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大躍進するスマートフォン

スマートフォン(以下、スマホと略称する)の大躍進が始まっている。スマホの先駆けは、2001年にデビューしたiモードだ。10年も前にスマホの先駆を世に出したNTTドコモの技術力は相当なものだと言える。

今年5月31日に都内で講演したヤフーBS事業統括本部の窪田まゆみ(敬称を略する)は、「デバイスの多様化によるユーザー動向の変化」という演題で講演をした。Yahooはよく知られているように、そのホームページを中心に検索ビジネスを展開している。多数のユーザーはYahooのホームページから検索作業に入る。その際どんなデバイスをユーザーが使うのかはヤフーにおいて最大の関心事であるが、ヤフーはその答をログから知り得る。関心が高い訳は後に述べる。

ユーザーが使うデバイスはPCや、iPadのようなタブレット端末、そしてスマホ並びに携帯電話だ。当然だが、これらデバイスの中核主要部品は全て、CPUやメモリーなどの半導体だ。PCの後を追ってスマホが躍進し半導体が大量に使われるのはわが産業にとっては大いに歓迎したいところだ。

IT企業の一方の雄であるヤフーBS事業統括本部において、特に笑いが止まらないうれしい事態は2011年4月末締め切りのデータに表れたが、検索PV(ページビュー)が前年比、22%プラスに増加したことだと、窪田は胸を張った。大地震を越えて22%増のジャンプは見事な成長だ。ヤフーによると検索PVのデバイス別寄与を見ると、iPadが689%そしてスマホが750%だ。桁の間違いではない。750%と言えば6.5倍を意味する爆発的成長だ。そして、PC以外で検索するPV成長率は18.3%とのことだ。

さてスマホは画面が小さいのでPCで見るホームページと同じように設計すると狭い画面に詰め込む形はかなり見にくい。だからヤフーではユーザーがPCの時は、PC専用のホームページをユーザーに見せるが、スマホのユーザーにはスマホ専用の狭くても見やすいホームページを設計している。このために、ヤフーではどんなデバイスをユーザーが使うのかが最大の関心事になる。IDCの予測で2010年のスマホの販売台数が国内で500万台、それが2014年には2000万台を越えるとされている。スマホは当分の間、右肩あがりで推移すると見られている。半導体産業にとっては朗報だ。

一方、PCは同じ予測で750万台の線を前後していて需要は安定している。これを知って「ITがコンシューマー化している」と唱える人もいるが、要はスマホが一般化し大衆化しているのである。大衆化が進み所有者が増えて半導体の生産と消費が牽引されて増加することを期待する。

大衆化しつつあるスマホは誰が使っているか?ヤフーのデータでは女性より男性が多く、年齢順では30代、40代を合わせて54%となって半数を越える。職業では多い順に、事務職、大学生、大学院生、その他技術者、高校中小学生、主婦、営業職、マーケッテイング職などとしている。苦笑せざるを得ないのは末尾に位置する40代以降の役員管理職だ。筆者のイメージでは運転手付きの黒い社用車にふんぞり返る20世紀型の重役さんだ。この人々はスマホをあまり使わずパイチャートで6%を占めるに過ぎない。

一方、PC向けMPUの雄、インテルは今のところスマホに参入していない。スマホ向けチップへの参入を狙っているとの噂はあるが、どうするのだろうか?将来はPCを買おうかそれとも安価なスマホで済まそうか、と悩む購買層が確実に数多く発生する。統計でもPCの売り上げは横ばいだ。外からの観察ではインテルは何とかスマホ事業に参入したいはずだ。スマホは電話機能が搭載されたPCだと筆者は考える。したがって高度なOSも必要になる。米グーグルは2008年9月にスマホ向けのOSアンドロイドを公開した。アンドロイドはオープンソースであって誰でも無償で使える。英国の調査会社のデータでは、全世界における2010年10-12月期のスマホの出荷でアンドロイドを搭載したスマホは前年同期比が7倍にもなり、数では3,330万台に上った。これはアップルのスマホ用独自OSの同時期の数1,620万台を抜いている。

日本経済新聞7月2日朝刊によればフィンランドの携帯電話メーカーのノキアが今年、8月末に日本の携帯電話事業から撤退することになった。スマホではない普通の携帯電話事業は成り立たないためと考えられ、スマホの勢いに負けたのだろうと考えられる(注)。日本から携帯電話が消えることはないだろうが、パイが小さくなるのを避けられなくなって来た。

6月25日のデイリー讀賣紙は、過熱するスマホ戦争とのタイトル下、日本のスマホ市場を記事にした。それによると2010年時点の日本市場は、アップル、シャープ、ソニー、サムスンそして富士通がこの順で席巻しそのシェアは同順でそれぞれ、37.8%、 24.3%、9.8%、9.0%そして8.8%であり五強で計89.7%である。即ち海外メーカーが2社もありその合計は、46.8%に至る。ホームの戦いやすいマーケットで、このような成績はいかがなものかと思う人もいるはずだ。

CNNなどの今年五月末の報道では世界保健機構(WHO)が、スマホを含む携帯電話が発する微弱な電磁波が癌に至る脳腫瘍を引き起こす可能性なきにしもあらずとの警告を発した。もちろん、必ず癌になるとの話ではないがスマホの使用について、WHOまで論ずるほどの影響が出ている。
スマホの躍進は液晶メーカーにも影響を及ぼしている。報道によれば東芝モバイルディスプレイはソニーモバイルディスプレイと統合することになったようだが、これに日立ディスプレイズも入る模様だ。産経電子版(6月30日)の報道では、「中小型液晶、東芝・ソニー連合に日立も合流へ 世界シェア首位になる」、としている。
筆者の見るところ、スマホの躍進の元になっているのはそのすぐれた利便性にあると考える。スマホはPCほどでなくとも自由にインターネットを閲覧できる上に電子メールとの親和性も高い。このため、スマホを社用に使わせる会社も出現している。営業社員が外出先からスマホでERP(Enterprise Resource Planning、企業の専用情報統合HP)にアクセスするのは可能であり書込みもできる。顧客訪問速報は即時に全社に伝わる。PCに出来ないことが出来るのがスマホで、もちろん、電話をかけるのはその基本だが、応用ソフトが豊富にそろっているのでナビ機能も使える。したがって知らない街の小さなビルを探して訪ねることが容易になり、事前に地図を印刷して持ち歩く手間はいらない。このようにスマホの利便性は高く、結果として生産性を上げるのにも貢献する。


編集部注:ノキアの日本における携帯電話事業は、携帯電話を売るのではなく携帯電話用の部品調達がメイン業務であった。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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