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具体的に動き始めたCHIPS Actおよび輸出規制措置、並びに関連する動き&波紋

昨年夏にBiden米国大統領が署名して成立したCHIPS Actについて、資金提供の機会や申請手続きに関する詳細が発表されている。中国、ロシアなどでのプロジェクトに資金使用を禁じ、中国における拠点拡張を妨げる恐れがあり、そして台湾からも容認できないとの反応が、該法の制限内容に対して見られている。米国の対中国輸出規制措置についても、オランダに続いて我が国が半導体製造装置について米国に追随する表明を行っている。技術先端度合いに対応する対象品目の線引き如何であるが、いずれにしてもビジネスに甚大な影響を孕むということで、関係各国から戸惑い、そして反発の声が高まる見え方となっている。米中の深まりゆく分断の中で、今後どう揺れ動くか、予断を許さない状況、情勢が引き続く現時点である。

≪米中の狭間での葛藤≫

CHIPS Actの補助金について、中国発の見方である。

◇Tech war: proposed US ‘guardrails’ on new chip investment in China to block TSMC, Samsung expansion plans on mainland (3月24日付け South China Morning Post)
→*該ガイドライン案では、米国Chips and Science Actの補助金を受けている企業が、中国、ロシア、イランおよび北朝鮮のプロジェクトに資金を使うことを禁じている旨。
 *この新しい規則は、TSMC、サムスンおよびSKハイニックスなどの大手半導体メーカーが、中国における既存の生産拠点を拡張することを妨げる恐れがある旨。

米国での半導体製造強化に向けて、女性の視点からの記事である。

◇Help wanted: Women needed for U.S. chips manufacturing plan to succeed‐US semiconductor plans depend on women building facilities (3月27日付け Minnesota Reformer (St. Paul))
→Washington D.C.が拠点の States Newsroom経済レポーター、Casey Quinlan氏記事。米国が半導体生産を拡大しようとする場合、特にインテルがオハイオ州で進めている巨大プロジェクトのような拠点を建設する必要があるため、建設業界を女性にとってより快適なものにするための政策変更に大きく依存している旨。しかし、手頃な価格の保育所を探すのに苦労している産業界の労働力に100万人の女性を加えるのは大変なことで、もっと包括的になる必要がある旨。

米国政府からこのほど示された制限について、商務長官のコメントである。

◇For Chip Makers, a Choice Between the U.S. and China Looms‐Microchip firms are poised between China and the US ‐Washington seeks to steer the semiconductor supply chain using ‘guardrails’ under the Chips Act (3月28日付け The Wall Street Journal)
→Biden政権は、半導体メーカーに関して新たな制限を提案、半導体メーカーは、CHIPS Actの下で米国でのICの生産を増やすことができるが、中国での展開は抑制されるかもしれない旨。「アメリカ企業が中国で、また中国とのビジネスを継続することを望んでいる。しかし、米国にもたらされるリスクについては、目を見開く必要がある。」と、Gina Raimondo商務長官。

CHIPS Actによる半導体人材市場の伸びがあらわされている。

◇ON Partners Sees 30% Growth in Semiconductor Talent Market Since the Implementation of the CHIPS and Science Act (3月28日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→今月、多様なCレベルおよび取締役会のリーダーシップチームを構築するピュアプレイのリテインド・管理職専門人材斡旋会社であるON Partnersは、Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors and Science Act of 2022(CHIPS and Science Act)の通過以来、半導体市場のエグゼクティブ・リーダーシップの機会が30%増加したと発表した旨。ON Partnersの基盤は半導体業界にあり、パートナーは2006年以来、この特定分野で業務を拡大してきている旨。

米商務省からの資金提供、申請手続きの発表の概要が、次の通りである。

◇IFTLE 552: CHIPS Industrial Advisory Council (IAC) Update‐CHIPS Announces Details on Funding Opportunity Timing (3月28日付け 3D InCites)
→米国商務省(DoC)は、資金提供の機会や申請手続きに関する詳細を発表した旨。
 ・2月下旬、DoCは商業的な最先端、現行、成熟ノード製造拠点に対する資金提供の機会告知を発表する予定。これには、「前工程」の半導体メーカーと「後工程」のパッケージング拠点の両方が含まれる旨。
 ・春の終わりには、DoCは材料サプライヤーと装置メーカーに焦点を当てた別の資金提供の告知を発表する予定。
 ・秋口には、米国の半導体製造エコシステムをさらに強化する半導体研究開発拠点の建設を支援するための資金提供の機会を発表する予定。
 ・これらの発表には、組織がCHIPS奨励金を申請するための詳細なガイダンス、プロセス、スケジュールが含まれる予定。

