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新たな雇用、経済基盤を作り出すのが最優先、半導体も然り

G20、APECと世界の首脳が集まる場、伴なって各国間の会談が連日のように報じられている。政治と経済、ビジネスがますます密接で切り離せない現状が映し出されており、各国国内では雇用を増やして経済基盤を安定させることがいずこも喫緊の課題である。半導体業界も、最先端を切り開いて新しい市場分野そして伴なうjobを各国で増やしていく、という"協調と競争"のフェーズを感じている。

≪いずこも経済外交の動き≫

引き続き中国に向かう新たな進出の流れが次のように見られている。

◇Taiwan LCD panel makers to go to China soon after Samsung, LGD(11月8日付け DIGITIMES)
→Samsung ElectronicsとLG Displayがともに、中国政府から先端生産工場プロジェクトの認可を受けたという噂のなか、台湾のLCDパネルメーカーが、自分たちも遅れることはなくグローバルトップ4パネルメーカーの次の戦いの場は中国にあるとしている旨。

◇台湾のパソコンEMS、中国内陸部に相次ぎ工場
 -沿海部で賃上げ圧力、割安な人件費でコスト削減(11月8日付け 日経 電子版)
→ノートパソコンのEMS大手、台湾の仁宝電脳工業(コンパル:Compal Electronics)と英業達(インベンテック:Inventec)が、中国内陸部の四川省成都市、重慶市のそれぞれ新工場を建設、人件費の割安な内陸部での生産でコストを削減する狙いの旨。四川・重慶地区には鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)なども進出を決めており、台湾IT企業の新たな集積地に育ちつつある旨。

一方、今後に向けた経済外交があちらこちら、やりとりが見られる。

◇U.S., India advance energy R&D (11月9日付け EE Times)
→Obama大統領のインド訪問中の発表、インドと米国が、Joint Clean Energy Research and Development CenterをNew Delhiに設立する旨。

◇米韓、FTA決着先送り、共同会見で両大統領言明(11月11日付け 日経 電子版)
→米韓両国が交渉してきた自由貿易協定(FTA)の最終合意が先送りされることに、韓国の自動車・牛肉市場の開放の条件を巡り、両国が合意できなかったことが主因と見られる旨。

韓国の大統領、ドイツの首相のアラブはじめ経済外交の積極的な取り組みを感じていたが、米国のObama大統領も雇用創出なしでは国内が収まらないという状況に他ならない、ということと思う。

欧州では、Electronica 2010(11月9-12日:Munich, Germany)にて、半導体関係の経済危機を経た現状を示す以下の記事が見られる。

◇Electronica: CEO panel basks in upbeat mood (11月9日付け EE Times)
→Electronica exhibition開幕恒例のCEOパネルにて。半導体業界は2008-2009年経済危機をうまく乗り切って、今や"正常な"伸びに回帰してきているということでは同意見であったが、この危機は半導体業界に与えたインパクトは実に大きく、Infineon Technologies AGおよびNXPは再構築を経て2年前からはずいぶん小さくなっている現在の旨。

◇NXP fab wins reprieve from closure (11月10日付け EE Times)
→NXP Semiconductors BVのCEO、Rick Clemmer氏講演。同社の6インチウェーハfab(Nijmegen, The Netherlands)が、力強い需要を受けて工場閉鎖を延期する旨。

自国内の製造、ものづくりの重要性について、この7月に本欄で、Intel社で長きにわたりCEOあるいはchairmanを務めたAndy Grove氏の見解、コメントを取り上げたが、また今回、CNET Blog Network author、Brooke Crothers氏が、Grove氏に電話インタビューを行っている。その記事の出だし部分を以下に示す。

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○インテルのAndy Grove氏、アメリカにおける製造について(11月5日付け CNET News)

Silicon Valleyのたくさんのファブレス半導体メーカーおよび製品design housesの中にあって、Intelは傑出している。それは、世界で最も洗練されたハイテク製品のいくつかをここで作り出すだけでなくものづくりをしているアメリカのハイテクメーカーである。AppleやHewlett-Packardのように事実上すべての製品製造および組立を海外に任せているほかとは、一線を画している。

