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日本半導体の危機を考える

編集長の最近の「津田建二の眼」のテーマにもなった日本半導体の沈下が止まらない。新著の「半導体、この成長産業を手放すな」が出版されたが、一方で半導体製造会社の数は大きく減ってきた。筆者は一貫してこのシリーズで述べているが日本の製造業全体が強くなって欲しいと心から念じている。EUはともかく、米韓そして台湾の半導体には勢いがあるように見える。

かつて1988年当時は日本勢が強くて、現在勢いのあるインテル、三星そしてTSMCの3社は遥かに日本の後塵を拝していた。このころの日本製半導体の輸出競争力は凄まじく米国はクレームを付けて来て日米半導体摩擦になったほどだった。1988年から現在に至って、我が国半導体はジリジリと後退した。この間に改善策、解決策は試みられたが効果は少なかったと言える。

日本では人口の減少が始まった。その上、理科系学科に進む大学生の数が減ってきたとの指摘もあるようだ。半導体産業のように高度な技術開発を必要とし競争が激しい産業にはトップクラスの人材が十分に供給されなくてはならない。そのような人材は多数の母数のなかから競争によって選別されて集まるのが好ましい。
オリンピックを例にとろう。人口の多い国が、選手の選別などで有利になると一般的には思われている。しかし、必ずしもそのとおりとは言えないのが現実の姿のようだ。直近のバンクーバー五輪では韓国が金メダルを6枚獲得した。一方、日本はゼロだった。人口は日本が圧倒的に多く、その倍率は計算上は約2.7倍になる。このことは体格の差も日本人とたいして違わないはずの韓国が日本とは異なる選手の選別と育成方法を採用し、そのことが原因で多くの金メダル枚数に到ったと考えるべきだ。何か日本とは大きく違う戦略のなせるワザといえよう。結論は、人口減小の責だけを論じてはいけないのだ。

他の産業の例では原子力がある。日本原子力学会誌, Vol.50,No.7(2008)による、と神田 啓治氏(エネルギー政策研究所長、京都大学名誉教授)は次のような趣旨を述べている。「2007年11月にモスクワで開かれた原子力発電所建設国際会議なるものにおいて、冒頭でロシア政府の見解が述べられたが、『世界で原子炉を建設できる会社は5社しかなく、そのうち3社が日本であり、ロシアは6番目の会社になれるかもしれない。そのためには日本と協力体制を築くことが重要である』とロシア側は強調していた。なるほどそういう見方もあると感心して聞いた。日本を除く世界の趨勢はスリーマイル島事故とチェルノブイル事故以降、原子力プラントの新設はスローダウンし、大手メーカーの米国、フランス、英国、ドイツ、カナダ、ロシアでは、建設がほとんど中断していた。しかし、先進国の中で日本だけは少しずつではあるが新設炉を製造し続けていた上、新しい型式の複数の原子炉の開発にも注力してきた」。

この論文を見て原子力に関して何も知らない筆者は、誠にうれしく思った。地球環境の問題から、これからの時代の発電は原子力が重油火力発電にとって代わるだろうと思っていたのだ。原子力ビジネスで日本の勝利が期待できる時代が目前だ、と考えていた。何とうれしいことか!我が国が原子力発電事業で繁栄することは半導体ビジネスにおいても重要である。半導体をドライブするのは電力であること、そして原子力発電制御に半導体が使われるためだ。

ところが昨12月になって信じられないことに、以下の日本経済新聞の12月の記事を見つけた;
【アブダビ=太田順尚】アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国は27日、アラブ諸国初となる原子力発電所の建設を、韓国電力公社を中心とする韓国企業連合に発注することを決めた。発注額は200億ドル(約1兆8000億円)。2011年に着工し、17年以降順次運転を開始する。日立製作所とゼネラル・エレクトリック(GE)を中心とする日米企業連合は敗退した。アブダビ国営原子力エネルギー会社(ENEC)が発表した。韓国連合には韓国電力のほか現代建設、斗山重工業、サムスン物産などが参加、27日にアブダビ側と合意文書に調印した。

即ち、韓国連合が原子力ビジネスで日本と米国の連合を抜いてアブダビの原子力ビジネスを獲得したのだ。日本は技術で勝ち戦略で負けてビジネスを取られた、と言えよう。

最近、耳に入った経団連幹部のつぶやき:「なぜ日本の若者は留学や海外赴任を嫌うのか?内にこもってないでもっと外へ出ろよ」。日本経団連が募集している留学生試験の 面接担当者がこうぼやいた、という話が伝わった。ツイッターのせいかこれ以上の詳細はわからない。しかし留学生のデータは、はっきりしている。本年4月11日付、ワシントン・ポスト紙、「寡って、米国の大学に大挙留学した日本人学生が来なくなった」という趣旨の記事が掲載されたことをうけて、J-CASTニュースは、「日本人の米国留学 10年で4割減少の理由」という記事を4月17日に掲載した。確かに日本人学生数は右肩下がりが顕著で2008年のデータで3万人弱になった。一方、日本よりも人口が少ない韓国は右肩上りで2008年に7万5000人ほどで日本より2倍以上も多い。くやしいが経団連幹部のつぶやきは的を得たものだった。

かつてのウォークマンは世界180カ国で売られたと思われる。販売しなかった国は北朝鮮など、ほんの数カ国にすぎなかったほど、日本の製品が世界を制覇した。昨今はiPodがウォークマンにとって代わったがiPodは一部ウォークマンからビジネスモデルを学んでいる。ウォークマンは半導体リッチの優れた発明だ。ウォークマンがそうであったように今後、続々と世界で売れる製品を作り出して行けば半導体消費はいやが上にも伸びる。生産会社は多忙になる。今、世界で売れている強い日本製品はデジカメ、フラットTV、そしてゲーム機があるが、更に2-3倍増の製品群を世界で売ることを考えなくてはならない。これらの製品はコモデティ化で陳腐になるリスクを負っている。だから新製品開発を止めてはならないのだ。

筆者はかつて見た民生エレクトロニクスの圧倒的勝者の位置を日本に期待したい。以上、私見を述べたが冒頭の我が国の半導体ビジネスに戻って考えると、日本の半導体は日本市場に加えて、より圧倒的に大きな世界の市場を狙うべきだと思う。過去1988年にできたことができないはずはないのだから。ソニーの盛田昭夫元会長(故人)のようなスケールの大きな人材を育て、世界で縦横に活躍いただきたいと切に思う。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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