韓国・SK Hynixは、規制の免除を米国政府に求め、CHIPS Act資金援助申請は検討中、と次の通りである。

◇SK Hynix to seek further exemption from US chip curbs against China -CEO‐SK Hynix co-CEO will lobby US for continuing exemption (3月29日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→SK Hynixの共同CEO、Park Jung-ho氏は、10月に猶予期間が終了する際に、中国での顧客との取引に関する制限から同社を免除するようバイデン政権に要請する旨。「韓国政府と米国政府間の協議はうまくいくはず」と同氏は述べ、同社はCHIPS Actに基づく資金援助を申請するかどうか、まだ思案中であることも明らかにした旨。

台湾より、Chips Actで恩恵を受けるのは限られるとの反応である。

◇Taiwan 'Chips Act' to benefit only a few companies (3月29日付け DIGITIMES)
→ICデザインハウスの関係者によると、台湾政府のいわゆる"Chips Act"は、半導体エコシステム全体をカバーするものではないため、TSMCと他のいくつかの大手チップメーカーに恩恵をもたらす旨。

TSMCの会長からは、Chips Actの制限&規則は”容認できない”と、乗らないスタンスの可能性が見えている。

◇Certain restrictions in U.S. CHIPS Act are 'unacceptable': TSMC chairman (3月30日付け Focus Taiwan)
→台湾積体電路製造(TSMC)のMark Liu(劉音)会長が木曜30日、米国のCHIPS and Science Actの特定の補足的な制限や規制は”容認できない”もので、潜在的なパートナーが助成金を申請するのを思いとどまる可能性があると述べた旨。

次に、対中輸出規制措置であるが、オランダは先だって、半導体製造装置について米国に追随すると明らかにしている。

◇蘭貿易相、半導体「軍事利用防ぐ」;対中輸出規制を拡大 (3月18日付け 日経 電子版 05:15)
→オランダのスフレイネマーヘル外国貿易・開発協力相は17日、米国が主導する半導体技術や製造装置などの対中輸出規制について「夏前にも輸出制限の対象を広げる」と明らかにした旨。導入済みの先端品の輸出規制に加え、旧式でより汎用性が高い製造装置も対象に加える旨。中国による半導体の軍事利用を防ぐため米国と足並みをそろえる狙い。

現下の情勢のタイミングで、韓国と台湾の半導体協力に向けた1つのスタンスである。

◇S Korean envoy aims to boost chip cooperation‐CHIP BACKGROUND: Coming from the trade ministry and holding a PhD in technology, Lee Eun-ho is Seoul’s first non-foreign affairs pick for the Taipei representative position (3月28日付け Taipei Times)
→韓国の駐台湾代表、李恩鎬(Lee Eun-ho:イ・ウンホ)氏は、グローバルなサプライチェーンの強靭性を向上させるために、二国間の半導体協力をより緊密にしたいと考えており、同氏の工学の知識がその努力に役立つと考えていると、台湾メディアのインタビューに答えている旨。

米国の規制に対する中国の動きが台湾の半導体設計業界にリスク要因と、MediaTekからの見解である。

◇China's response to U.S. curbs a risk for Taiwan: MediaTek chairman‐MediaTek chairman: IC designers may be restricted‐Island's chip designers under pressure as Beijing shifts semiconductor policy (3月28日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→MediaTekのTsai Ming-kai(蔡明凱)会長が、中国が成熟したマイクロチップの製造に転じたことで、台湾の半導体設計会社について懸念がある旨。同氏は、北京の半導体に関する政策が、台湾のIC設計会社にとって有益でないと見ている旨。

昨年の日米の対中国半導体製造装置輸出が、3年ぶりの減少、分断を映し出している。

◇半導体、中国との分断進む;日米の装置輸出2022年は減少 (3月29日付け 日経 電子版 07:19)
→経済安全保障上の重要性が高まる半導体産業で、米中対立を受けた分断が進んでいる旨。有力な半導体製造装置メーカーをもつ日米の2022年の装置の対中輸出額は3年ぶりに減った旨。米国による製造装置などの対中輸出規制が背景にある旨。日本とオランダも追随する方向で供給網の混乱が広がりそう。

