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市場の空気一新を図るインテルとマイクロンの新型メモリ

モバイル機器の飽和感が一層高まってきて、先行き見通しに下方修正が増していく一方、市場シェア拡大、新分野開拓からM&Aの波が大きなうねりを呈している現状のなか、ともにパソコン低迷で直近四半期の業績が昨年を下回っているインテルとマイクロンが、両社合弁のIM Flash Technologies LLCから、1989年のNANDフラッシュ以来という新しい種類区分となる新型メモリを発表、その詳細を明らかにしていないだけに一層の市場の反応を呼んでいる。現時点の各方面のあれこれ見方を追っている。

≪実際にどんなもの?≫

インテルとマイクロンの直近四半期業績が以下の通りであり、ともに厳しい状況となっている。

◇インテル売上高1%減、今期下方修正、パソコン向け苦戦 (7月17日付け 日経産業)
→米インテルの4〜6月期の売上高が前年同期比5%減の$13.195 billion(約1兆6300億円)、純利益が同3%減の$2.76 billionで2年ぶりの減収減益の旨。2015年12月期の売上高が前期に比べ約1%減少しそうだと発表、従来の予想は「ほぼ横ばい」であった旨。PC需要の不振を受けて、インテルは2015年の設備投資額を$7.7 billion前後と従来予想から$1 billion削減した旨。

◇Micron Remains Optimistic Despite Down Quarter (6月30日付け EE Times)
→Micron Technologyの2015年度第三四半期売上げが$3.85 billion、前四半期比8%減、前年同期比3%減。本業績発表翌朝の取引で、Micron株価は18%以上下がった旨。

インテルは、今後の伸びに向けて新分野、売れ筋分野に以下の取り組みである。まずは、データセンターへの重点化である。

◇Can Intel Corporation Return to Growth in 2016?-If PC declines abate and data center growth continues, then "yes."-Analysis: Data centers to drive Intel's growth as PCs fade (7月24日付け The Motley Fool)
→Intel executivesが、PC市場がフラットが続く様相と認めており、2016年以降の伸びを戻らせるようデータセンター事業に注力している旨。

次期"Skylake"プロセッサに大きな期待があり、売れ筋のCompute StickおよびNUCへの採用が謳われている。

◇Intel's upcoming Skylake processors promise improved low power performance & 30% longer battery life-Report: "Skylake" chips will offer better low-power operation (7月24日付け 9to5Mac)
→Fanless Tech websiteがリークしたslides発。Intelの次期"Skylake"プロセッサは、Macsに搭載されると電池寿命が30%伸び、低電力性能が高められる旨。一方、Intelは"Skylake"プロセッサを擁して10月に同社Compute StickおよびNUC製品を格上げする予定の旨。

◇Intel Skylake Chips To Boost Battery Life And Graphics Of Future Macs: Report (7月26日付け Tech Times)

◇Intel to adopt Skylake CPUs in NUC and Compute Stick solutions (7月27日付け DIGITIMES)
→Intelが、10月からSkylakeプロセッサを盛り込んだ同社Compute StickおよびNUCソリューションの格上げを計画、Elitegroup Computer Systems(ECS), Gigabyte Computer, Asustek ComputerおよびASRockが関連製品を打ち上げる見込みの旨。Intelも関連末端製品を打ち上げる予定の旨。PC需要弱含みにも拘らず、Compute StickおよびNUCの売れ行きは連続的に高まっている旨。

一方、マイクロンは中国のTsinghua Unigroupによる買収提案を受けたばかりであるが、順調には進まない見方が依然大勢である。

◇Chinese Firm Bids $23 Billion for Micron, Despite Unlikely U.S. Approval-Tsinghua submits $23B bid for Micron, against all odds (7月28日付け Electronic Design)
→Tsinghua Unigroupが、Micron Technologyの買収に向けて約$23 billion、$21/株での非公式な入札、Micronはこの提案を却下、中国メーカーによるこのような買収は米国政府が反対するとしている旨。

むしろインテルとの連携が一層緊密になっていくという次の見方が出たばかりであった。

◇Micron: Deeper Relationship with Intel May Be Next, Says Susquehanna-Analyst sees Micron and Intel forging closer ties (7月27日付け Barron's)
→Susquehanna Financial GroupのMehdi Hosseini氏。Micron TechnologyとIntelが、中国のTsinghua UnigroupによるMicronの買収入札の噂を受けて関係の一層の緊密化が図られるようになっていく旨。この発表には、Micronの3D NAND技術scalingにおけるMicronとIntelの間のなんらか出資要素and/orコラボ緊密化が含まれる可能性の旨。