先週、Intelのco-founder、Andy Grove氏に、Intelが如何にして米国で最後の素晴らしいハイテク製造大手の一つになったか、そしてどうして多くのSilicon Valleyの同業が同じことをやっていないのか、を尋ねた。Grove氏は、1997年5月から2005年5月までIntelのchairmanであり、1987年から1998年までchief executiveを務めた。

Intelの製造戦略は、米国の新しい工場拠点に$8 billionを投資するという最近の発表により強調されている。それは、Micron Technologyとのフラッシュ半導体製造合弁への投資などすでに同社米国工場に投資されている約$34 billionに加わるものである。

Intelは実践的な理由から1968年の設立以来米国で半導体を作る、すなわち"fabbing"してきている、とGrove氏は言う。「愛国心が強くありたいという結果ではない。運営上そうするのが最も論理的だからだ。」と同氏は電話インタビューで言う。

どうして歴史的にそれがIntelには実践的なのか?「技術製造、ものづくりを行う人々は、高度な訓練を受け鍛えられたスタッフである。そして否が応でもあちらこちらで製造operationsを始めないこと、という大いなる願いがあった。」と同氏は言う。

米国でのjob創出

made-in-America戦略のjob創出の価値が、米国での慢性的な失業問題で今また注目されてきている。Obama政権のGeneral MotorsおよびChryslerを救済する活動は、その戦略に同意しようとすまいと、米国に重要な製造拠点を維持することであった。Intelがずっとやってきていることである。

「このIntelの投資は、確信の一票である。」とVLSI ResearchのCEO and chairman、Dan Hutcheson氏は言う。「米国に素晴らしいインフラを持っている。熟練、ノウハウの蓄積はすでに決まった場所にあり、展開される必要はない。」

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この上記の内容だけでも、着実に技術を積んで切り開く半導体新分野は、あちこちばらまくものではないというエンジニア根性の一端を垣間見る思いがあるが、米国の現状を反映しているということか、読者からのコメントにそれぞれまた数多くの反響が寄せられており、以下を参照である。

http://news.cnet.com/8301-13924_3-20021804-64.html

以下後に続く連載の"グローバル雑学王"では、現在ロシアについての新書を読み進めているが、ここでも国家とビジネスの距離が近いことから生じる国家資本主義的な流れが指摘され、近年の国際政治経済に広く見られる現象と表されている。ますます今後を大きく左右する経済外交に注目していくとともに、我が国内での新分野そして仕事の創出に重きを置いていかなければ、ということと思う。


≪市場実態PickUp≫

早くも本年を見通した半導体ランキングが発表され、Samsungの急伸長ぶりが目立っている。鈍化してきている直近四半期でのDRAMランキングでも、唯一前四半期比プラス伸長をキープしている。

【2010年半導体ランキング】

◇Samsung gains on Intel in top 20 semiconductor supplier ranking-Samsung is one of 10 companies named in IC Insights top 20 supplier ranking that is expected to exceed the industry's estimated 31% year-over-year 2010 sales growth with forecasted growth of 54%. (11月9日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IC Insightsが今朝発表、2010年半導体サプライヤランキング・トップ20。Samsungの販売高がIntelをまもなく超えるとは見込めないが、長きにわたるNo.1半導体サプライヤ、IntelとSamsungの間の開きが狭まってきている旨。データ内容、下記参照。
http://www.edn.com/photo/286/286985-Samsung_gains_on_Intel_in_top_20_semiconductor_supplier_ranking_chart.gif

◇Samsung's DRAM share topped 40% in Q3 (11月11日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。需要が鈍化、average selling prices(ASPs)が低下しているDRAM市場、第三四半期売上げトップ5サプライヤで、前四半期比で売上げを伸ばしたのはSamsung Electronics Co. Ltd.のみの旨。売上げランキングデータ、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/101111_isuppli_dram.png