台湾・Mediatekより、ここでも苦悩の表明である。

◇US bans good for Chinese chipmakers, and bad for us, says Taiwanese rival (3月29日付け The Register)
→台湾最大の半導体設計メーカー、MediatekのTsai Ming-kai(蔡明凱)会長が昨日、米国の半導体制裁について、台湾のチップハウスに打撃を与える可能性があると述べ、苦悩を表明した旨。

中国の半導体設計業界からの米国規制が障害になるとの表し方である。

◇Chinese IC design industry leaders weigh options after US sanctions (3月30日付け DIGITIMES)
→3月30日に開催されたChina IC Leadership Summitにおいて、中国のIC設計会社、VeriSiliconの創業者兼CEO、Wayne Dai氏は、中国のチップレット開発は基本的に28/22nm、14/12nm、5nmの3つのプロセスノードに支えられているという見解を示した、と中国のハイテクメディアIjiweiが報じている旨。中国は14nmの量産を達成したが、Dai氏は、装置や材料に関する米国の規制が障害になると指摘した旨。

我が国の米国に追随するスタンスの表明関連である。関係各社、戦略の見直しを迫られる一方、中国は即座の反発である。

◇Japan Curbs Semiconductor-Gear Exports as Ties With China Chill‐Japan will limit IC gear exports to China ‐Move comes as Tokyo’s foreign minister plans to visit Beijing after detention of Japanese man (3月31日付け The Wall Street Journal)

◇半導体装置23品目規制;中国への輸出、先端品難しく (3月31日付け 日経 電子版 11:02)
→政府は31日、先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加えると発表、中国向けの輸出が難しくなる旨。米国がスーパーコンピューターや人工知能(AI)に使う先端半導体の製造装置などで中国向けの輸出を厳しく制限しており、日本も足並みをそろえる旨。各国の産業競争力や安全保障を左右する半導体分野で世界の分断が深まってきた旨。

◇半導体「ブロック化」 日本は輸出規制で足並み、中国反発 (4月1日付け 日経 電子版 02:43)
→日本が先端半導体の製造装置の輸出規制に踏み出す旨。中国への対抗姿勢を強める米国の要請で足並みをそろえる旨。オランダも同調する旨。経済のブロック化が鮮明になり、企業は戦略の見直しを迫られる旨。分断のコストが成長の重荷になる懸念も強まる旨。

「CHIP WAR」を最近著わしたクリス・ミラー氏による、現下の分断についての見方である。

◇中国、半導体の分断で弱体化も 米規制が要所突く‐米タフツ大のクリス・ミラー准教授 (3月31日付け 日経 電子版 16:00)
→半導体の供給網は今後5−10年で「中国」と「中国を除いた世界」に分断すると考えられる。中国は米国の規制に対応するため、半導体関連部材の国産化を推奨するだろう。欧米で流通するスマートフォンには米国や日本、台湾製の部品が増え、中国の製品には中国メーカーの部品が増えることになる。
米国による半導体を巡る対中規制の有効性を判断するには、最低でも5年はかかる。・・・・・

CHIPS Actおよび輸出規制措置について、それぞれ動き始めた現時点を見てきたが、さらに関連する動き&波紋を以下取り出している。

中国から台湾にファウンドリー発注を移す動きについてである。

◇Taiwan foundries see surge in orders transferred from China (3月24日付け DIGITIMES)
→米国が中国との半導体戦争をエスカレートさせたことで、台湾の専業ファウンダリーに発注を移す企業が増えている旨。しかし、TSMCをはじめとする台湾のファウンドリーが、中国からの移管注文に対して提示する契約価格は、非常に硬いものとなっている旨。

Huaweiの米国制裁下の半導体製造に向けた取り組みである。

◇Huawei reportedly says it has developed domestic chip design tools despite U.S. sanctions (3月27日付け CNBC)
→*Huaweiの輪番会長であるEric Xu氏は、同社が他の国内企業とともに、14ナノメートル以上の半導体を製造するために必要な電子半導体設計ツールを共同で作成したと述べた旨。
 *同氏の主張が事実であれば、Huaweiは半導体における米国技術への依存度を下げるための一歩を踏み出したことになる旨。
 *2020年、ワシントンは制裁を通じて、Huaweiをアメリカの半導体製造ツールから切り離し、中国の巨大技術企業のスマートフォン事業を機能不全に陥れた旨。

