セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

フルハイビジョンDVDフォーマットの戦い

フルハイビジョンが見られる High Definition TV、次世代DVDフォーマットの戦いに優劣が見えて来た。この争いは東芝をリーダーとするHD-DVD陣営とソニーを旗頭にするブルーレイ陣営の両日本勢が世界を舞台に闘って来たいくさである。

両陣営が採った戦略は同じ部分があり、それはハリウッド映画の企画生産配給会社の取り込みだった。いかに多くのハリウッド企業を味方につけるかを競ったのだ。

優劣が見えたキッカケは、新年早々ギャンブルの街ラスベガス発の出来事であった。舞台は世界最大のショー会場の一つであるCES。このショーはセミコンジャパンの3倍にもなる展示会だ。

CES、即ちコンシューマーエレクトロ二クスショーの大展示会で、1月4日に突然の記者会見があった。主役は米国ハリウッド企業のワーナーブラザーズ。「ワーナーは今回ブルーレイ規格に乗ることにした」旨の発表内容だった。ワーナーはそれまでは東芝陣営に属していたのだったが。

これの意味することは映画コンテンツの大手企画並びに配給会社であるワーナーがソニーと組むことになった、という結果である。生き馬の眼を抜くような話しである。

21世紀の家庭の居間に居る消費者は、DVDもしくは回線でロードショー級の最新の映画コンテンツを楽しむのが流行になるであろう。次世代DVDは1枚でおよそ2時間の映画3本を収納出来る。

グローバル化が進みデジタル技術が普及する世界でニューヨークで東京で、あるいはローマに住む視聴者が居間でくつろぎながら映画を鑑賞する。このコンテンツDVDのフォーマット規格が2種類あるのは極めて具合が悪い。消費者がDVD録画機やそのディスクの選択に迷うからだ。

昨年暮れの勢力図はブルーレイ側に20世紀フォックス、ウォルトディズニー、ソニーピクチャーズ(ソニーが保有する映画配給会社)メトロゴールデンマイヤーズであった。そして、HD-DVD側はNBCユニバーサル、パラマウントピクチャーズおよびドリームワークスアニメーション。もちろん、ワーナーは後者のはずだった。

ワーナーの発表はHD-DVDに決定打を与えたと見るアナリストが多い、と私は観測している。このことは消費者にとっては朗報であろう。仮に戦いが互角で長期にわたればどうなるか?消費者は、ギャンブルを強いられる。どちらの陣営の機械やディスクを買うべきなのか?わかりようがないからだ。その互角のバランスが崩れたのだ。

一方、日本人としてこのような顛末を残念に想う気持ちがないわけではない。ソニーと東芝は過去に規格統一を話し合い、そのことは報じられてきた。だが結局は、今まで結論に至らず話し合いは決裂して結論を先に伸ばされたままだった。

この状態は間違いなく勝者と敗者を生む。どちらが勝者になるのかわからないのでは消費者が混乱する。30年前の事例が生かされなかった。30年前、ビデオテープのフォーマット戦争があった。ベーターとVHSが戦い消費者の人気がVHSに流れた。この時に負けたベーターはソニーの発明で、そして勝ったVHSは松下・ビクター陣営の製品だった。ベーターを購入した顧客は悩んだ結果、結局はVHSも買い2台買うはめになった。今のこの状態でアナリストはブルーレイが市場の7割を押さえた、としている。

ソニーとパナソニックが主導するブルーレイ陣営と、東芝に代表されるHD-DVD陣営が依然、欧米市場で激しい攻防を繰り返しているさなか、ソニーはブルーレイ高精細度ディスクプレーヤーが中国市場に上陸する時期を確定した。ブルーレイとしては今がチャンスなのだから世界最大の市場に満を持して挑むのだろう。早い者が勝つのだ。Note added in proof.


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

月別アーカイブ