部門は、エネルギー消費が減少しているのにビジネス即ち業務部門が+40%であってオフィスとデータセンターが大きな課題になっている。

このような機運からグリーンIT構想が浮上している。今年の9月に都内で Japan Green IT Conf. 2008 が IDC Japan 社主催で開催された。

IBMは講演で最近開いた「最もグリーン」なデータセンターを紹介した。それは費用350億円を投資し、米国コロラド州の砂漠の真ん中にある。広さは、 27,000 平米。古いビルを取り壊して移動し、再組み立てをして使用した。後で述べる仮想化技術を導入した。風力発電を活用し年間 1,000 トンの炭酸ガスを節約し、杉の木 72,000 本が吸収する炭酸ガスと同等としている。砂漠の気温が下がると感知し Free Cooling Mode に移行する。Free Cooling Mode では空調を止め外気を導入してデータセンターを冷やすのだ。

インテルの講演はムーアの法則を強調した。70年を基準値とし、IC上 1 MOS トランジスタの消費電力を論ずるとムーアの法則でスケーリングされた2005年のICでは消費電力が100万分の1以下になったとしている。確かに10μmルールと 45nm ルールではこの議論が妥当なのだろう。

以上は主としてハードウェアのブレークスルーであるがグリーンITではソフトウェアも貢献できる。これが仮想化なのだ。サーバーのCPUは、平均すると最大能力の1〜2割程度しか利用されていない。例えばメールサーバーと別のアプリケーションサーバーは、別のハードシステムなので夜間はアプリケーションサーバーがあまり稼働せず、と言う訳だ。こうなるのは1サーバーに一つのOSと一つのアプリケーションを対応させるからだ。 Windows OSのサーバーに Linux OS は載らない。

サーバー仮想化ソフトを導入すると、使われていない分のリソースを有効活用できる。即ちソフトを活用し1台のサーバーに Windows サーバーと Linux OS を載せる、こうして一つのサーバーでWindowsとLinuxのジョブを可能にする。だから仮想化により柔軟にリソースを割り当てると、CPUの利用率を7〜8割に増加させることも可能になる。今までWindows サーバーと Linux サーバーの2台必要だったのにサーバーが1台で済む。こうして数台のサーバーを1台に収める事が仮想化で可能になった。そして仮想化はグリーンITとあいまって普及している。

最近きく機会が増えた「クラウドコンピューティング」は、グーグルのCEO、E. シュミットが唱えている。Cloud とは雲のことでネットの膨大な空間を意味するらしい。グーグルで余ったサーバー容量を顧客に売る仕掛けだ。ユーザーはインターネットでアクセスし費用を払ってアプリを利用し出来たファイルを雲の中に保存する。わが国ではNTT関連会社がこのビジネスを始める。名付けてWebOSと言っている。

グリーンITの考え方から時代は変わると、思う。各社が小さなデータセンターを都会のビルに持ちそれぞれグリーン化を進めるのではなく、百万台ものサーバーを収容するIBMの「最もグリーン」なデータセンターのような施設を、専門の会社が砂漠に建造しエネルギー効率化の極限をきわめる。そして通常のユーザーや会社はクラウドによってそれを利用する。このやり方がグリーンITへの近道だろう。


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

ご意見・ご感想