台湾の中国脅威に対する”Silicon Shield”を巡る議論である。

◇Doubts grow over Taiwan’s Silicon Shield (3月28日付け GIS Reports)
→半導体生産における台北の世界的な優位性が、中国の侵略の可能性を低くしているという考え方は、熱い議論を呼んでいる旨。
 *中国は台湾にとって最大の貿易相手国であるが、それは戦争に対する保証にはならない
 *政治的緊張が高まる中、対立の少ない選択肢が模索されている
 *中国と米国は半導体製造の自給率向上を目指している

中国での半導体製造についての気候変動リスクがあらわされている。

◇If the US doesn’t thwart China’s efforts to be semiconductor self-sufficient, climate change might (3月28日付け South China Morning Post)
→中国が半導体製造能力の強化を急ぐ中、気候変動により国内の一部で異常気象が発生しやすくなっており、資源不足や操業に支障をきたす可能性がある旨。

TSMCが、アリゾナ州での追加投資の承認を得ている。

◇TSMC wins approval to invest US$3.5bn in Arizona (3月28日付け Taipei Times)
→投資委員会が昨日、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC、台積電)がアリゾナ州の子会社に$3.5 billionを追加投資し、先端半導体を製造するという申請を承認した旨。

そのTSMC、半導体製造装置および材料を台湾内でさらにつくるよう呼びかけを行っている。

◇TSMC Urges Taiwan to Make More Chip Gear and Materials at Home‐TSMC wants Taiwan to produce more IC gear, chip materials (3月30日付け BNN Bloomberg (Canada))
→TSMCの会長が、高度な半導体製造に不可欠な装置をもっと生産し、$550 billionの産業においてすでに重要な役割を担っている台湾を強化するよう呼びかけた旨。
Mark Liu氏は、台湾は国内の半導体供給エコシステムを充実させる必要があると述べた旨。米国の制裁は中国への重要な技術の流れを抑制しており、台湾は世界中の半導体製造に必要な機械装置の供給においてより大きな役割を果たすことができる、と同氏は木曜30日に台湾半導体産業協会(TSIA)が主催する会議で語った旨。

我が国の受けるインパクトが、改めてあらわされている。

◇半導体装置輸出、対中国が4割;貿易管理の曖昧さ懸念 (4月2日付け 日経 電子版 02:00)
→日本政府による半導体製造装置の貿易管理規則が3月31日、明らかになった旨。成膜や洗浄工程に使う装置の先端品などが対象となり、東京エレクトロンやSCREENホールディングスなど十数社が影響を受ける見通し。輸出量の多い非先端品向けは対象外となったものの、中国は強く反発する旨。中国は日本の装置輸出先の4割を占める最大市場。貿易管理の範囲外のビジネスでも摩擦や萎縮が広がる可能性がある旨。

世界の政治経済情勢、パワーバランスに左右される今後の推移に引き続き注目するところである。


コロナ対応の完全には収まりきらない状況推移に対して、直面する事態への警戒感を伴った舵取りが各国それぞれに引き続き行われている中での世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□3月27日(月)

Silicon Valley Bankの買収合意が発表され、米国金融システムを巡る懸念が後退している。

◇First Citizens Bank to acquire Silicon Valley Bank (SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇破綻のSVB、米中堅地銀ファースト・シチズンズが買収 (日経 電子版 14:32)
→米連邦預金保険公社(FDIC)は26日、経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)について、米東部ノースカロライナ州地盤の銀行持ち株会社、ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループが買収することで合意したと発表した旨。FDICは競争入札でSVBの引受先の選定を進めていたが難航し、中堅地銀が引き受けることとなった旨。

□3月28日(火)

金融システムおよびインフレ懸念が和らいで、大方上げ基調の今週の米国株式市場である。

◇NYダウ続伸、194ドル高;銀行株高で市場心理が改善 (日経 電子版 07:25)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日続伸し、前週末比194ドル55セント(0.6%)高の3万2432ドル08セントで終えた旨。経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)の引受先が26日に決まった旨。破綻処理の進展を好感した買いが米銀行株に入り、米金融システムを巡る過度な懸念が和らいだ旨。市場心理の改善につながり、ダウ平均を支えた旨。