欧州で今後の新車に取り付けようという救急呼び出しシステムである。我が国ではどうなのだろうか。

【欧州eCallシステム】

◇Cars converge on Brussels as eCall trial kicks off(11月10日付け EE Times)
→路上事故の際に自動的に救急オペレータを呼び出すeCall救急システムの全欧州実地試行が本日スタート、European Unionは、2013年から2015年の間にすべての新車のeCall装備義務化を求めている旨。

モバイル機器の知的所有権係争は、大手が方々相まみえる様相を呈している。

【係争応酬の拡大】

◇Microsoft sues Motorola-Microsoft claims Motorola is in breach of commitments to standards organizations and that licensing agreements are not being provided under reasonable and nondiscriminatory conditions.
Motorola disagrees and plans to take all necessary steps to protect its intellectual property. (11月10日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Motorolaに不平を訴える大手ハイテクプレーヤーは、Appleだけではない旨。

◇Motorola fires back at Microsoft, claims patent infringement-Motorola files complaints against Microsoft claiming patent infringement just a day after Microsoft took legal action against the handset maker.(11月11日付け Electronics Design, Strategy, News)

ARMの技術イベントでのプレゼンに、プロセス・デバイスの最先端の取り組みの内容が見られる。今や設計との連携なかりせば、というお互いの色合いをますます濃く感じるところである。

【ARM Technology Conference(SANTA CLARA, Calif.)】

◇Samsung: Ready for big foundry push (11月9日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.が、ファウンドリー業界に向けてhigh-kの32-nm生産に大きく弾みをつける備え完了というメッセージの旨。

◇Five surprises at IBM's scaling keynote (11月10日付け EE Times)
→IBM社Semiconductor Research and Development Centerのvice president、Gary Patton氏の基調講演、'Semiconductor Technology Innovation at 20-nm and beyond'から、驚かされた5点:
 1. EUV is still not ready
 2. Importance of computational lithography
 3. No status report on high-k
 4. The end of an era? →CMOS時代の先延ばし
 5. No mention of 450-mm


≪グローバル雑学王−123≫

ロシア外交の残るアジアほかとの関係を見てから、最大の国家基軸となっている天然資源をもとにした経済、エネルギー関連の推移、実態を

『ロシアの論理 −復活した大国は何を目指すか』(武田 善憲 著:中公新書 2068)
 …2010年8月25日 発行

より掴んでいく。エネルギー高騰の追い風を国家の基本ルール浸透に最大限活用できた経緯に、人心を大きく左右する経済インパクトというものを感じている。


[(続き)第二章 外交 −多極主義と実利主義]

5 アジアと「新世界」
・ソ連崩壊後のロシア外交
 コーズィレフ外相の欧米寄り
  ↓
 1990年代後半のプリマコフ外相時代のアジアへのシフト

○中国
・ロシアの大きな輸出品目…化石燃料、武器、原子力発電所の三つ
 →中国はこれらすべてで特別なお得意さん
 ⇒ロシアと中国、距離を縮めるのが必然
・ロシアと中国は4000km以上の陸の国境線
 →東北部に1億人の人口を抱える中国とのアンバランス
 →クレムリンに懸念
・貿易額: 2000年 80億ドル → 2008年 約500億ドル
・輸出入関係のバランスの悪さは明らか
 →政治的意思が障壁を打破している反面、障壁を築いている

○首脳会談の重要性
・旧ソ連地域の指導者を除けば、ロシア大統領が最も頻繁に顔を合わせている指導者は、中国の総書記
・中国の若干のブレーキ
 →どこまでアメリカを牽制・批判する文言を入れ込むか
・ロシアも中国も、政府が経済をコントロールする度合いが高い
 →二国間の経済協力の進展には、首脳会談のような契機が重要に
・想定していた以上の時間と手間を要するプロジェクト
 →エネルギー分野での中露協力はその典型
 →中国の関心がカザフスタンに向かうことに

