セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

百花繚乱の様相を呈してきた半導体のネット市場

米国、ラスベガスで年初に今年も華やかにコンシューマエレクトロニクスショー(以下 CES と略称)が開かれた。この展示会の規模は大きく今年も約12万人が参加した。この規模がいかに大きいか?セミコンジャパンと比べられる。SEMIの広報によればピークだったセミコンジャパン2000年と等しい人数なのだ。

今年の CES ではPCの主役交代が見えて来るだろうと、1月3日のサンノゼマーキュリー紙(SJM紙)が予想記事を出していた。次の主役は何か?スマートフォンや iPad などの新しいモバイル機器、ネットにつながる新時代のテレビ、そして乗用車向けのデジタルコンソールなどが挙げられている。iPad はタブレットコンピュータといわれるが、対抗してタブレット市場を狙うメーカーは多い。記事から推測すると、今年のCES から以下のことが予想される。新しい機能を積んだスマートフォン、タブレット、スマートカー、そしてスマートテレビが近未来に大挙して出現すると思われる。半導体のネットを介した応用市場は百花繚乱の様相を呈してきた。相対的にこの市場でのパソコンの勢力は衰えざるを得ないのだろうか。CESの報道によると、なにしろアップル社は2010年10月--12月の四半期で733万台もiPadを売ったのだ。内蔵されているCPUやフラッシュメモリーそしてDRAMなどの半導体が売れたことになる。

この状況を見て動いたかどうかわらないがNECは主力のパソコン事業で、中国のパソコン最大手、レノボ・グループ(聯想集団)と、日本国内での合弁を含む提携交渉を進めることになった、と発表した。NECはパソコン販売台数で国内首位だが収益力が低く、パソコンの主役交代に向けて提携による競争力強化が必要と判断したのだろうか。世界シェア4位のレノボと組むことで、将来的には海外展開を強め、かつレノボとはタブレットの共同開発も行う動きだ。タブレットはパソコンとスマートフォンとの中間に位置するが、ラップトップの出荷台数を米国では既に越える勢いになっていると、SJM紙はいう。iPadの急進展は競合他社の「そんなに売れなかろう」との憶測を覆した。iPadは軽くてシニアですら持ち運びに難儀しない上に、タッチスクリーンは大きいので操作に苦労しない、とされ需要が多いのは当然だ。

CESを主催するコンシューマエレクトロニクス協会のCEOであるG. Shapiro氏は会見で、タブレットコンピュータが計画中のものを含めてデザイン数にて80機種を越えて今年のCESで紹介されるだろうと見ている、と発言した。80機種とは非常に多すぎるし淘汰されるに違いなく数年後に市場に残るのは1/20、即ち3〜4機種にすぎないだろうと筆者は見る。これ等の後続機種はもちろんiPadとは同型ではなくサイズなど大きさの仕様も、使われる基本ソフトであるOSも異なった製品になるはずだ。iPadはiOSを使うが、シャープのGalapagosはグーグルの無償ソフトウエアプラットフォームであるAndroidを使用している。

実は、パソコンの変遷を振り返るとタブレットが人気を持つだろうことは予測されたものといえる。誕生以来、コンピュータは小型化と個人化、即ちパーソナル化が進んだ。メインフレームがワークステーションになりその後デスクトップが全盛になった。後発のラップトップは数でデスクトップを越えた。今やタブレットが出現し更に小さなスマートフォンが普及している。コンピューティングはモバイルに舞台を替えたのみならずその使われる領域の変化も、実は注目すべきだ。例えば、ネット接続型のテレビジョンが普及するだろう。CESにてネットテレビと関連した「スマートTV」という家電の新たな概念を表す用語が出てきている。日本経済新聞によると、韓国サムスン電子の尹富根(Boo-Keun Yoon)氏は「テレビは家電のリーダーである。このテレビを軸に豊かなデジタルライフを構築していくべきだ」と主張した。尹富根氏は、テレビを中心に各種デジタル機器をネットワーク化していくスマートTVがデジタルライフの軸になると強調した。本当に普及するかはもちろん、未知数だ。

新しいテレビの動きもすでに見えていた。それは2010年CESでの東芝の発表だ。東芝はセルプロセッサーを内蔵したテレビを出展していた。さらに昨年10月にグーグルは専用ソフトウェアを導入したテレビのセットトップボックス(STB)を紹介した。このSTBでは、ブラウザーが動作しインターネットにつながりアプリケーションやコンテンツをダウンロードすることができる。したがって茶の間のテレビ中心の娯楽に新たなダイナミックな要素が加わる。

テレビの次は乗用車である。車の中心になるデジタルコンソールはコンピュータを持ったコマンドセンターになるだろう。たとえば「ゆっくりとスタートせよ」などと停車中の車に命令するボイスコマンドを認識する機能が使われる。ネット経由の音楽が流れる。事故を予測して直前に警告を出したり、故障診断も可能になりつつある。最初は高級車から始まって普及車でもコマンドセンターたるコンソールが乗用車に搭載されるだろう。

タブレットに使われるMPUはパソコンのCPUと異なりARM社がリードしている。三星などもタブレット製品の販売を開始したが、ARM社のプロセッサコアを使用しているようだ。インテルはパソコン市場ではMPUの第一人者だが、この市場では、ARMと競合状態にある。インテルのAtomはWindows OSはもちろん、MeeGoやGoogle製Androidなどにも通用するべく設計されている。マックを除く全てのパソコン用MPU市場を制覇したインテルだがiPadの今のばく進振りは痛いものになった(SJM紙)。

CNETの記事によると、Otellini氏は、タブレット戦略を進めていく上でのIntelの最大の強みは、強大な製造能力だと述べている。「従来のコンピューティング市場で何十年も行ってきたように、世界最先端のシリコントランジスタテクノロジをこれらの新しいセグメントに応用し、省電力性、パフォーマンス、コスト効率に地球上で最も優れた製品を提供するつもりだ」としている。 

Atomは発表のあった4年前のチップから、今や組込システム技術のCPUコアとして、プロセッサやSoCに集積されている。組込システムとは、英語のEmbedded Systemの訳語から来ているが、システムの中にプロセッサとそれを動かすソフトウェアを組込むことで複数の機能を提供することができるようにしたものだ。インテルも安閑とはしていられない時代がやってきた。

電子書籍の市場は単調に増加している。2005年に100億円だったこの売上は2010年には600億円を越える勢いだ、とデイリー讀売紙の本年1月5日号が伝えた。デジタル書籍はデスクトップやラップトップなどのパソコンでも読めるが、携帯性を考えればあらゆる点でモバイルリーダーが好ましいだろう。電子書籍を読むにはタブレットであるiPadが好適だし、ソニーの「リーダー」もタブレットになっている。今年の売上は国内で750億円にもなると同紙は言う。NTTが製品Galaxy Tabを出してきた。シャープはGalapagosと命名したタブレットで電子書籍市場を戦う姿勢だ。百花繚乱の様相を呈してきた半導体のネットでの応用市場が面白くなって来た。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

月別アーカイブ