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電気自動車時代の到来から見えてきた巨大な半導体需要

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電気自動車(EV)の時代は意外と早く来る。EVに必要な半導体の市場はガソリンエンジン車の2倍以上使われるようになる。日産自動車は2009年の8月に「ティーダ」相当の電気乗用車「リーフ」を2010年に発売することを明らかにしたが、日産自動車のフェローである久村春芳氏は、ガソリン車に使われているエレクトロニクスは30%だがEVになると70%を超える、とSEMI主催のセミナーで述べた。

日産のEV「リーフ」

日産のEV「リーフ」


EVはガソリンを使わずに走るため、環境にやさしいという面だけが強調されやすいが、ガソリンエンジン車と比べて、加速性はEVの方が圧倒的に優れている。内燃エンジンよりもモーターの方が回転トルクは大きいためだ。3.5リットルのガソリンエンジンを積んでいる「フーガ」は抜群の加速性能を誇り、30m走行するのに3.7秒しかかからないが、ハイパーミニ車の「リーフ」は同じ3.7秒で27mまで行く。フーガとさほど変わらない。同じクラスのガソリン車だと3.7秒で17mしか行かない。

ただ、EVの加速性能を上げるのは難しかったと久村氏は語る。加速がピークに達する時間がEVはガソリン車よりもグンと短く、ピーク後に下がって振動するリンギング現象が起きてしまうからだ。ガソリン車だと立ち上がりが緩やかであるため、リンギングは起きないが、加速は遅い。「リーフ」はリンギングを防止するのに苦労したとしている。

EVはさらにITサポートをもっと強化しなければならないという。例えば充電が終わるころには、「充電が終わりましたか」とたずねる。また充電ステーションのマップを表示しておく。充電完了するまでの時間の表示や残り時間の表示なども求められる。タイマーコントロールも必要だ。あと何km走れるか、という情報を表示することは、日産が携帯電話を利用するサービス「カーウィングス」と協力して進めていきたいと久村氏は言う。こういったIT環境にはSoCが欠かせない。

日産はリチウム(Li)イオン電池の開発にも1992年から続けてきた。円筒型ではないラミネート型Liイオン電池は2000年ころの性能よりも2倍のエネルギー容量、半分のサイズにできるようになったという。現在、エネルギー密度は140Wh/kgになるという。Liイオン電池はLiイオンの電極から電極への移動により電荷を運ぶ電池であるため、Liイオンが抜けても安定した電極が求められる。電極が劣化して等価的に内部抵抗が高まると、電池の寿命がやってくる。いかに電極の劣化を防ぐか、ここが電池技術者の腕の見せ所となる。

EVでは軽量化のため電線を細くしたい。このため出力3.6V前後のLiイオンセルを100個くらい直列接続する。このためLiイオンセルの特性を最初に揃えていたとしても、使っているうちにセルごとに劣化の程度が異なり、特性がばらつくことになる。リニアテクノロジーが2009年に出荷したリチウムイオンバッテリスタック管理用のパワーIC、LTC6802は電池1個1個の電流が一定になるように制御を行うため、リーフではないが、三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」に使われている。1個のLTC6802で最大12個までのセルを管理できる。


日産自動車が展示会で見せたバッテリスタック

日産自動車が展示会で見せたバッテリスタック


EVでは、パワーステアリングの油圧は使われなくなり、モータードライブに替わる。となると小型モーターを駆動するためのパワーICあるいはパワーMOSFETかIGBTが求められる。加えてフロント/テール・ランプは消費電力の低いLEDになる。LEDドライバも必要だ。

充電するためのインフラにも半導体デバイスは使われるようになる。過充電防止、過電流検出防止、急速充電、DC-DCコンバータ、さらにはスマートハウス、スマートグリッド、さまざまな半導体デバイスの需要が喚起されることになる。日産自動車は日本に限らずグローバルな企業30社とパートナーシップを結び、EV開発を推進していくと久村氏は結んだ。

(2009/12/25)

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