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Intel、EUで爆裂的な生産能力拡大へ!〜10兆円投資、6カ国に工場/研究所増設

半導体の世界チャンピオンであるIntelが、ここに来て一気果敢に投資攻勢を強めている。とりわけEUにおいては、ドイツに2兆2000億円投じる新工場を建設するほか、アイルランド、フランス、イタリア、スペイン、ポーランドにおいても工場および開発拠点の拡充に動くというのである。

Intelの2021年の半導体売上高は前年比微増の765億6900万ドルであった。これで2年連続、強力なライバルであるサムスンを抑え込んで世界チャンプのベルトの座を守ったのである。2021年第4四半期においても純利益率25%を維持し、純利益は2兆1855億円と好調であった。

さて、ドイツの新工場は、ザクセンアンハルト州マクデブルクに建設されるものであり、投資額2兆2000億円と巨大なスケールである。2013年前半に2棟の工場建設に着手し、2027年に生産を開始する。

アイルランドにおいても、既存工場に1兆5500億円を追加投資し、なんと7nm製品生産に踏み切るのだ(編集注1)。イタリアでは、後工程拠点の新設に向けた交渉を進めており、投資額は4000億円以上になると思われる。

研究開発拠点についても注力する。フランスにおいては、プラトー・ド・サクレーに開発拠点を新設し、24年末までに450人の雇用を確保する。スペインやポーランドにおいても開発拠点の拡充を打ち出している。まさに雨あられの投資をEUに集中するのである。

もちろん、この裏にはEU全体の半導体一大支援策が存在する。今のところEUは、域内に建設される半導体工場や研究開発拠点については、大枠で5兆5600億円の補助金を準備している。Intelは、この枠組みでEUおよび各国政府から補助金を取るつもりであり、シンプルに言えば、ものすごく安いコストで投資を断行できるのだ。

実は、日本にも工場または研究開発施設を建設する計画があり、一時期土地を探していたが、一旦は保留し、EUにひたすら注力するという姿勢になっている(編集注2)。ただ、どこかの段階で、日本にも拠点を構えることは確実であろう。

それにしても、バイデン政権が5兆7000億円、EUが5兆5600億円の半導体設備投資の大型補助金支出を決めており、かつはっきりとアナウンスしていることに対し、日本政府は何とも頼りない。国民に向かって、何が何でも半導体強化ということをもっと言明すべきであり、金額も5兆円ほどの投資が内定しているのであるから、きちっとメディアに発表すべきなのだ。何をやっているのか、と言いたい。

すでにTSMCの熊本は投資額が拡大し、1兆円規模となっている。日本国政府は、ここへの補助金は言明しているが、その他の東芝、ソニー、マイクロンなどの大型設備投資に対して、異次元の補助金を断行するとは決して言っていない(編集注3)。これでは世界に後れを取るだけなのだ。

IntelのEUに対する巨大投資、そしてTSMCの初の日本工場、そして米国における20棟の巨大工場建設などは、すべて中国製造2025に対する抑え込みである。さらにウクライナ戦争を戦うロシアおよび中国という共産主義国をNATOで囲い込むという作戦であることは、間違いのないところなのである。

株式会社産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

編集注
1. アイルランドでは、Intel 4(4nmプロセスノード)を開発する、と同社のニュースリリースに述べられている。詳しくは3月17日掲載の「Intel、欧州に巨大投資を続々、まず330億ユーロを独、アイルランドに投資」を参照。
2. Intelは2000年ころ、本気で日本に工場を設立しようと考えた時期があった。しかし、日本政府は誘致どころかインセンティブは何もなし。結局、アイルランドの工場を強化することになった。
3. 3月1日に施行された「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(特定半導体生産施設整備等関係)」では、申請・認定の計画において対象となるメモリ半導体として160層以上のNANDフラッシュの事業者も含まれている。すなわちキオクシアは申請すれば助成金(返還不要)を受けられる。おそらく、1兆円の北上工場への投資は、この助成金を目論んでのことだと思われる。

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