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エッチングなどのインサイチュモニター可能な質量分析器をAtonarpが発売

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東京に本社を置き、シリコンバレーに活動の拠点を置くスタートアップのAtonarp社が半導体製造装置のインサイチュ・モニタリング向けの小型質量分析器をリリースした。半導体製造装置のチャンバ内でエッチングやデポジション時のプロセスガスの分析ができると共にリアルタイムで分析情報をフィードバックできる。いわばスマート製造の基本技術の一つになりうる。

Atonarp ASTON

図1  Atonarp社の小型質量分析計Aston 出典:Atonarp社


スマート製造、あるいは製造におけるデジタルトランスフォメ―ション(DX)がさまざまな製造現場で求められている。生産効率を高めるためだ。半導体製造でもDXによる製造の歩留まりや生産効率の向上は、コスト削減の有力な手段になりうる。その一つが、製造装置の現時点での状況(装置の健康診断)の把握による製造条件の最適化である。

例えば、エッチングや堆積するための製造装置では、プラズマで発生した物質がチャンバの壁に付着したり削られたりすることで、ウェーハ間のバラつきが生じてしまうローディング効果をリアルタイムで防ぐことができるようになる。ウェーハ間のバラつきやロット(Foupボックス)間のバラつきを減らすことができるようになる。そのためには装置内の「健康状態」をインサイチュで知る必要がある。

半導体プロセスは、特にFinFETやGAA(ゲートオールアラウンド)構造、3D-NANDでの高アスペクト比など複雑になってきていると共に微細化が進むため、小さなばらつきは大きなプロセス変動となりやすい状況にある。そこで最近ではEPCO(Equipment and Process Co-Optimization:装置とプロセスの協調最適化)が求められ、より精密な測定ツールとインサイチュ・モニタリングが重要になっているという。

そのためには、AI(機械学習)を使って実際のデータと機械学習モデルの入出力データとの相関を求める必要がある。実データはインサイチュで取得し、AIによる分析はクラウドベースで行うことでこれからのDXを使った半導体プロセスの最適化を図れるという。

今回、Atonarp社の小型質量分析器Aston(図2)は、製造装置内のチャンバ内で発生している物質をインサイチュで検出・分析する装置である。物質を分析することで、例えばエッチングでの終点検出やチャンバ内のリークの検出、量産前の調整などができるようになる。質量分析の基本は、四重極アナライザ方式だが、放電加工技術を使って双曲線の曲面を備えた電極を使い、イオンを取り出すことに尽きる。


質量分析器Astonのカギは、プラズマイオン化技術と自己クリーニング技術 出典:Atonarp

図2 質量分析器Astonのカギは、プラズマイオン化技術と自己クリーニング技術 出典:Atonarp


従来の質量分析器だと、エッチング工程では検出器のチャンバ内のフィラメントが反応性の高いエッチングガス(NF3やCF4、Cl2など)によって劣化し寿命が短くなるが、Astonでは、プラズマを利用してイオン化する技術を開発、フィラメントを使わずに済ませた。ここでは、検出すべき物質をRF回路で振動させ、分子振動と共鳴させることでイオン化させたとしている。

さらに、ReGenと呼ぶ自身でクリーニングする技術も導入した。ReGenは、チャンバ内に堆積した反応物を取り除くためのプラズマイオンを発生する。これら二つの技術を使って、センサの感度をMTBC(Mean Time Between Cleans)で数百時間も落とさずに動作させることに成功したという。

同社には、シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)だけでなく、日本のINCJ(産業革新機構)やライフサイエンスのニプロ、金融のSBIホールディングス、古河電工なども出資している。注力する製品は、この半導体製造向け質量分析器と、ライフサイエンス向けの光学式分光分析器の二つである。このほど5000万ドルの資金調達シリーズD獲得に成功し、合計1億1000万ドルの出資になった。創業者であり社長兼CEOのPrakash Murthy氏は東京在住というユニークなスタートアップ企業である。

(2021/10/01)

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