○インド
・二国間には、安定したパートナーシップ関係が確立
 →ロシアとインドは砂漠や高山地帯によって隔離
・貿易関係は微々たるもの
・発展途上にあるインドの極めて魅力的なマーケット
 →ロシアに最も重要
・ロシアとインドの「多極主義」を軸とした安定した関係の継続

○「新世界」の開拓
・ロシアの多極主義アプローチは、アフリカや南米にも拡大
・2007年8月、ロシアの潜水艦が北極点の海底に到達、ロシア国旗を立てる刺激的な示威行動
 →北極の資源開発をめぐる国際競争へ

[第三章 経済・エネルギー −天然資源による国力増強]

1 プーチンのプラン
・ロシアにおいて経済活動に従事
 →「正しく納税せよ」という基本ルール順守
 →国家権力側の意図を汲みながらビジネスを進めていく必要
・経済・エネルギー分野は、ロシアの急激な成長と国際的地位の向上を支えている最大の要因
・1990年代におけるロシア経済
 →国家として破綻の危機を感じるほどの危機に直面
・1998年の金融危機が、国家の経済運営と国民生活の双方に決定的な影響

○プーチン時代の高成長
・プーチン時代にロシアが獲得した多くの成果
 →最も明確に裏付けられた成功は経済分野
・GDPの急成長: 1999年 1870億ドル → 2008年 1兆6710億ドル
 外貨準備高 :  1999年 125億ドル → 2008年  4000億ドル超
・ウラル・ブレンド(ロシア・シベリア産原油の国際価格)
 2000年 18-19ドル/バレル → 2008年7月 139.5ドル/バレル(最高値)
・ロシア経済のより深刻な問題について考える動機は確実に減退
・過去10年間にわたって貫かれる経済分野でのゲームのルール
 →「個々の企業経営者たちを国家の戦略的利益に従わせつつ、ロシア経済を危機に強く再構築し、発展を導くこと」
 ⇒国家による天然資源の管理強化
  「正しく納税せよ」

○20年というタイムフレーム
・プーチンの大統領時代
 →中期計画の多くが「2020年までの」というタイトル
・中心的課題は社会経済分野
 →天然資源から得られる収益を最大化、国民への配分と「貯蓄」に振り分け、充実した社会福祉と危機に強い経済構造を構築

○社会経済分野のプラン
・プーチン自身の社会経済分野に対する基本的考え方5点:
 第一: エリツィン時代から継承している問題を解決するまでは、国家が新しい産業や経済の改革のために多額の資金を投入すべきではない
 第二: 経済の復興に向けた事業が進められている間は、国家が引き続き存在感を示し、積極的に介入してもよい
 第三: 戦略的な発展に関するすべての決定は国家によって行われるべき
 第四: 段階的に目標を定めて進めるべき; それぞれの段階における達成目標がクリアされて次に進めていく
 第五: 同時に多くの目標を追求しない

2 プーチン政権一期目

○戦略策定センター
・政府系シンクタンクの「戦略策定センター」
 →経済政策を形成するうえで中核的な役割
・財政金融政策面 →対外債務の返済と準備高の増加
           →経済の基礎体力の回復
・なかでも鍵 →税制の整備
        →所得税を13%に統一: 法人税を35%から24%に
         ⇒成功を導いた

○ユコス事件
・ユコス事件…2003年10月、ロシア最大の民間石油会社、ユコス社長、ホドルコフスキーの脱税容疑逮捕から、2005年5月、懲役9年の判決までの一連の経過
・ホドルコフスキーには、政治的野心、次期大統領の座狙い、といった噂が絶えず
 →事件の記憶が風化するにつれてホドルコフスキーの影響力も低下
・ユコス事件によって、「正しく納税せよ」「国家の発展に貢献せよ」というルールが決定的に浸透
・税制面におけるロシア国内とグローバルなスタンダードとの乖離が少しずつ埋まる
 →ユコス事件後に投資環境は好転

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