□3月29日(水)

◇NYダウ反落、37ドル安;金融不安後退もハイテク安重荷(日経 電子版 05:33)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比37ドル83セント(0.1%)安の3万2394ドル25セントで終えた旨。金融システムを巡る過度な不安が後退したのを受け、ダウ平均は高く始まった旨。ただ、足元で上昇していたハイテク株やディフェンシブ株への売りが重荷となり、下げに転じて終えた旨。前週末にかけて急低下していた米国債利回りの上昇も嫌気された旨。

□3月30日(木)

中国が台湾切り崩しを図る中、台湾・蔡総統の中米諸国歴訪での米国立ち寄りが中国の反発を呼んでいる。

◇台湾・蔡総統が米ニューヨークに到着;中国「断固反対」 (日経 電子版 07:18)
→台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が日本時間30日早朝(米国時間29日)、米ニューヨークに到着、訪米は約4年ぶり。中米諸国歴訪の経由地として、2日間滞在するものとみられる旨。米台の連携強化をアピールするのが狙い。米台のいかなる形の交流にも「断固反対」を表明する中国が、今後どのような対抗措置に出るかが一つの焦点となる旨。

◇NYダウ反発、323ドル高;金融システム不安和らぐ (日経 電子版 07:43)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比323ドル35セント(1.0%)高の3万2717ドル60セントで終えた旨。3週間ぶりの高値。米欧の金融システムへの不安が一段と和らぎ、消費関連株や金融株などに買いが入った旨。米長期金利の上昇がひとまず一服したのも、高PER(株価収益率)のハイテク株買いを誘った旨。

□3月31日(金)

英国がTPPに加盟、環太平洋から欧州への経済圏の拡がりである。

◇TPP英加盟、世界GDP15%の連合;自由貿易圏拡大に弾み (日経 電子版 02:00)
→英国が環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟する見通しになった旨。加盟する11カ国が31日、閣僚会合を開き合意する旨。英国が加わることで、アジアや米国大陸中心だった枠組みが欧州にも広がる旨。世界全体の国内総生産(GDP)に占める割合は15%に増える旨。投資やサービス、貿易など高い水準のルールを特徴とする自由貿易圏の拡大に弾みがつく旨。

◇NYダウ続伸、141ドル高;金融システム不安の後退で (日経 電子版 07:09)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比141ドル43セント(0.4%)高の3万2859ドル03セントで終えた旨。今週は新たに経営不安に陥る金融機関が出ておらず、金融システム不安が収束しつつあるとの見方が相場の支えとなった旨。ただ、31日に米連邦準備理事会(FRB)が重視する物価指標の発表を控え、上値は重かった旨。

□4月1日(土)

昨年度は、26年ぶりの円安、次の通りである。

◇円安が2年連続で10円超;対ドルで26年ぶり、2022年度 (日経 電子版 02:00)
→米国の利上げ停止が視野に入るなかでも円安圧力が根強い旨。2022年度の円相場は対ドルで11円ほど下落し、26年ぶりに2年連続で10円を超える円安となった旨。貿易赤字の拡大で円をドルに替える需要が根強いほか、企業が海外で稼いだ外貨を円に戻す動きも乏しい旨。人口減少や国内産業の空洞化といった国内経済の弱さから、円安基調が続く可能性がある旨。

◇NYダウ3日続伸、415ドル高;インフレ懸念和らぐ (日経 電子版 06:34)
→3月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比415ドル12セント(1.3%)高の3万3274ドル15セントで終えた旨。朝方発表の2月の米個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が市場予想を下回った旨。米連邦準備理事会(FRB)の利上げが長引くとの懸念が和らいだことが手がかりとなった旨。月末と四半期末が重なったため、機関投資家のリバランス(資産配分の調整)に伴う買いも入った旨。


≪市場実態PickUp≫

【Gordon Moore氏逝去】

半導体に関わってずっと慣れ親しみ、横たわるベーシックとなってきた「Mooreの法則」。
Gordon Moore氏逝去についての記事が続いている。

◇Gordon Moore, Intel Co-Founder, Former CEO and Tech Industry Visoinary, Passes Away At 94 (3月24日付け AnandTech)