ここで間髪置かず、両社による新型「3D XPoint」メモリが以下相続く形で発表されている。

◇Intel, Micron Launch "Bulk-Switching" ReRAM (7月28日付け EE Times)
→Micron Technology社のCEO、Mark Durcan氏によると、容量が128Gbitsの3D XPointメモリICをLehi, Utahのウェーハfabで生産しており、2006年に設立されたIntelとMicronの間の合弁、IM Flash Technologies LLCにおいてである旨。該メモリは1ビット/セル、64Gbitsの2つのplanesとして構成される旨。
・≪図面≫ 3D XPoint模式図 [Source: Intel]
http://img.deusm.com/eetimes/2015/07/1327289/3D-XPoint-infographic.png

1989年のNANDフラッシュ登場以来の大変革を起こす可能性のノンボラメモリと表わされている。

◇Intel and Micron produce breakthrough memory technology (7月28日付け ELECTROIQ)
→Intel CorporationおよびMicron Technology社が、3D XPoint技術を披露、高速アクセスから大規模データまで利点のあるデバイス、応用あるいはサービスに大変革を起こす可能性をもつnon-volatileメモリの旨。現在生産している3D XPoint技術は、メモリプロセス技術の大きなブレイクスルーであり、1989年のNANDフラッシュ投入以来となる新しいメモリカテゴリーである旨。

NANDフラッシュからの飛躍の度合いはじめ、以下の通り続いていく。

◇Intel, Micron Claim Chip Breakthrough-Companies say new memory chips are up to 1,000 times faster than NAND chips-Intel, Micron proclaim "revolutionary" memory chips (7月28日付け The Wall Street Journal)

◇Intel And Micron Aim To Bring New Breakthrough Memory Chip To Gaming, Phones And Data Centers (7月28日付け Forbes)

◇Intel, Micron Introduce New, Faster Class of Memory Chips (7月28日付け Bloomberg)

時間を置いて、「3D XPoint」メモリとはどんなものか、以下率直な反応である。

◇There's No Shame in ReRAM (7月29日付け EE Times/Blog)
→IntelとMicronが新手のメモリ技術を開発と発表、3D XPointメモリができそうなこと洗いざらいさらに多くの話がある一方、それが実際に何なのかほとんど詳細がなく、憶測が避けられない旨。

インテルからのヒントめいたコメントが見られている。

◇THE DECEPTIVE SIMPLICITY OF INTEL'S NEW MEMORY TECH-Memory tech from Intel and Micron dispenses with transistors (7月29日付け Wired.com)
→IntelおよびMicron Technologyが今週披露した3D XPointメモリ技術は、DRAMsおよびNANDフラッシュメモリデバイスとは違ってデータを蓄えるのにトランジスタではなくnanowires格子を用いている旨。「これは作れる最も簡単な構造、2つの直行線の交点にすぎない」(Intel fellow、Al Fazio氏)

分かる範囲をまとめた以下説明である。

◇インテルとマイクロン、新メモリ技術「3D XPoint」を発表 (7月29日付け ZDNet Japan)
→この10年間、提携関係を築き上げてきたIntelとMicronが米国時間7月28日、新しいメモリストレージ技術を共同で発表、トランジスタを使用しないこのプラットフォームは「3D XPoint」と呼ばれる旨。Intelによれば、3D XPointでは、今日の市場に出回っているあらゆるメモリ技術から、性能、密度、動作性、不揮発性、コスト上の優位性を良いとこどりした旨。IntelとMicronは、1989年にNANDフラッシュが登場して以来、新しいメモリカテゴリが発表されるのは今回が初めてだとしている旨。
 3D XPointは現在市場で提供されているNANDソリューションと比較して、少なくとも1000倍高速に動作し、1000倍の耐久性を持つ旨。XPointの名称に3Dが追加されたのは、3D構造の隅々までメモリセルが積層されたクロスポイントアーキテクチャに由来、最初のバージョンは、2つのメモリ層に格納されたダイ当たり128Gbの容量で構成される旨。垂直導体が1280億個のメモリセルと1ビットのデータを格納する各セルを接続する旨。

