セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

注目されるレアアース、レアメタル

最近、キーワードとしての「レアアース」が急浮上して来ている。例えば10月6日付けの讀売新聞朝刊を開いてみると一面、三面…と賑やかであり、この所、このレアアースという文字を目にしない日はない。「希土類」とも呼ばれるレアアースの定義については、消息筋によると2001年に国際純粋応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)で議論され、結果17種が決まった。それは原子番号で、21、39そして次の57から連続で71までの計17原子である。

レアアースが注目される理由は、わが国において戦略的に重要な自動車、IT製品を製造する上で不可欠な素材であるためだ。レアアースなくしては、電気自動車はおろかハイブリッド車(HEV)などの先端的ハイテク製品は立ち行かなくなる。17の元素があるが応用上重要な13について、9月9日付けの讀売新聞朝刊は記事を掲載したが、筆者は原子番号を加えるなどの整理をして次に掲げる。

原子番号 希土類金属 応用例
21 スカンジウム 屋外競技用場照明
39 イットリウム TV、蛍光灯
57 ランタナム 高屈折率レンズ、燃料電池
58 セリウム 研磨材、排ガス浄化触媒
59 プラセオジム 磁石、熔接用ゴーグル
60 ネオジム HEV向磁石、レーザー、家電
61 プロメチウム 蛍光灯の点灯管
62 サマリウム 磁石、中性子線捕獲、光ファイバー
63 ユーロピウム TV、蛍光灯
64 ガドリニウム 原子炉
65 テルビウム 光磁気ディスク
66 ジスプロジウム HEVモーター
68 エルビウム 超電導


希土類鉱石は、国内で産出せず希少である故に当然高価格である。其のうえ互いに化学的性質が似ており且つ安定な元素なので精練に手間がかかる事は容易に理解される。従って精練で価格は更に上がる。ジスプロジウムの最近の市場価格は(以下は全て1Kg当りの米$の値)、もちろん変動しているのだが$400程度である。比較の為に銅を示すがこれも変動しているが凡そ、$8である。ジスプロジウムは実に銅の50倍だ。意外に高いのが太陽電池向けのポリシリコンでこれも変動しているが、$200だ。矢張りレアアースにはかなわない。

ネオジムとジスプロジウムはHEVの大型駆動モーターに広く使われていてモーターの磁力はノン・レアアース製の磁石を圧倒する。問題はコストだがコストの折り合いがつけばEVやHEVに用いられるのは当然と考える。

さて大前研一博士は、http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100907/244551/を本年9月に発表して「政府のお粗末な交渉力」を批判した。今年の尖閣諸島をめぐるトラブルで中国がレアアースの出荷を止めたとの噂が出た時のことだ。その一部を引用すると、「流通量の少ない元素であり、しかも中国が生産量の97%を占めている。その中国が環境保全を理由に挙げてレアアースの輸出を大幅に絞り込んでいる。採掘の際に環境に大きな被害を与えることが懸念されるため、と中国は主張している」。さらに続けて書くと、政府はレアアースの輸出制限を緩和するように中国に求め、かつその理由として、輸出が制限されると、日本だけでなく世界全体が影響を受けるとしたが、これは正しい。しかしその交渉は「とてもお粗末だ」と切り捨てた。申し入れの結果、中国の返事はゼロ回答だったからだ。確かに、生産量だけ見れば、ほとんどが中国産だ。しかし埋蔵量を見ると、カザフスタンなどのCIS(独立国家共同体)、米国、オーストラリア、インドなどにもレアアースはあって中国以外の埋蔵量は中国の2倍程度ある。したがって、中国から輸入できなくなったとしても、他国のレアアースを採掘して使えばよいはずだ、と博士は指摘している。中国以外の埋蔵量が相当あるので多角的なアクセスができれば安心であると、筆者は考える。

レアアース以外にもわが製造業にとって劣らず重要な金属素材が存在する。「レアメタル」である。資源エネルギー庁鉱物資源課は、平成21年7月にもレアメタルの確保戦略をホームページで公表した。レアメタルとは、「レアアース+プラチナ+リチウム+タングステン+インジウム+ガリウムなど 」を指す。レアメタルは、ともかく希少な金属を意味する。

レアアース以外では、特に重要なレアメタルは下記であろう。
プラチナは自動車や重機などの排ガス浄化用触媒や化学プラントに使用する。
リチウムはイオン電池やアルファ線カウンタに使う。
タングステンはドリルやカッター等の超硬工具として必須な素材である。
インジウムは薄型TVの液晶パネルの透明電極として重要だ。
ガリウムは、青をはじめ色とりどりの発光ダイオードに必須である。
ハフニュウムは、high-k素材として今後半導体にも多用される方向にある。

high-k は、IBMのA. Callegari等が2001年9月に発表した論文(Physical and electrical characterization of Hafnium oxide and Hafnium silicate sputtered films, J. Appl. Phys. 90, 6466, 2001)に端を発する。この論文によるとハフニュウムの酸化膜の比誘電率はシリコン酸化膜の3.9を大幅に超えて21という結果を得ている。

エネルギー庁によって公表された確保戦略を見てみると、優先度を見極め、政策と技術動向を考慮し集中的、戦略的に取り組むとあり、大いに期待がかかる。さらに具体的には、

 1.資源国と互恵関係構築などによる戦略的な海外資源の確保
 2.リスクマネーを投入して柔軟に周辺海域の海底鉱床などを探鉱
 3.携帯電話やTV等、環アジアを範囲とするリサイクルを推進
 4.代替材料を開発
 5.備蓄制度を検討

とあって期待したいところだ。レアアース、レアメタル共に、わが国ではその応用開発のみでなく、確保にも注力しなくてはならないという厳しい局面にある。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

月別アーカイブ