Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 服部毅のエンジニア論点

12月発売予定のIntel Core Ultraプロセッサ組立・テスト現場を見てきた!

米Intelが9月19日に発表した、AI機能搭載のクライアントPC向けプロセッサであるCore Ultra Processorの後工程は、同社のマレーシア工場で行われており、そのクリーンルーム内で作業の様子が一部のPC関連メディアに公開された。ダイシングとソート(選別検査)までの様子は前回紹介したので(参考資料1)、今回は、ペナン島にある「Penang Assembly and Test」(PGAT)部門で行われている後工程後半のアセンブリと最終テストを紹介しよう。

図1 Intelマレーシア後工程工場ペナンキャンパスの製造施設 出典:著者撮影

図1 Intelマレーシア後工程工場ペナンキャンパスの製造施設 出典:著者撮影


12月14日に発売されるCore Ultra(開発コード名Meteor Lake)は、チップレットや2.5D/3D-ICを使った先端パッケージで出来ており、このCPUチップレットは、米国オレゴン州の開発試作ラインでEUVリソグラフィを使って製造されている。9月29日にはアイルランド工場でもIntel 4プロセスノードでの量産を開始する式典を行ったばかりである (参考資料2)。


アセンブリ用クリーンルーム / Intel

図2 ペナン島にあるアセンブリ用クリーンルーム 出典:Intel


クリムキャンパスでダイシングとソートを経てテストに合格したダイは,ペナンキャンパスに送られて,アセンブリと最終テストが行われる。


(1)アセンブリ工程
アセンブリの最初の工程では、ダイを有機樹脂製基板に載せて熱処理して電気的に接続した上で,ダイ周辺と基板のダイの隙間をエポキシ樹脂で覆う(図3〜5)。これによって、ダイをしっかりと基板に固定するとともに耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐候性を付加する。


有機樹脂基板にCore Ultraプロセッサのダイを載せる装置の内部 / Intel

図3 有機樹脂基板にCore Ultraプロセッサのダイを載せる装置の内部 出典:Intel


その作業は自動化されているが、目視とトレイの搬送は手動 / Intel

図4 その作業は自動化されているが、目視とトレイの搬送は手動 出典:Intel


ダイ周辺をエポキシ樹脂で覆った有機樹脂基板 / Intel

図5 (データセンター向けXeonプロセッサ用の)ダイ周辺をエポキシ樹脂で覆った有機樹脂基板 出典:Intel


ダイの周辺へのエポキシ樹脂の塗布状態を目視で検査した後(図6)、熱伝導材をダイ表面に塗布してから、表面に放熱用のヒートスプレッダを貼り付けるという工程で組み立てられる。ただし、Meteor Lake のようなクライアントPC向けプロセッサにはヒートスプレッダは装着されない。


Core Ultra プロセッサダイの周辺へのエポキシ樹脂塗布状態を目視検査 / Intel

図6 Core Ultra プロセッサダイの周辺へのエポキシ樹脂塗布状態を目視検査 出典:Intel


(2)最終テスト工程
完成したプロセッサ(図7)は、まずバーンインテスト(高温での検査)をおこなう。高温で定格よりも高い電圧を印加してストレスを加えた状態で基本動作試験を行う(図8)。その後、一連の電気的テストを行い、CPUに備わる基本機能が全て正常に動作するかどうかをチェックする(図9)。


完成したトレイに載った20個のCore Ultraプロセッサ / Intel

図7 完成したトレイに載った20個のCore Ultraプロセッサ 出典:Intel


ロボットがダイを搭載した有機樹脂基板をバーンイン装置へ移送 / Intel

図8 ロボットがダイを搭載した有機樹脂基板をバーンイン装置(奥に位置しており見えない)へ移送 出典:Intel


テスト工程 / Intel

図9 テスト工程 出典:Intel


そして最後に、「Platform Performance Validation(PPV:プラットフォームとしてのパフォーマンス検証)」を行う(図10)。ここでは、実際にエンドユーザーが使う環境を想定したテストを行なう。外付けのGPUやSSDなどのストレージデバイスなど各種周辺機器を実際につないだハードウェア上で、WindowsなどのOSを動作させて、CPUが問題なく動くのかを確かめる。つまり、プロセッサが実際のPCに収まった状態に極めて近い環境で動作試験が行われ、合格した製品だけが、マレーシアのペナンキャンパスから世界中の顧客に出荷される(図 11)。


 / Intel

図10 PPV工程 出典:Intel


 / Intel

図11 プロセッサ製品の梱包・出荷工程 出典:Intel


次回のIntelマレーシア工場見学記(第4回=最終回)では、後工程プロセス以外の部門(デザインおよび開発ラボ、不良解析ラボ、テスター製造部門など)を紹介しよう。

参考資料
1. 服部毅、「Intel最大のマレーシア後工程工場のクリーンルームに入ってきた!」、セミコンポータル (2023/09/26)
2. 服部毅、「Intel 4の量産を開始したアイルランドのIntel Fab 34には複数のEUVが導入」、マイナビニュースTECH+ (2023/10/02)

国際技術ジャーナリスト 服部毅
ご意見・ご感想