ミステリーという見出しもあるが、新手のResistive-RAM(ReRAM)とか一歩立ち入った見方が出始めている。

◇Intel and Micron Announce "Revolutionary" Mystery Memory (7月29日付け IEEE Spectrum)

◇Intel and Micron claim breakthrough memory solution (7月29日付け DIGITIMES)

◇Cross-point ReRAM Integration Claimed by Intel/Micron (7月29日付け ELECTROIQ/BLOG)
→Intel/Micron合弁が、Resistive-RAM(ReRAM)統合にこのたび成功、未発表の材料で作られ、披露されていないメカニズムを用いて切り換えるcross-pointアーキテクチャーの旨。試作生産ウェーハはLehi fabで動いていると思われ、顧客へのサンプルはこの年末までと約束の旨。

穏やかではない韓国からの反応の表わされ方である。

◇インテル「メモリ業界版図変える」…サムスン・SKハイニックス「緊張」 (7月30日付け 韓国・中央日報)
→米インテルとマイクロンテクノロジーが来年中に大量生産すると明らかにした「3Dクロスポイント」は保存速度を画期的に高めたメモリ半導体。世界メモリ半導体業界1、2位のサムスン電子とSKハイニックスも似た技術を持つが、量産は3年後に可能と予想している旨。「インテル−マイクロン連合」に国内の業界が緊張する理由の旨。インテルとマイクロンテクノロジーがデータ臨時保存用半導体のDRAMと半永久保存装置のNAND型フラッシュメモリの長所を合わせて開発した次世代メモリ半導体であり、従来のNAND型フラッシュメモリよりデータ保存速度が1000倍以上速い旨。

この新型メモリの応用を加えてまとめられている。

◇新メモリ、処理速度1000倍、インテルとマイクロン、量産に着手 (7月30日付け 日経産業)
→米インテルと米マイクロン・テクノロジーが28日、「3D XPoint」と呼ぶ新型メモリ技術を開発したと発表、スマートフォンで主に使われているNAND型フラッシュメモリに比べ、処理速度で最大1000倍、データ容量でDRAMの10倍に達する旨。インテルとマイクロンは新型メモリの量産に着手。年内にサンプル出荷を始める旨。
 トランジスタを使用しない構造で、1989年にNAND型フラッシュメモリが登場して以来の全く新しいメモリだとしている旨。両社によると、あらゆるモノがネットにつながる「IoT(Internet of Things)」機器の普及で、年間に生成されるデータ量は2013年の4.4ゼタ(ゼタは1兆の10億倍)バイトから2020年には44ゼタバイトと10倍に膨らむ見通し、新型メモリ技術を使えば、データセンターのサーバー能力が大幅に向上し、ビッグデータを瞬時に解析できるようになる旨。小売店の店頭で決済の不正パターンを検出したり、遺伝子解析の高速化などに活用できるとみている旨。

インテルとマイクロンの3D XPointプロジェクトに参加していたという台湾のSilicon Motion Technologyからのコントローラ半導体に取り組む動きである。

◇Silicon Motion to offer solutions for 3D XPoint devices (7月31日付け DIGITIMES)
→NANDフラッシュデバイスコントローラソリューションの設計&開発を行っているSilicon Motion Technology(台湾)が、IntelとMicron Technologyが共同開発した3D XPointメモリ技術を活用するSSDs用コントローラ半導体を供給する旨。業界筋によると、Silicon Motionはすでに披露されたばかりの3D XPoint技術に向けてIntel-Micron共同開発プロジェクトに参加している旨。該技術を用いて作られる最初のSSDsは、Silicon Motionが開発するコントローラ半導体を伴って、2016年に出てくる見込みの旨。
 3D XPoint技術はまずは専用市場向けSSDsに適用され、短期的にはシステムメモリの主流としてDRAMおよびNANDフラッシュの両方を置き換えることはありそうにない旨。

実際に何なのか、見方が以下の通り今後とも続いていくであろうが、年内サンプル出荷、来年には量産というこの新型メモリの今後に大いに注目が集まるとともに、現状の市場の空気のリフレッシュ度合いにも関心が高まるところである。

◇Patent Search Supports View 3D XPoint Based on Phase-Change (7月31日付け EE Times/Blog)
→3D XPoint non-volatileメモリは本当にphase-change memoryの1つのバージョンにすぎないのか?特許検索がこの見方を支持している旨。


