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新年明けましておめでとうございます、新エネルギー時代が始まるこの10年

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新年明けましておめでとうございます。今年もセミコンポータルにおいて、良質な記事をお届けしたいと思います。半導体業界を中心に、ハードとソフトを含めた製造業への取材を行い、それを元にテクノロジー、インダストリー、マーケットなどのコラムで半導体産業の役に立つ記事を提供します。ブログはほんの手掛かりにすぎません。ブログの裏付けは記事において反映する、これが基本方針です。今年もどうぞよろしくお願いします。

この正月、新聞やテレビから、半導体業界にとってのニュースらしいものはほとんどない。むしろ、今年の抱負というか期待というか、新しい市場や期待、見通しなどについての記事が多い。日本経済新聞や日刊工業新聞などを見ても、今後の成長分野として環境や電気自動車、スマートグリッド、再生可能エネルギー、LED照明などについて期待を寄せている。

これらの分野をじっくり見ていると、共通するものがあることに気が付く。これまでの新聞ではその共通項に関する議論は全くされていない。これまでそれを指摘する議論さえ、聞いたことがない。それは何か。

答えは半導体である。これまでは半導体=微細化あるいはナノエレクトロニクスなどという捉え方が多かった。これでは環境やエネルギーなどの新しい分野へ半導体を展開する動き(proliferation)を捉えることはできない。電気自動車や、送電網(パワーグリッド)、新エネルギー、LED照明などをドライブするのは実は半導体テクノロジーである。逆に、半導体デバイスなしで、これらの新しい市場を実現できるだろうか。半導体デバイスなしで市場において競争できる電気自動車や、太陽電池パネル、スマートグリッド、LED照明が作れるだろうか。こう考えると、半導体を握っていなければ将来は開けないことになる。

電気自動車は巨大な半導体市場になることを自動車メーカーが指摘していることをレポートした。スマートグリッドでは、電力量を平準化するため、家庭、工場、オフィスなど人が関係する全ての設備と発電所が双方向で情報のやり取りが必要になる。2009年12月31日の日経新聞では、東京電力や関西電力など電力各社がスマートグリッド構築に2020年までに1兆円を投資することを伝えている。この情報のやり取りを半導体なしでできるだろうか。

さらに太陽エネルギーの一つ太陽電池は、一つのシリコン系セルが発生する電圧はわずか0.7V程度、GaAs系でも1.5V程度。となると70V程度の電圧を発生させるためにはシリコンでは100セル分を直列接続しなければならない。太陽電池は単なるpn接合のフォトダイオードであるから、フォトダイオードを100個も直列に接続したものだと考えると、もしそのうちの1個でも光電流が小さければ、取り出せる電流はその1個の電流で決まることになる。さて、どうやって100個全部のフォトダイオードを完全に正常動作させればよいか。

ここに知恵が求められる。数個のセルごとにツェナーダイオードを並列接続させてもよい。電流×電圧の最大値を常にトラックしていく手もある。いずれの場合も半導体で制御することになる。

LED照明はLEDを数個実装して使う。これらのバラつきを減らすため、定電流回路で制御することが求められよう。初期的にはバラつきが少ないLEDを選別して使うことはできる。しかし使っていくうちにLED半導体チップのバラつきが大きくなり、内部抵抗が増えるかもしれない。2万時間を保証するなら、定電流制御は必要だろう。消費者が使っているうちに、A社のLEDは光が全く変わらない、故障もしない、という評判が立てばA社のLEDランプ製品は売れるにちがいない。半導体を使えばこれが可能だ。半導体を使わなければ、LEDの光がバラつくという苦情が来るかもしれない。


英CamSemi社のプラグサイズの電源(真ん中)
英CamSemi社のプラグサイズの電源(真ん中)


ありふれた応用にも半導体に知恵を吹き込むと、全く新しい価値の高い製品ができる。例えば、2008年2月に訪れた英国ケンブリッジにあるCamSemi社のAC-DCコンバータ(いわゆる100Vなどの交流を直流にするための電源回路、あるいはパワーマネジメント回路)は電源プラグほどの大きさしかない。100Vのコンセントにさすと、直流3.3Vあるいは5Vが出てくる。スイッチング電源ICながら、シリーズ電源並みにノイズを出さない知恵を織り込み、効率が90%もあるからここまで小さくできるのである。

新エネルギーの時代は半導体にとっての宝庫のような魅力的な応用分野、市場が出来てくる夢の時代となる。この市場を自分の元に引き寄せるか引き寄せないかは半導体メーカー次第。2010年から始まる2010年代は半導体がさらに成長できる10年間となる。今年も2月に英国取材を行い、全く新しい英国の技術、考え方、ビジネスモデルなどを英国特集で紹介する。日本の半導体産業に従事する方たちのヒントになる情報を提供したいと願う。

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