セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

IoTの進展と共に発生するハッキングの恐怖

半導体の応用が進む中、ハイテク各社は、IoT開発に注力している。電子機器の情報伝送においてインターネットに接続されるケースは増加するばかりだ。IoTを通じて得られた情報はあらゆる方面に運ばれて伝わる。結果、インターネットはあらゆる"モノ"がコミュニケーションをするための情報伝送路になる。PC、スマホはもちろん、冷蔵庫など、その他の様々なモノをネットに取込んでネットワークを無限に向けて広げるのがIoTだ。開発を進めるのは良いが、セキュリティが疎かになっては困る。

昨年の7月にはベネッセ事件が起きたが、このような個人情報流出事件は毎年のように発生している。昨年の報道を参照にすると、ベネッセ事件は流出した顧客情報が最大で2070万件にも及ぶ大規模なものだった。これに学んだ人は多かったはずなので、今年は大きな漏洩事件は起こらないと思っていたが、ハッカーは甘くはない。今年は日本年金機構が漏洩事故を起こした。6月16日に発表された日本年金機構の事件は、125万件もの個人情報のリークを起こした。公的機関からの流出では史上最大のもので国民の重要な情報が漏れてしまったが、これは元に戻らない。ウィルスメールを送りつけたハッカーの能力を侮ってはいけない。ハッキング行為は犯罪であり、我が国では平成12年2月に「不正アクセス防止法」が施行された。当局は上記事件を捜査しているが、犯人が逮捕され司法の裁きを受けることになるだろう。

ハッカーの関心はクルマにもある。乗用車は近年、半導体搭載が増え電子化が極度に進んだ。今後、IoTがクルマに応用される事例は増えると考えているが、ハッカーの餌食になる恐れも残念ながら増すだろう。情報の漏洩や窃取も恐ろしいが、遠隔から行われるクルマのハッキングは、仮に発生すれば命に関わる。シリコンバレーのフリーウェイでは時速100マイル(160km)が出せる。走行中にハッキングされてハンドルがランダムに回され隣のレーンに勝手に入ったら危険極まりなく事故になることが避けられないだろう。従って乗用車などがIoTを進める際に対ハッキング防衛を最優先しなければならないのだ。グーグルのセルフドライブ車(参考資料1)は、人が運転しなくても動くのでハッカーが狙っている。今の所、グーグルは秘密の対抗手段を使ってセルフドライブ車がハッキングされるのを防げている。秘密の対抗手段を使うのは当たり前で公表したらハッカーの餌食になるからだ。

通常のクルマがまだ安全だといっても問題が現れ始めている。7月25日のAFP-時事電「フィアット社、ジープ140万台をリコール」との記事がニューヨークタイムズ紙等に出現し、読者を驚かせた。内容はフィアット社の技術研究員2人が無線操作で自社の新型ジープ、チェロキーのハッキング試験を成功させたというもの。この事実は本物のハッカーが成功する前に同社の技術研究員が、社業の一環としてハッキングを試みていたものである。結果を見て同社は140万台のジープを全てリコールすることになった。 筆者の知る限り自社技術研究員といえども、外部から無線操作でクルマのハッキングを成就した例は皆無だ。リコールも140万台と大量だ。こんな出来事は史上初だ。

自動ブレーキ搭載車 (参考資料2)も電子化そのものである。国産自動車メーカー各社は、ミリ波レーダーやステレオカメラ、赤外線レーザーなどの独自のセンサ技術を用い自動ブレーキを開発している。日産自動車は、ミリ波レーダーを使っていてインテリジェントブレーキアシストシステムと命名した自動ブレーキ搭載車を販売している。このクルマであれば仮に「よそ見」運転中に先行するクルマが減速して車間距離がなくなって来てもシステムのお蔭で自分のクルマが自動で減速してくれるので安心だ。ただし、制限速度以上のスピードだと、このシステムでさえもクルマは止まることができない。ハッカーは、遠隔から操作して急ブレーキをかけたり、ブレーキを効かなくしたりすることを考えている。ハッカーの狙いは実害を発生させることだ。

これらのセンサは、車間距離をリアルタイムでモニターしている。前を走るクルマとの距離を対象として刻々その距離を監視する。車間距離に応じて減速する。先行車が停止すれば後続車も止まる。さもないと衝突してしまう。IoTの発達で自動ブレーキなど乗用車の自動化が進み運転者は楽になるが、ハッカーに気を付けないと自動化の仕掛けが襲われることもあり、相当の注意が必要になって来る。ハッカーに対して、ゆめゆめ安心してはならない。

参考資料
1. Google Releases More Details on Self-Driving Car Accidents
2. ぶつからないクルマ、自動ブレーキの各社比較

エイデム代表取締役 大和田 敦之

月別アーカイブ