≪市場実態PickUp≫

【半導体業界M&A】

特にこの春以降の半導体業界におけるM&Aの嵐は、ずっと注目して取り上げざるを得なくなっているが、その凄さの度合いを示すデータが表わされている。今年2015年の前半だけで過去5年の年間平均の約6倍という事実が如実に物語っている。

◇Tsunami of M&A deals underway in the semiconductor industry in 2015 (7月29日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの今週後半リリース予定、Mid-Year Update to The McClean Report(185-ページ)は、半導体業界でのプレゼンス高揚を目指す中国の野心的な新しい計画など、最近のM&A activityの急激な増大に焦点の旨。
 M&A mania以外の何物でも、あるいは狂気の沙汰とも、とにかく2015年に起きている半導体mergers and acquisitions(M&A)の巨大な波を特徴づけるのは難しい旨。
 2015年の最初6ヶ月だけで、発表された半導体買収合意の総額が$72.6 billionとなり、前の5年間、2010-2014年の間に締結されたM&A取引の年間平均の約6倍相当の旨。下記の図面参照:
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2015/07/m-and-a-fig-1.png

◇Tsunami of M&A deals underway in 2015 chip industry, says IC Insights (7月30日付け DIGITIMES)

【ワイヤレス給電】

モバイル機器をワイヤレスに充電するアプローチの実現化に向けて、Qualcommは自らのRezence標準、そしてSamsungはQiワイヤレス給電標準による具体化を以下の通り発表している。

◇Qualcomm says it can now wirelessly charge metal phones (7月28日付け The Verge)
→Qualcommは、metal rearケース装備の電話について、Rezence標準をサポートする限りワイヤレスに充電する方法を発明している旨。

◇Qualcomm makes wireless charging for metal-covered devices (7月30日付け EE Times India)
→金属カバーの機器に向けたワイヤレス給電が、Qualcomm Technologies社が仕立てたソリューションのお蔭で今や現実のものに、このRezence標準-準拠ソリューションはQualcomm WiPower技術を用いている旨。

◇Samsung SE370 Monitor Boasts Wireless Charging Capability (7月29日付け EE Times)
→世界初のブレイクスルー、Samsungが打ち上げたSE370 monitorは、Wireless Power Consortium(WPC)が開発したQiワイヤレス給電標準を用いるスマートフォンはじめモバイル機器すべてワイヤレスに充電できる旨。

【先行き下方修正】

世界の半導体市場を端的に表わす台湾の動きと言えるところがあると思うが、まずはUMCが需要不足として28-nmの立ち上げを遅らせている。

◇UMC Cuts Expectations for 28nm Ramp on Weaker Demand-UMC cites slowing progress in ramping 28nm chip production (7月29日付け EE Times)
→UMCの28-nmプロセス技術立ち上げが、2016年前半まで需要が弱含みのままの様相の一方、半導体業界は在庫調整から苦労して進むことから、遅くなる旨。最先端28-nmノードからの同社売上げ比率が、第二四半期の11%をピークに今年後半は約10%に下がると見ている旨。UMCは昨年半ば以降、TSMCが約5年の間席巻している28-nmでの足場固めを目指している旨。

◇UMC slows 28nm ramp (7月30日付け DIGITIMES)

後工程について発注が中国に移った状況を感じさせる以下の内容である。

◇China IC backend firms reportedly obtain orders from Qualcomm, MediaTek (7月29日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Jiangsu Changjiang Electronics Technology(JCET)およびNantong Fujitsu Microelectronicsなど中国の主要IC backend housesが、QualcommおよびMediaTekからの受注を獲得、現地IC業界の展開を高める中国政府の活動を支持する向きの旨。Jiangsu Changjiangは、2015年第三四半期にQualcommおよびMediaTek両社からの定例受注の遂行を始める旨。

ファウンドリーのUMC、実装&テストのSPILともに、今後の下方修正のトーンが強まっている。

◇Low order visibility for 2H15, says SPIL chairman (7月30日付け DIGITIMES)
→Siliconware Precision Industries(SPIL)(台湾)のchairman、Bough Lin氏が、受注の見え方が低いことから2015年後半の半導体市場展望への注意を表明の旨。

◇UMC expects wafer shipments to drop in 3Q15 (7月30日付け DIGITIMES)
→UMCが、2015年第三四半期ウェーハ出荷の前四半期比最大5%の減少を予想している一方、capacity稼働率が90%を下回るとしている旨。