◇Intel co-founder Gordon Moore, prophet of the rise of the PC, dies at 94 (3月25日付け Reuters)

◇Gordon E. Moore, Intel Co-Founder Behind Moore's Law, Dies at 94‐Moore's Law creator Gordon Moore passes away (3月26日付け The New York Times)
→技術者、実業家および慈善家であるGordon Moore氏が24日、94歳で逝去した旨。同氏は、1965年に「ムーアの法則」を著し、シリコンウェハー上にますます多くのトランジスタを作製できるようになることを予測した旨。同氏は、消費者が自分のパーソナルコンピューターを簡単に購入できるようになることを理論的に説明した旨。

◇The true lesson of Moore's Law is not about chips (3月27日付け Washington Technology)
→故Gordon Moore氏の造語であるこの法則について、あまりに狭く考えすぎるのは禁物である旨。同氏が意図したかどうかは別として、ムーアの法則という考え方は、チップ上のトランジスタよりも、イノベーションと投資を促進するものである旨。

◇「ムーアの法則は死せず」;インテル、見果てぬ革新 (3月30日付け 日経 電子版 02:00)
→米インテルの共同創業者、ゴードン・ムーア氏が24日に死去した旨。半導体の集積度が2年で2倍になる「ムーアの法則」。ムーア氏に続く半導体エンジニアたちは法則の示す進化のスピードに挑み続けてきた旨。先達の示した道行きは険しさを増しており、インテル自身も高くなり続ける技術的ハードルに苦しんでいる旨。


【ChatGPT関連】

前回、Bill Gates氏がOpenAIのGPTを1980年以降で最も重要な技術の進展と評していると示したばかりであるが、それとは真逆を含むChatGPT関連の内容、動きが以下の通り続いている。

◇Geopolitical situation between US and China affects HPC market vibes‐Analysis: Trade war between China and US roils HPC chip market (3月27日付け DIGITIMES)
→OpenAIのChatGPTやBaiduのErnie Botの台頭により、high-performance computing(HPC)半導体市場の展望は良好に見える旨。しかし、地政学的な影響により、HPC半導体の納入状況が変化している旨。

◇Microsoft「GPT革命」に賭け;「全ての製品にAI」‐ビッグBiz解剖(上) (3月28日付け 日経 電子版 05:00)
→テクノロジー業界がスマートフォン登場以来の激動期に入った。高度な言語能力を持つ人工知能(AI)の実用化が始まり、新たな覇者へ無数の企業が名乗りを上げる。
そんな乱世をスタートアップ顔負けの速さで立ち回るのが米マイクロソフトだ。「すべてAIでつくり変える」。パソコンで頂点に立ちスマホで辛酸をなめた巨人は、AIを「副操縦士」に高みへ飛べるのか。・・・・・

◇Musk, scientists call for halt to AI race sparked by ChatGPT‐Elon Musk wanted to pump the brakes on generative AI (3月29日付け The Associated Press)
→チャットボットやジェネレーティブAIの成長を取り巻くすべてが、あまりにも速く起こっていると感じている人は、あなただけではない旨。イーロン・マスク、スティーブ・ウォズニアック、そして著名なコンピュータ科学者のグループは、すべてのAIラボに対して、GPT-4よりも強力なAIシステムのトレーニングを少なくとも6ヶ月間、直ちに停止することを提案している旨。我々は、WYWWでイーロンをからかうことをよくしてきたが、今回は、彼の言うことにも一理あるかもしれない旨。現在のAIブームは、ほとんどの産業において大規模で破壊的な可能性を秘めているが、それを抑制するための強固なガバナンスが必要である旨。

◇「AI開発、半年中断を」;マスク氏ら1000人超が署名 (3月30日付け 日経 電子版 05:12)
→全ての企業や研究機関に高度な人工知能(AI)の開発を一時停止するよう求める署名活動が米国で始まり、起業家のイーロン・マスク氏らが賛同していることが29日までに分かった旨。高度なAIの出現で人類が文明を制御できなくなる恐れがあるなどとして、米オープンAIの対話型AI「ChatGPT」の最新の基盤である「GPT-4」を上回るシステムの訓練を、少なくとも6カ月間中断するよう呼びかけている旨。


