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AI、人工知能技術の重要性を再認識する

次世代をリードする技術の一つは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)であろう。筆者もAIに高い興味を持っている。ロボット、AIシステムの応用を考えれば将来の半導体産業は、3兆円規模になるとの指摘もある。

AIに関して、R&Dを進めて成果を上げている企業は、IBMである。そのワトソンコンピュータは、自然言語を理解するので一般文書の内容を学習することができる。うまく使えば人間の意思決定を支援できる。その動作は、Cognitive Computingと称する。これをわかりやすくする上で筆者の定義では、「Cognitiveとは、Look、Judge、Actを基本にAIを活用する」ことだ。

ワトソンが、Look、Judge、Actを全てできれば、Lookで事態を観察し、結果に基づいて事態を理解する、Judgeではその結果に関して種々の判断をする、Actでは必要な動作が必要であれば、それを行うことになる。但し、Cognitive Computingの問題は、その内容の質である。わかりやすく説明するための例を引くと、受験生が自分の将来の夢をLook、そしてJudgeにおいて将来どの道を進むかを考え自身の適性や将来性を見極めて学部や大学を選び、Actにおいて受験勉強に専念することと同様に、Cognitive Computingの質は正に重要である。IBMはワトソンの実力をデモするためにクイズ大会を開いて人間と競わせたりしている(参考資料1)。

我が国では、第五世代コンピュータの旗の元に、通商産業省(現、経済産業省)が1982年に立ち上げた国家プロジェクトがAI開発の歴史に残るが、このプロジェクトは1992年に終結している。リクルートホールディングスは、Recruit Institute of Technology、RITを人工知能(AI)の研究所として再編し、AI分野の世界的権威を新たにアドバイザーとして迎え、グループ各社と連携したグローバル規模のAI研究を開始したという旨をこの4月に発表した。また、Japan News紙の4月16日のスクープ記事では、政府が東京にAI研究所を設立し100人規模の研究者を集めてこの5月に発表するとのことだ。その研究テーマを次のように定めている;
ロボットの頭脳、
全自動運転車、
画像診断装置、
犯罪容疑者監視、
製品需要予測、
インターネットからの不正侵入検知

IBMのワトソンは、自身が集めた(学習した)データベースから回答の候補を探し、それに重み付けをするというアプローチによって、新しい質問にも対応できるように設計されている。Cognitive Computingの精度を高めて、重みを付ける作業で種々の事例に関する判断力を磨いて学習させる。人が学習する際には間違うこともある。その場合は教師が詳しく説明し生徒の間違いを正す。この過程はたいへん重要で、このようにして生徒は学ぶ。ワトソンも同じだ。即ち、種々の原因で上記の重み付けを間違えることもある。その最大の原因の一つは、データベースが新しい有力なデータを欠く場合だ。そして間違えた時には教師役の人間が、「それは違う、このような理由で正解は・・・・・・・・である。」、というようなインプットをワトソン対して行うことでワトソンは、早く学ぶ。

Google社は、AIを研究している会社だ。AI研究開発の為に全自動運転車を開発していて我が国に、特許を出願している(参考資料2)。その明細書を読んで見た。以下にその一部を紹介する。

全自動運転車の車両コントロールに於いて、車両の走行に関わる不確実性を認知して状況を結果として判定し、結果として車両をどのように運転するかを判断する。そのために車両には種々のセンサを具備するように配備する。これは、筆者の理解では、Cognitive Computingになっている。センサを使ってLookが行われ、AIでJudgeする。次に、考えられる車両の物体動作モデルを全てリスト化し、予想に反する動作、即ち不確実な動作を想定してそのような動作モデルを構築しておく。例えば運行時に幼い子供が突然、車両の前方に駆け込む事態は滅多に発生しない。即ち、極めて不確実ではあるが、たまに発生する場合がある。動作センサがその子供の動作を検知し判断して、車両を止めるためにブレーキを動作させることができる。この場合、そのブレーキ動作がActだが、時間的に間にあう、即ち衝突を避ける必要があるのは当然だ。不確実性は、多々ありその一つは、駆け込む子供のスピードである。

もちろん、この時に数あるセンサの一つは、ブレーキがかけられたか否かも認知する必要がある。ブレーキの効果、即ち車両の減速の具合も確認しなくてはならない。当然であるがこの時、車両を前進させるモータには微弱な電流、あるいは電流が流れていないような制御がかかる条件も必要になる。それらの認知も必要だ。

以上、簡単に請求項の1を述べたが、この明細書にはその請求項が全部で19もあり、本格的な出願であり、Google社は相当に本気なのだ。AI技術の重要性に鑑み、先進会社がその研究に力を注いでいる。特に今後、Big Dataとの関連に於いてAIの重要性は更に増して来るだろう(参考資料 3)。

参考資料
1. 「Watson」はいかにしてクイズ王を破ったか (2015/03/25)
2. 公表特許公報「認知の不確実性に基づく車両コントロール」、 特表2015-506310
3. Why Big Data and AI Need Each Other -- and You Need Them Both(ビッグデータとAIの密接な関係)(2014/12/16)

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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