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スーパーコンピュータは本当に必要か、使用目的・技術面から考える

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新政府による事業仕分けについてさまざまな事業に関連する分野から賛否両論が出てきている。エレクトロニクスでは次世代スーパーコンピュータ技術の開発予算が凍結という判断をされ、菅直人副総理が待ったをかけた。そもそもこの事業仕分けの基本を考えてみると、国家歳入の2倍もの予算をこれまで認めてきた国会側と、それを提出してきた霞が関側双方に問題がある。

スーパーコンピュータで1位になることがどれだけ意味があるか、という質問を蓮舫議員はされたが、問題はそこにあるのではない。スーパーコンピュータを開発する意味が今、本当にあるのか、ということだ。開発を推進してきたNECや日立製作所はスーパーコンピュータを開発、事業としてやっていくことに対してリターンが少ないから止めたのではなかったか。今は富士通1社しか開発していない。だからこそ、国がやればいい、という意見はある。事業仕分けに対する意見をNECや日立、富士通から聞いてみただろうか。

スーパーコンピュータの世界ランキングを、11月17日の日本経済新聞が伝えている。世界のスーパーコンピュータの性能トップ500のうち、日本製コンピュータ「地球シミュレータ」(NEC製)は従来の22位から31位、「FX1」(富士通製)は28位から36位に後退した。トップは米国のクレイ社、2位はIBM社、3位もクレイ社、以下トップ10位内に米国SGI社、サンマイクロシステムズ社、中国の国防科学技術大学が入っている。IBM社を除くとすべてNECや日立製作所よりも小さな企業がスーパーコンピュータを開発しているのである。NECや日立よりも小さな企業がスーパーコンピュータでトップレベルをゆく現状の競争力とは何か、ここに日本企業の競争力の本質的な問題がある。

もう一つの大きな特徴は、スーパーコンピュータの多くの納入先が軍関係の施設だということだ。1位のオークリッジ国立研究所、2位と7位のロスアラモス国立研究所、6位の航空宇宙局、8位のアルゴンヌ国立研究所、10位のサンディア国立研究所はすべてかつての原爆開発「マンハッタン計画」を推進する目的で設立された研究所である。中国の大学は名称からして明らかに軍事目的だろう。テネシー大学やテキサス大学での使用目的の本音はわからないが、米国でさえ軍事目的は公にされないことが多い。このうちのいくつかの研究所は今も核開発の拠点となっているらしい。

軍事研究所を持たない日本がスーパーコンピュータの平和利用を推進するための気象シミュレータをはじめとする流体力学計算やモンテカルロシミュレーションなど多次元方程式の計算に多額の費用を投じるのはいかがなものか、というのが本来の事業仕分けの趣旨であろう。逆に軍事目的で使っているのであれば、それはきちんと内閣の理解を求め、公にはできないが事業仕分けから除くようにはじめから要請しておくべきだろう。日本の軍事機密は公にしてはならない。

技術的な観点から述べれば、1位となったクレイのスーパーコンピュータには、AMDのクワッドコアマイクロプロセッサOpteronが使われている。かつてはガリウムヒ素半導体で高速コンピュータを作るという国家プロジェクトが日本にはあった。かつては高速プロセッサが性能を決めていたことは事実である。しかし、今では性能はプロセッサで決まるものではない。プロセッサの動作周波数は熱限界まで上げているからこそ、ボトルネックはむしろ他の技術で決まっている。例えばプロセッサモジュールとプロセッサモジュールを結ぶバスは10Gビット/秒以上の高速バスが必要とされ、AMDはHyperTransportという高速バスの開発と標準化を進めてきた。

日本がスーパーコンピュータを開発し、さらにリターンを求めようとするなら、むしろ高速バスの標準化を海外チームと一緒に進め、他の半導体やコンピュータメーカーよりも高速の周辺チップや技術をいち早く開発することが筋ではないだろうか。バスの標準化仕様を早く知るか知らないかで競争力に大きな差が付く。そのためには標準化委員会で情報収集したり要望を述べたりすることがとても重要となる。

全て自前技術で開発するなら、費用は限りなくかかってしまう。標準化できるところは標準化してコストを安くし、キモの部分だけ独自開発することこそ、高性能な製品を安く生産するための定石だ。スーパーコンピュータでさえ例外ではない。残念ながら、半導体やエレクトロニクスでは標準化を進めることが競争力を生み出すうえで今や極めて重要になってきたことを、メーカー経営者は気づいていないという嘆きの声をよく聞く。メーカーの経営者が気づいていないのなら高級官僚が知らないのは当たり前だ。

税収が40〜50兆円しかない国家財政なのに80兆円もの予算を10年以上にも渡って組み、そして認めてきた、というなれ合い構造は、国民が汗水流して得たお金(税金)を200%使い、そのうちの100%分を借金して子供や孫に支払いのつけを回してきたという意味である。だからこそ、大胆に不要なものをカットしようという考えの事業仕分けだったはず。蓮舫議員の追求が厳しすぎるとの声はあったが、人さまから預かったお金(私たちの収めた税金)を大事に使おうという意識が事業仕分けの原点であることを忘れてはならない。

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