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注目が集まる農業クラウド

半導体は未だに夢多き成長産業だ。常に貪欲に新しい応用を開発し市場を広げて行く傾向は衰えない。半導体を中心に展開されるICTは農業にも応用が広がる。我が国の農業は課題が少なくない。担い手不足、耕作放棄地の増加、世界からの輸入に大きく頼る食料事情などだ。

当然ながらITを使い農業の生産性を上げることを考えることで生活を豊かにしようとの動きが出て来る。勘と経験に頼っていて非効率だった昔の農業を変え低コストで楽をしても儲かる農業が出来れば若い世代の参入も期待できると信じている。半導体エレクトロニクス業界からの参入も見られる。後述するように富士通は、農業クラウドを提供している(参考資料1)。

さまざまな必要なデータを用い事業遂行にICTを駆使することで効率と生産性が向上する。野菜の出荷では、農業クラウドからの情報を元に、明日の相場が市場で安いと予想されれば今日と明日は収穫作業を止める、そして別の作業ができる。これは重要な経営判断であり競争力向上につながる。気温、湿度、降雨など環境情報をクラウドに集め、必要なデータ処理をすることにより現場作業にフィードバックする。ICT担当の官庁、総務省も農業クラウドを始めた(参考資料2)。セミコンポータルでも2009年に「農業と半導体産業の融合?!」の記事を掲載している(参考資料3)。

知人の二男は就職に苦労し8年もの間、定職につけなかったが、協力者が現れて田圃を借りることになった。無我夢中で作ったコメは、初年度収穫が3600kgだったが競争市場で売れなかった。悪戦に苦闘する時に、米卸会社の担当と知り合いアドバイスが得られた。コメは、ある程度の量の売れる品種を揃える必要があり、そのような戦略で進めるべきだ、と言われた。二男の場合、「みつひかり」が良かろう、となった。理由は多収化しやすい上、味はねばりが少なく欧米やアジアの人にとっても食べやすく、天丼や牛丼などのどんぶりものに適する。だから牛丼チェーンに売れるとのアドバイスは、2年目から奏功し、みつひかりで自信をつけた二男は農業に定着できそうだ。

若い人が主体の農家は熟練農家のノウハウを使えるようになるだろう。農業クラウドは使用料が安価であれば食料費の低減をもたらすだろう。農水省や総務省の政策にも反映させるべきだろう。愛知県にある鍋八農産はトヨタのカイゼン方式を取入れた農作業管理ソフトを試験的に使い効果を上げた。1月7日の日本経済新聞によると、従業員が繁忙期に休みをとったが鍋八にとって前例のなかったことだという。それのみならず大きなコスト削減も達成されている。

日本酒ブランド獺祭(だっさい)のメーカー旭酒造は、富士通の農業クラウドを導入している。その原料米は山田錦だ。旭酒造は安定調達のために栽培条件を分析している。よく知られているが、富士通は福島県の半導体生産のクリーンルームでレタスを試験生産している。種々のデータを集め農業クラウドの開発、構築に役立てている。ベトナムに野菜工場を展開していることでもわかるが、近く農業クラウドをアジア各国に本格展開する。人口が増えている世界では、食料が逼迫する故に農業クラウドをビジネスチャンスとして捉える。

エリック・シュミット(Eric Schmidt)はFarm 2050(以下、ファーム2050と称する)を掲げている(参考資料4)。エリックはカリフォルニア大学バークレイ校とプリンストン大学でソフトウエアを学んだエンジニアだが2001年から2011年までGoogleのCEOを勤めた。ファーム2050の考え方は次のようなものだ。世界の人口増加は激しい故に、食料は不足する。従って、食糧増産の規模は2050年までに今の70%アップが必要になる。現在世界人口は70億と言われているが、2050年は100億人になると予想している。100億人を食べさせるのは大変だ。今や世界の企業家の90%の人材がわずか10%の問題解決にしか当たっていない。だから農業を含む残り90%の問題は放置されている。

農業法人の新規参入は、エリックが住むシリコンバレーでも想うように進んでいない。理由は資金不足だ。シリコンバレーでハイテク事業を提案すると資金は集まり易いが、農業分野は資金が回らない。農業専門の新しい会社が出来てイノベーションを興し、その力で食料の増産をすべきなのだ。農業にハイテクの力、イノベーション、資金力、人材、経営力を持込むべきだがそれができていない。今や新しい用語が使われている、Agriculture Technology = AgTech (アグテック)だ。アグテックを新規にスタートする会社が多く必要だ。

アグテックにおける新規スタートアップ会社は、資本力をつけて、事業をデザインし新農業技術を発明し、その上で農園で生産しテストするべきなのだ。ファーム2050のパートナーは現在、 Google、DuPont、アグコ(Agco)、UTCのSensitech、そして3Dロボティクス(Robotics)の5団体に限られている。思うように進まない理由は明白だ。農業はセクシーさに欠ける。アメリカやシリコンバレーで農業は恰好悪いのだ。新規公開株や、山を動かすような大金を使う企業買収などとは縁が遠い。ファーム2050はやる気のあるアイデアに満ちたスタートアップ企業を求めている。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

参考資料
1. Fujitsu Intelligent Society Solution
2. 総務省が推進する農業クラウド
3. 鴨志田元孝、農業と半導体産業の融合?! (2009/03/10)
4. Erick Schmidt、Farm 2050

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