【Samsungの第二四半期業績】

Samsung Electronicsの第二四半期業績が発表され、前年比減収減益が続く形となっている。スマートフォンの厳しい状況を半導体が埋めており、該四半期operating profitの約半分を占める結果である。

◇Samsung's Slippage Stirs Smartphone Angst (7月30日付け EE Times)
→グローバルモバイル市場の伸びを力強く引っ張っていたSamsung Electronicsが水曜30日、鈍い第二四半期業績を発表の旨。

◇Chips left Samsung Electronics' Q2 earnings -Samsung Electronics reports Q2 profit of nearly $6B (7月30日付け The Korea Times (Seoul))
→Samsung Electronicsの第二四半期のoperating profitが約$6 billion、前年同期比4%減、一方、2015年後半はスマートフォン製品ラインについて課題が高まっていくと警告の旨。Samsungの半導体事業は、該四半期のoperating profitの約半分を占めている旨。

◇サムスン、IT部門営業利益38%減、スマホ厳しく、4〜6月 (7月30日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子が30日発表した2015年4〜6月期連結決算の確報値。連結売上高は前年同期比7%減の48兆5400億ウォン、連結営業利益は同4%減の6兆9000億ウォン。7四半期連続で前年実績を下回ったが、減益幅は縮小傾向にある旨。スマートフォンなどIT機器部門の営業利益が2兆7600億ウォン(約2900億円)と前年同期比38%減、一方、半導体部門は3兆4千億ウォンと前年同期比83%増、DRAMとNAND型フラッシュメモリがスマホやサーバー向けで伸びた旨。

【ITA合意】

世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)について、輸出入の関税を撤廃する品目を追加する合意が以下の通り行われ、半導体、液晶関係もあってSEMIが歓迎する表明を行っている。

◇SEMI Applauds International Trade Agreement Breakthrough (7月24日付け SEMI)

◇デジタル201品目の関税撤廃、日米欧や中韓合意、WTO −日本、1600億円負担減 (7月25日付け 日経 電子版)
→世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(ITA)に参加する日米欧や中国、韓国など約50の主要国・地域は24日、201品目のデジタル製品について、輸出入する際の関税を撤廃することで合意した旨。デジタル複合機やカーナビ、磁気共鳴画像装置(MRI)などが対象に加わる旨。日本企業が得意とする分野が多く含まれており、こうした製品の輸出拡大につながりそうな旨。
 通商協定の一つであるITAは、デジタル製品の関税撤廃をめざして1997年に発効、現在はパソコンや携帯電話、プリンターなど約140品目が対象になっている旨。その後に普及した情報機器には対応しておらず、2012年から対象品目を増やす交渉が始まっていた旨。
 追加品目にはゲーム機やデジタルビデオカメラのほか、液晶パネルに使う偏光材料製のシートや半導体用フォトレジストも含まれる旨。各国・地域は9月から各品目について関税撤廃までの期限を協議し、12月にナイロビで開くWTO公式閣僚会合までに最終合意したい考え、2016年7月の発効をめざす旨。


≪グローバル雑学王−369≫

国家は必然的に拡大していくものと地政学の大本にあるとのこと。100年前にドイツ(当時のプロシャ)にとって邪魔になったのが海洋国家のイギリス。
それが今や、巨大な大陸国家の中国にとって海洋領土の拡大を図るうえで我が国、フィリピン、ベトナム、引いては米国との間の摩擦を生じている。著者自ら出向いた台湾の例をはじめ、拡大に向かう中国の筋書、事情というものを、

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』
 (松本 利秋 著:SB新書 301) …2015年5月25日 初版第1刷発行

より具体的な国家間の応酬の歴史から見ている。戦後70年の我が国安倍首相の談話が注目されているが、手を翻したような経緯の実態など以下に表わされている。


第二章 海を塞ぐ日本列島は中国経済発展の障害か=2分の2=

■歴史から学ぶ中国の恫喝とメンツの裏にあるもの

◇中国軍と台湾軍の戦闘の実際
・中国がこれまでに実際に島を軍事占領しようとした試み
 →中国本土にごく近い台湾領の金門島と馬祖島
・1996年3月、(著者は、)台湾領金門島に滞在
 →台湾軍の動向と2万人近い住民避難の実態を調査する取材目的