【インテル関連】

GPU事業にメスおよび技術者の退社について、以下の通り。

◇Intelが不振事業のGPUにメス、AMDから引き抜いたトップ技術者が退社 (3月27日付け 日経XTECH)
→米Intel(インテル)は米AMD(Advanced Micro Devices)からGPU(Graphics Processing Unit)開発のエキスパートであるRaja Koduri氏を2017年に引き抜いて、GPU事業への本格的な進出を図った。今回、同氏がIntelを去ったことが、同氏および同社CEOのPat Gelsinger氏の2023年3月22日(米国時間)付Twitterで明らかになった。2023年3月3日(米国時間)にはデータセンター向けGPUで複数の製品開発が中止になることが公表されており、GPU事業の立て直しが進んでいる。・・・・・

◇Intel's chief architect explained why he's leaving to launch an AI startup (3月21日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intelのchief architect、Raja Koduri氏は、病気療養中に、生成型人工知能(AI)の可能性に興奮するようになった旨。同氏は何年も前からAIの創造的な可能性について考えていたと、Business Journalに語っている旨。

新製品およびデータセンター用シリコン市場規模について、以下の通り。

◇Intel pours Raptor Lake chips into latest NUC Mini PC line‐Intel debuts NUC Mini PC line with Raptor Lake chips (3月29日付け The Register (UK))
→Intelが、Raptor Lakeプロセッサーを搭載した新しいNext Unit of Computingを投入、該NUC 13 Proは、ボードまたはキットの形で入手でき、サイズは117mm x 112mm x 37mm。

◇Intel no ‘dead horse’ in data center, AI and cloud, analyst Gold says (3月29日付け FierceElectronics)
→インテルは水曜29日、データセンター用シリコンの5年間の総アドレス可能市場規模を$110 billion(約12兆円)と発表、1年前に苦境に立たされた同社が説明したTAMの2倍のビジネスの旨。

◇Intel sampling Sierra Forest‐Intel ships Sapphire Rapids processors for data centers (3月30日付け Electronics Weekly (UK))
→Intelは、144コアのSierra Forest Xeonデータセンター・プロセッサをサンプル配布しており、2024年上半期に量産する予定。

費用削減の動きも続いている。

◇Intel is halting its employee air shuttle service amid its $3 billion cost-cutting effort (3月31日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→シリコンバレー、オレゴン州およびアリゾナ州を結ぶエアシャトルサービスを提供していたIntelが、その特典のひとつを一時停止することになった旨。


【Samsung関連】

新製品、事業トップの動静および事業取り組みの関連から。

◇Samsung Electronics unveils new energy-saving bespoke home appliances‐Samsung touts energy-efficient Bespoke appliances (3月22日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))
→Samsungは、エネルギー効率、AIによる節電機能そして持続可能な製造を誇るBespokeのラインアップに、環境に配慮した家電を追加した旨。Samsungは、家電用の高効率コンプレッサーが "超精密ナノ加工技術 "で作られていることをアピールしている旨。

◇Samsung chief visits chip parts manufacturing unit in China (3月26日付け The Korea Times)
→Samsung ElectronicsのExecutive Chairman、Lee Jae-yong(李在鎔)氏が、Samsungの関連会社が運営する中国の半導体部品製造拠点を訪問したと、同社が日曜26日に発表した旨。
Samsung Electronicsによると、李会長は金曜24日にSamsung Electro-Mechanicsが運営する天津の製造拠点を訪れ、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の生産ラインを確認した旨。

◇Samsung unveils ultra-wideband chipset‐Ultra-wideband chipset rolls out at Samsung (3月27日付け TechRepublic)
→Samsung Electronicsは、カーエレクトロニクス、モバイルエレクトロニクスおよびinternet of things(IoT)機器での使用を目的としたultrawideチップセット、Exynos Connect U100を発表、この製品は、アプリケーションが動作している場所を特定するための精密な位置情報機能を提供するとされている旨。

◇Kioxia sees robust automotive SSD demand while Samsung promotes large-capacity SSDs‐Kioxia touts auto SSD demand; Samsung aims at other markets (3月28日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsは大容量SSDの提供を引き続き推進する一方、主要なライバルであるKioxiaは、車載用SSDの需要は引き続き堅調で、同カテゴリーの生産量を削減する計画はないと見ている旨。

