世界不況だからこそ、日本経済を強くするための一人ブレーンストーミング

円高から世界経済は悪いが日本は悪くない、と考えることさえできるのではないだろうか。世界が悪いからといって日本までも悪いと考える必要はない。今は必要以上に悪く考えすぎてはいないだろうか。実は、こういった必要以上に悲観的に考えることは将来を考えるととてもまずい。というのは、次のチャンスを逃してしまうからだ。

あまりに縮こまりすぎると、圧縮応力でつぶされてしまい次のステップへ飛躍できなくなるのである。ではどうすべきか。日本国をつかさどる政治家あるいは行政府の人間なら今こそ、円を世界の基軸通貨にすべきだと主張する絶好のチャンスであることを認識すべきであろう。世界、いやアジア全体を対象としなくても、まずは韓国、台湾から始めて見るのも良い。出来るところから円を基本通貨に使うことを始めてみる。それをアジアへ広げていく。海外の人たちに円の強さを認識させることで、基軸通貨としての存在感を強めていく。こうすると日本企業は為替変動に左右されることなく、経済活動に専念できる。

GDPの2/3が消費活動である日本は、消費者がお金を使うように仕掛けると間違いなく景気は浮揚する。失われた10年でやったことは、GDPの1/6しかない公共事業にひたすら税金を投入してきたことだけだった。これではGDPを動かせるはずはない。公共事業＝社会主義的事業であり、グローバルな市場経済に影響を及ぼしたり、日本の地位を高めたりするものでは決してない。

では消費者がお金を使うためにはどうすべきか。日本の消費者は米国とは違い、将来の不安があれば貯金する。不安が減れば消費する。では不安を取り除くにはどうしたらいいか。安心して働ける職場を求めることだ。グローバル化が進む中で、安心して働ける職場とは何か。世界に勝てる企業に変わることだろう。そのためには企業はどうすべきか。補助金に頼ることではないだろう。公共事業に頼ることではないだろう。グローバルな企業はどうやって勝ってきたか。ひとえに競争力を高めてきた。

80年代日本にやられた米国の半導体企業は日本の良いところを探し、自分たちにあてはめられるところを必死で探した。しかも日本企業とは違う強みを求めて。トヨタの「カンバン方式」も「実装」も立派な英語になっている。カンバン方式を見習って導入した米国企業は多い。日本に勝つために日本の良いところを採り入れることで日本と同じ土俵に上げ、さらに自分の強いところを強くしていった。こうして競争力をつけた。

今、同様にグローバル企業の良いところや良い考え方を採り入れて日本の良いところとミックスすることは日本を強くする方法の一つだ。悪いところは捨てればよい。例えばひたすら社員の首を切ることはやるべきことではない。残された人たちの心情を考えれば、首を切ることで残った社員のモチベーションは下がるからだ。そうなると企業の活力は減退する。従業員は次の職探しに奔走し仕事どころではなくなる。米国の半導体企業はこれを80年代に学んできたはずだ。80年代、米国のエンジニアから、首切りが始まるとみんな職探しに奔走し仕事が手に付かないという話をしばしば聞いた。だからすぐ首を切ることがベストではないことは、まともな米ハイテク企業の経営者なら知っている。日本の経営者はこれを真似してはいけない。

ではどうするのか。経営者が行うべきことは一つ。社員の心を一つに向かわせ、力を増幅させることである。そのためモチベーションを上げることは言うまでもない。カルロス・ゴーン氏が日産の社長に就任してわずか1年半で2兆円もの借金を返せたのは、社員の心を一つにまとめたことが最も大きい。各企業には各企業のこれまでの蓄積があり、ノウハウがあり、一概にこれだということはできない。だからこそ、各企業がブレーンストーミングしてベストの解を見つけることが重要なのである。これをうまくやるかどうかで、後に差となって表れてくる。これまでの勝ち組といわれる海外企業を見ていると、皆そうしてきた。

企業が世界に勝てる力をつけ、従業員が安心して力を合わせて業績を上げていけるようになれば、お金を消費に回し日本経済は世界のトップに立てる。これが一人ブレストの結論になるかもしれない。