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Imec、脱炭素のためのリソとエッチング工程の評価手法を開発

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半導体工場の脱炭素化が求められるようになってきたが、ベルギーの研究開発会社であるimecは、リソグラフィとエッチング工程における環境負荷を定量的に評価するシミュレーションを発表した。半導体プロセスの環境評価によりCO2削減への対策を打つことができる。まずはリソとエッチング工程でEUVの優位性が示された。

Imecの工場では、環境にやさしいプロセスを目指し、フッ素を使ったエッチングガスを減らし、EUVスキャナーのスループットを最大限上げ、水素や水の使用量を減らす、などのソリューションを開発してきた。IC製造で排出されるCO2は、次の10年間で4倍にも増えると見られている。ウェーハの生産量が増えるとともにICの集積度が高まるからだ。このようなシナリオに対処するため大手半導体メーカーは2030〜2050年の間にカーボンニュートラルを達成することをコミットしている。

カーボンニュートラルとは、排出されるCO2と吸収するCO2量を同じにしようという試みのこと。例えば植物をたくさん植えると光合成によりCO2を吸収して酸素を出すから、カーボンニュートラルを達成するための有力な手段の一つである。

Imecでもチップ製造にはCO2排出実質ゼロを目標にするサプライチェーンを構成するSSTS(Sustainable Semiconductor Technologies and System)プロジェクトを立ち上げた。このゴールの一つは、半導体産業に独自のボトムアップ手法を提供することである。これは、プロセスとフローの開発中に環境に大きな影響を与える評価を高い粒度でわかる仕組みを作ろうというもの。

複数のパートナーと協力しながらimecは、SSTSプロジェクトの枠組みの中で、環境へのインパクトを定量的に評価できるモデルを初めて開発した。特にリソグラフィとエッチングの工程に関して様々なプロセスノードに渡って調べた。「この仮想ファブのツールを使って3nmのロジックプロセスノードを製造するリソグラフィとエッチング工程では、排出されるスコープ1(工場内の装置や設備からの排出)とスコープ2(外部から調達するエネルギーからの排出)の45%が影響することがわかった」とimec技術スタッフの中心メンバーであるEmily Gallagher氏は述べている。


Comparison of Scope 1 and 2 Emissions [Normalized}  by technlogy for full Flow / Imec

図1 リソグラフィとエッチング工程でのCO2排出のシミュレーション プロセスノードの微細化と共に排出量は増加 出典:Imec


図1で表されているように、N7プロセスノードでは、それまでの10nmや7nmのようなマルチパターニングによるCO2排出量と比べ、EUVを使うことで、1回で露光が済むため明らかに減少するという差が見られた。さらに実際のファブでの排出量とも定量的に比較している。例えば、EUVのドーズ量を10%減らすとウェーハ当たりのCO2排出量は0.4kg分を節約できた。このことは、大きなファブで毎月40トンものCO2を削減できることになる。

ただ、図1では、さらに微細化ノードを進んで行けば行くほど、CO2の排出量は増えていく。EUVといえども線幅・線間隔を微細にするためにはマルチパターニングが必要となるためだ。このため、さらなる削減手法が求められる。

Gallagher氏は「ImecはEdwards社とパートナーシップを組み、300mmのクリーンルーム内のEUVリソグラフィでは水素回収システムを設置した」と言う。これによって水素の70%を回収できるとしている。

加えて、「EUVリソグラフィでは、0.33NA(Numerical Aperture:開口率)と高NA(0.55NA)の装置共に、低ドーズ量のソリューションの開発にも注力している。また、従来よりもガス消費量を減らすことで、持続性(サステナビリティ)にも集中している」と述べている。例えば薄膜の厚さを薄くすればガス量を減らせるため、nmレベルの厚さまで検討する。次のターゲットはプロセス全体に渡るCO2排出の影響を調べることである。

(2023/03/15)

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