セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

シリコンカーバイドの登場

シリコンカーバイドはバンドギャップがシリコンと比べて大きく結晶の融点も高いため、高温でも動作し使用時の温度範囲を広くとれる。かつ逆耐圧が高く稼働電圧電流を大きくとれる利点もある。その上、熱伝導率はシリコンの3倍もあって、これはパワーデバイスにとって夢の半導体材料といえよう。そのシリコンカーバイドが市場に登場して来た。

日本はその先頭を走っていると言ってもよいだろう。シリコンデバイスの動作温度が175度と比べるシリコンカーバイドは500度と大幅に改善する。冷却装置は不要もしくは簡素化されるので、エコロジー上のメリットも大きい。

シリコンカーバイドで作るデバイスの例にはショットキーダイオードとMOSFETがありIGBTには向かない。シリコンカーバイドで作るIGBTがシリコンに劣ると早い段階で明言したのは津田建二だ。「カーエレクトロニクスの進化と未来」という記事でSiC材料はIGBTに向かないと述べたが、 これは正にその通りだ。IGBTがオン状態になるとそのPN接合が順バイアスされその降下電圧はバンドギャップに比例するのでシリコンのそれの3倍にもなるシリコンカーバイドは相当に不利になってしまうからだ。

新しい半導体の出現を歴史的に見るとゲルマニウムが民生用トランジスタとして実用化され、産業用などにシリコンデバイスが続いた。そしてシリコンは超LSI時代を迎え広く利用されるようになった。そしてガリウムヒ素が化合物半導体として研究された。ガリウムヒ素は周期律表で四族のゲルマニウムの隣の三価のガリウムと五価のヒ素の化合物で3と5の平均が4になるので組成が1対1なら四族として半導体材料である。ヘテロ接合バイポーラトランジスタや、HEMT即ち高電子移動度トランジスタとして携帯電話などに応用されている。GaPも同様で、これらの化合物半導体はLEDやレーザーなどの発光デバイスにもなった。シリコンカーバイドは周期律表において初段目の四族である炭素と二段目の四族であるシリコンの化合物であってやはり半導体であると理解できる。

三菱電機は2008年2月に全SiCパワーモジュールを開発してインバータのパワー密度を4倍にしたと新聞発表をした。内容はインバータ回路にSiC-MOSFETとSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)を組み合せた。SiC-SBDを整流回路に使い出力100Aでのスイッチング動作を可能にしたものだ。ショットキーバリアダイオードは多数キャリヤだけで動作しリカバリータイムが速いという特性を有している。この面においても発表されたインバータはIGBTを超えるものだ。インバータのパワー密度がSi IGBTと比べ4倍を超えたのはまさにシリコンカーバイドのおかげだ。三菱電機は寄生インダクタンスが減る効果もあってこのインバータはスイッチ時間が更に短縮しサージ電圧も減る、としている。

一方、ロームのホームページによると今年の10月に、京都大学大学院の木本教授と共同で低抵抗SiCトレンチMOSFETの大容量化を達成し、シングルチップで300Aの駆動を実現した。大面積トレンチゲート縦型MOSFETの構造を開発したものだ。

今年の春には新日鉄が4Hヘキサゴナル構造の単結晶を開発したと発表している。たくさんの結晶構造を有するシリコンカーバイドだが、この構造は3.23eVのバンドギャップで融点は1700度にも及ぶ。販売を開始したウェーハサイズは2、3そして4インチだ。この結果、米国のクリー社が独占していたシリコンカーバイドのウェーハビジネスに風穴をあけることができた。クリー社に対する競争軸が出来たためのコスト低下に多大な貢献を期待したい。

電気自動車や鉄道などに使われるパワーエレクトロニクスでは、もちろん電力変換時の電力損失が最大の問題であるが、さらなる大電流を実現するためにはオン抵抗を下げる必要がある。高温かつ高信頼なパワーモジュールを実現するにはもう一段の前進が必要でそのためにはシリコンカーバイドの結晶欠陥(一例はマイクロパイプ)を更に減らす必要がありそうだ。しかも、昨今の世界情勢から言うと、自動車から内燃機関が消えることを考える必要が出て来た。このため、満を持して登場して来たシリコンカーバイドに大きな期待がかかるのだ。

米国の先導もあって先進国はスマートグリッドに投資することを本格化させる。その際、太陽光や風力などの自然条件が発電環境を決めるので出力は不安定になるが、スマート化で解決できるだろう。その一技術要素は電池すなわち蓄電技術であろう。そして、電池は直流なので交流が必要な場面ではどうしてもインバータが必要になる。その時もっとも活躍するのはシリコンカーバイドを使ったMOSFETとショットキーダイオードによる新しいインバータであろうと考える。

特許庁が運用する特許電子図書館を検索すると国内発の出願が多くなって来た。過去4年間でシリコンカーバイドに関する特許は320件を超える出願がある。出願人は我国一流の電機系、自動車系そして新日鉄などの会社群であって誠に頼もしい限りである。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

月別アーカイブ