優秀な人材確保のアプローチの一端があらわされている。

◇Samsung to make 3 new chip departments with tech universities (3月28日付け The Korea Times)
→Samsung Electronicsは、ソウル以外の地域に拠点を置く半導体技術者の育成に力を入れ、地方創生に貢献し、そして中核事業で活躍する優秀な人材を確保する、と月曜27日に発表した旨。
サムスンは、蔚山国立科学技術大学(UNIST:Ulsan National Institute of Science and Technology)、大邱慶北科学技術大学(DGIST:Daegu Gyeongbuk Institute of Science and Technology)、光州科学技術大学(GIST:Gwangju Institute of Science and Technology)の3つの国営科学技術大学と、半導体学科の開設に合意し、卒業生にはSamsungへの就職が保証されると述べた旨。

現下の低迷するメモリ需要についての対応である。

◇Samsung Electronics said to consider production cut on weak chip demand‐Report: Samsung ponders reducing IC production (3月30日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))
→Samsung Electronicsは、メモリ需要が低迷しており、Micron TechnologyおよびSK Hynixに続き、DRAMの生産量を削減する可能性があると、業界関係者が伝えている旨。SK HynixのPark Jung-ho(パク・ジョンホ)副会長は、減産を決定した当時、「これまでは生産能力を急速に拡大するために積極的な投資を行ってきたが、今後はより柔軟な方法で生産方法を調整していく」と述べている旨。

半導体実装テストラインを日本に設ける検討が行われているとのこと。

◇Samsung considers chip packaging test line in Japan as it seeks deeper cooperation -sources‐Sources: Samsung contemplates IC test line in Japan (3月31日付け Reuters)
→韓国のSamsung Electronics Co Ltdは、先端パッケージング事業を強化し、日本の半導体装置・材料メーカーとより密接な関係を築くため、日本に半導体パッケージのテストラインを設置することを検討していると、5人の関係者が語った旨。


【各社業績関連】

対応分野の違いか、本年の見通しを高めるInfineonに対し、メモリ低迷から大きく落とすMicronの現下の対比である。

◇Infineon hikes 2023 sales, margin outlook, shares rise‐Infineon boosts 2023 outlook on auto, industrial ICs (3月28日付け Reuters)
→*2023年の売上げは前回予想を大幅に上回る見込み
 *マージンへのプラスの影響を見込む
 *取引開始直後の株価は5%以上上昇
Infineon Technologiesがこのほど、今年の売上高がこれまで予想していた$16.8 billionを上回ると予想した旨。ドイツの半導体メーカーの同社は、自動車用および産業用microchipsの業績が好調で、データセンター用半導体の市場も堅調であると見ている旨。

◇Micron Loses $2.312 Billion as Demand for DRAM and 3D NAND Nosedives‐Micron posts loss as DRAM, 3D NAND flash weigh on Q2 ‐Micron will further reduce 3D NAND and DRAM output as it preps for steepest revenue drop in decades. (3月29日付け Tom's Hardware)
→Micronの第二四半期のearningsは、前年同期の$7.78 billionに対し、$3.69 billionとなった旨。同社は、半導体需要の減少に伴い、3D NANDフラッシュメモリデバイスおよびDRAMsの生産量を削減している旨。

もう1つの対比、昨年の業績について中国のSMICおよびHuaweiの明暗である。

◇China’s top chip maker SMIC posts record revenue, profits for 2022 despite US sanctions (3月29日付け South China Morning Post)
→*SMICの2022年の売上高は前年比33.6%増の$7.2 billion、純利益は$1.8 billionに達し、いずれも過去最高額となった旨。
 *研究開発(R&D)費は総売上げの10.1%に相当し、2021年の11.7%、2020年の17.3%から3年目にして減少した旨。

◇Huawei reports biggest profit decline ever as U.S. sanctions, pandemic controls hit Chinese giant (3月31日付け South China Morning Post)
→*Huaweiが2022年の純利益を356億元($5.18 billion)と報告し、前年比69%減。CNBCの計算によると、これは2011年以来最大の年間減少率。
 *Huaweiは利益急落の理由として、商品価格の上昇、昨年の中国の厳しいパンデミック規制、および昨年のHonorの売却に関連する一過性の利益などを挙げた旨。
 *Huaweiは、米国の制裁が足かせとなった数年間の荒波を乗り越え、クラウドコンピューティングや自動車などの新分野への事業多角化を目指している旨。

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