◇実力を誇示すれば中国は引く
・このとき台湾では初の民選総統選挙
 →我々日本人には当たり前になっている「選挙」の実施に、これほどの犠牲を払わなければいけないという現実に正直戸惑い
 →選挙は無事実施、反中共を唱えた李登輝が当選
 →中国の政治的手法がまったく正反対の結果を生んだ典型例
・民主主義的手続きを経た政治を実行するために、動員された台湾軍は延べ70万人
 →中国の意に反することを実行しようとすれば、コストを覚悟しなければならないという教訓
・米海軍が二個空母打撃群を派遣
 →実力を誇示すれば中国は引くということの証明
・中国はこれまで二度にわたって金門島を奪取するために軍事攻撃
 →1949年、島の内陸部に攻め込んだ中国軍は武器弾薬の補給が乏しく、国民党軍に撃破された
 →2度目は1958年8月、中国軍は対岸のアモイから金門島に砲撃
  →台湾軍に米軍から最新鋭の8インチ榴弾砲が届き、アモイに向けて本格的な反撃
  →この情勢に中国政府が躊躇気味に
・古来ランドパワーに頼ってきた国民性は、容易にシーパワーへの変換ができない
 →居丈高な恫喝の裏にある、ある種の怯えを見ていく必要

■中国が拡大する本当の理由は生存権拡大の地政学

◇中国のトラウマになった海からの侵攻
・1839年、当時の当時の清国政府は、イギリス商人のアヘンを没収、焼き捨て
 →イギリス政府は清国に戦争を仕掛け、1842年、清国が敗北
・アヘン戦争が当時のアジア諸国に与えた大きな衝撃
 →強大な力を持った海洋国家の傍若無人ぶりが、その後の中国人のトラウマとして残った
・アヘン戦争と日清戦争の敗北という、二重のショックに見舞われた中国
 →海からの侵攻を極端に恐れるように
・中国の海洋に対する基本的な認識
 →「敵対国に取り巻かれている」という、彼らなりの現実感覚に素直に従ったところにある

◇尖閣問題を次世代に預けた小平の真意
・中国の海に対する実際の行動
 →点在する島々を「領土」と考え、その周りの海を自分の内海と考えているよう
・1978年、小平中国共産党中央委員会副主席は来日する直前、漁船100隻以上を尖閣諸島付近に送り出し、領土問題の存在をアピール
 →当時の福田赳夫首相との会談で、棚上げ論を展開
・中国は日本の援助による経済成長を成し遂げ、力をつけてきた1992年、小平は自身が唱えた棚上げ論を自らの手でアッサリとひっくり返した
・約40年前から、尖閣諸島の領有を主張する中国の立場は一歩も後退していないという事実を、見逃してはならない

◇中国が海洋進出にこだわる理由
・中国を中央に置いて地図を逆さまに見てみると
 →世界から中国に至る海の道はアメリカの同盟国に塞がれ、シーレーンそのものも強大な米海軍に牛耳られている
 →拠点となる島を確保、周囲に敵対するシーパワー国家を近づけないようにしたい
  →これが中国の基本的な姿勢
・今から100年前、第一次世界大戦前のドイツ(プロシャ)
 →この時ヨーロッパのランドパワーであったドイツにとって邪魔になったのが、当時の海洋国家(シーパワー)、イギリス
・対中国打開に向けて
 →基本的な歴史の流れをしっかりと把握、対話を成立させるための選択肢をできるだけ広げる戦略的な対話の方法を考えるべき

◇シーパワー的発想も持ったランドパワー国家中国
・中国にせよ、ドイツにせよ
 →既存の海洋国家と対決姿勢
 →海洋に浮かぶ島を領土にして、そこを軍事拠点に自己の勢力を徐々に拡大していこうとする傾向
・地政学の祖とされるフリードリッヒ・ラッツェル(Friedrich Ratzel:ドイツ:1844−1904年)
 →「レーベンスラウム(Lebensraum:国家が自活できる生存圏)拡大論」
 →大命題「国家は生きている有機体的な存在であり、必然的により大きな生存圏を求めるようになる」
・チベット、内モンゴル、ウイグルの3つの地域を併合した中国
・東欧はじめ影響下に置いた第二次世界大戦後の超大国、ソ連(現ロシア)
・もともと中国はランドパワー国家
 →本能的にはランドパワー的な発想を持ちつつ、現実問題としてシーパワー的な政策を執らざるを得ない
 →海上においても領土にこだわり、中国そのものが限りなく拡大していかざるを得なくなっている

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