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中国のEV700万台は本当に期待できるのか〜テスラ量産遅れなど不安要因大

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中国がEV(電気自動車)シフトを打ち出したことが大きな波紋を呼んでいる。何と2025年に年間エコカー出荷台数を700万台まで拡大すると言い出したのだ。さらには全自動車の販売に占めるエコカー比率を20%以上にするという予測も出ている。しかも特徴的なことはエコカーをすべてEVにするというものだ。ちなみに、中国の2016年までのエコカー販売台数は累計110万台である。

さて、2017年の中国の新車販売は伸びが鈍化し、前年比3%増という低水準に止まっている。特に大手の苦戦が鮮明で、東風汽車は4%減、長安汽車は6%減、北京汽車にいたっては12%減と大きく落ち込み、EVに最も力を入れているBYDは何と17%も減少した。つまり、どれだけ旗を振っても消費者は踊ってくれなかったということだ。

理由は単純で、中国政府によるEV補助金は2016年までに1台あたり200万円程度出しいたが、2017年は40%減額になっている。これで一気にEV熱が冷めてしまったのだ。つまり、どれだけ最先端の技術であっても、価格が安くなければ消費者は動かないのである。

仮にEVが期待どおりに成長しないとなれば、これが引き起こすパニックは尋常ではないだろう。そんなEVを巡る近未来の姿ともいえる事態が2017年、IT業界で起こった。これまで順調に拡大を続けてきたスマートフォン(スマホ)の出荷台数が、はじめてのマイナスに転じたのである。伸びが鈍化したのではない。出荷量そのものが前年比で0.1%減少したのだ(IDC調べ)。とりわけ第4四半期には6.3%減となった。

スマホがつまずいた理由の一つは、中国市場の期待が大きすぎたことだが、そのほかにもう一つある。コストを軽視しすぎたことだ。その象徴がAppleのiPhoneXで、期待ほどの成長にはなっていない。理由は簡単で、値段が高すぎたためだ。これまでもiPhoneは新機種が出るたびに価格を上げてきた。今や上位機種は10万円を超えている。多機能、高性能といってもスマホに10万円出す消費者は多くないということだ。

iPhoneの次期モデルはディスプレイにSamsung製有機ELを搭載するらしい。その有機ELの価格は750ドル程度と聞いている。ディスプレイコストはスマホの4分の1程度が一般的である。そうなれば、どんなに他のパーツでコストダウンしても本体価格は25万円程度となる。それでも消費者はついてくるとAppleやSamsungは読んでいるようだが、まったく馬鹿げている。

何が言いたいかというと、現在のところEVはかなり高価で、富裕層が買っている。しかし、大衆層にまで市場が広がった時には価格の壁に突き当たるということだ。

エンジン車が3万点も部品があるのに対して、EVは1万点と1/3程度なのだから、もっと安くなるはずだがそうなっていない。エンジン車は年間1億台近く売れるから量産効果が働くため、100万円でも商売になる。ところが、EVが1000万台売れたとしてもエンジン車の1/10。だとすれば、価格競争では当分、ハイブリッドの優位が続くとみるべきだ。

もちろん量産が進めば、規模の効果が出て価格は下がるだろう。しかし、本当に量産できるのか。それは決して簡単ではない。

Teslaの第3段階EVの「モデル3」ですら量産でつまずいている。パナソニックはリチウムイオン電池の量産にいつでも入れる体制を整えており、Tesla側もすぐにでも量産体制に移れるとアナウンスしていたが、思うようには進んでいない。

部品点数が少ないEVだが、リチウムイオン電池の発火リスクが絶えない。電池自体には問題はないかもしれないが、組立工程で温度制御や衝撃からの防御のための複雑な機構を組む必要がある。Teslaはこれらを自動化することで大幅なコスト削減を目指したが、その難しさに頭を抱えているそうだ。

「先の見通しが立たない。今は地獄だ」と、いつもは強気のElon Musk CEOが嘆いているとの報道もあった。資金はふんだんにあるTeslaですらこうなのだ。果たして中国メーカーがどれだけ予定通り進めるか、かなり疑問だといってよいだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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