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ナショセミ、太陽電池パネルの出力を最大化する小型のデバイスを国内で出荷開始

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パワーマネジメントチップに強い米ナショナルセミコンダクタ(National Semiconductor)社が太陽電池パネルの出力を最大限に上げるためのデバイス、SolarMagicパワーオプティマイザを日本市場に出荷し始めた。5月27日に欧米市場で出荷した製品を日本市場にも供給することになる。SolarMagicパワーオプティマイザを使わない太陽電池パネルと比べ、年間発電量が32%増えるというシミュレーション結果が出ている。

SolarMagic(TM) Milestone


このSolarMagicパワーオプティマイザは、外形寸法10.8×13.4×4.7cmの小さな箱に入った重さ1.1kgという小型のデバイスである。Nationalは自社開発のチップをこの箱の中に組み込み、この製品を太陽電池パネル1枚につき1個取り付ける。この製品を太陽電池パネルに組み込み、パネルを販売するパートナーとして戸建住宅のメンテナンスとリフォームを手掛けるウエストホールディングス社と提携関係を組んだ。傘下に骨太住宅、ハウスケア、ハウスドクター、サンテック、イノベーションアライアンスを持つ、このホールディング会社は、日本市場において太陽電池パネルの設置ビジネスを展開する。

これまでの太陽電池パネルは、日影が多い住宅、日照時間の短い住宅には設置するメリットが少なく、ビジネスが成り立たなかった。特に太陽電池パネルは、日影やごみ、鳥のフン、落ち葉、雪などがパネル全体ではなく一部のパネルの上に乗ると、各太陽電池パネルの出力が一様ではなくなる。パネルを直列接続している太陽電池では一つのパネルの出力が小さければその出力に左右されてしまう。このためトータルの太陽電池出力が下がってしまった。このため日照時間の少ない住宅や南面の屋根の上に太陽光が遮られることが多い住宅では太陽電池パネルの設置を推奨してこなかった、とウエストホールディングスの池田直人常務取締役は述べる。今回、Nationalとパートナーシップを組み、SolarMagicパワーオプティマイザを組み込んだ太陽電池パネルを販売できることで、日影の多い住宅にも再度、購入を検討してもらうように提案すると言う。


シミュレーション条件と結果


Nationalは、SolarMagicパワーオプティマイザを組み込む太陽電池と、組み込まない太陽電池との出力の違いをシミュレーションで求めた。A)南側の屋根にパネルを3枚設置する従来の住宅、B)南側の屋根に3パネル、北側の屋根に3パネルを設置する住宅、C)南側の屋根に3パネル、北側の屋根に3パネルを設置しSolarMagicパワーオプティマイザを組み込んだ住宅、という3つの場合を比較した。SolarMagicパワーオプティマイザはパネル1枚ごとに設置する。各パネルは、直接接続している。

1月から12月までの年間発電量はA)の場合は1503kWh、B)の場合は1834kWh、C)の場合は2421kWhという結果を得た。SolarMagicパワーオプティマイザを組み込むことで出力は32%上がり、従来のように南側に3枚しか設置しない場合と比べて61%向上した。今、これを実証するため、実際にパネルに太陽光を照射する実験を御殿場において行っている。

シミュレーションで注目すべきは、冬至が来る12月における出力がSolarMagicパワーオプティマイザを用いない場合にはA)が88kWhなのにB)は30kWhとむしろ低下していることだ。これはパネルをすべて直列接続しているため、パネルの内部にツェナーダイオードやバックワードダイオードを配置しても太陽光が照らない北向きのパネルはかえってパネル全体の出力電流を下げていることになる。

SolarMagicパワーオプティマイザを用いると、日の当たらないところでも出力を上げることができる。しかし、なぜ出力を上げることができるのか、そのメカニズムについては明らかにしない。ただ一言、アナログ回路とパワーマネジメント回路を活用し、MPPT(maximum power point tracking)技術を使っている、とナショナルセミコンダクタージャパンの代表取締役社長Jeff Waters氏は答えた。

そこで、Nationalが公開しているwww.solarmagic.comによると、パネル間のバラつき(ミスマッチ)がなぜ問題かというFAQの中に、考え方を述べている箇所があるのでこれを紹介しよう。直列接続しているパネルの一ヵ所に問題(日影や鳥のフンなど)がある場合、最も低い出力で全体が左右されてしまう。このため、1)システム設計者は、各パネルの性能を出来るだけ隣のパネルの性能と近づけ、設計の効率を上げようとする。2)太陽電池のパネル特性カーブの中に、電力すなわち電圧と電流との積を最大にするポイントがあり、それをMPPと呼んでいる。

この1)と2)の記述から、SolarMagicパワーオプティマイザは、電流が流れにくい日影などの条件では、電圧を最大になるようにして電力が最大になるように調整しているのではないか、ということだ。MPPT技術はそのポイントを追跡し電力が最大になるように調整する技術ではないかと推測される。


(2009/06/23 セミコンポータル編集室)

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