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AlとFeとSiだけで作った熱電素子を産総研・NEDOのチームが開発

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「おっしゃられて、貸そうか、まぁ」。覚えておられる方がいるだろう。高校生の頃、化学で習ったクラーク数(地球上に存在する元素の内、多い順に並べた元素の割合)「O, Si, Al, Fe, Ca, Na, K, Mg」 の覚え方である。この順に地球にやさしい元素といえる。この内のFe(鉄)とAl(アルミニウム)、Si(シリコン)だけで作った熱電変換素子を産業技術総合研究所、NEDO、アイシン精機、茨城大学のグループが開発した。

Al-Fe-Si系熱電子モジュール/汁音から200°C対応/1cm角7対のpn素子

図1 NEDO・産業技術総合研究所・アイシン精機・茨城大学が開発した熱電モジュール(上の2端子素子)


熱電変換素子は、半導体と似て、pn接合の電極間に温度差があると起電力を発生するデバイスである。これまではBiやTeなどの稀金属を用いることが多く、最近ではSiGeも多かった。稀金属は日本では生産が少ないため、政治的に利用されるケースがあり供給リスクを伴っていた。しかもTeには毒性がある。しかし鉄やアルミはどこにでもあり、シリコンは砂やガラスから作られる。いわば供給不安の全くない材料である。

熱電変換素子は、pn接合の接合面に垂直に二つの向かい合わせに電極を配置した構造で、pn接合に電流を流すと、片方の電極が温まり、もう一方の電極が冷える。この作用を利用して冷却素子として使う場合はペルチェ素子と呼び、逆に両電極の温度差を利用して発電すればゼーベック素子と呼ぶ。ただし、発電といっても、mV〜数十mVしか出力しないため、昇圧させる必要がある。今回の素子は、温度差5度で約6mV程度、電力にして85µWを発生させることができる。別の表現をすれば、ΔT=5Kで、100µW/cm2の出力が得られている。

この温度差を得るため工場での排熱や、人体の体温を基準として使う応用がある。例えば、工場のモータやポンプの排熱を利用することで発電し、低消費電力のIoTデバイスの電源として長期間動作させることができる。

ただし、実際の電子回路を動かすためには、3.3Vないし5Vに上げる必要がある。このためには、ゼーベック素子を直列および並列に接続するか、DC-DCコンバータなどで昇圧する必要がある。ゼーベック素子そのものはある程度コストが高いため、多数接続するわけにはいかない。しかも、電圧を安定化するためDC-DCコンバータは必ずいる。このため、コスト的な最適サイズを見つけて昇圧する方が合理的であろう。

今回は、材料科学(Materials informatics)の計算を使って、AlとFeとSiの組成(ストイキオメトリ)を絞り込み、Al2Fe3Si3という配合を見つけた。もちろん材料科学だけではずばりの組成は見つけられないため、さまざまな組成の組み合わせを1回のプロセスで実現できるコンビナトリアル手法も用いた。材料の組成制御まで含めると開発に1年程度で済んだとしている。しかも微妙な量の配合でp型にもn型にも制御でき、ドナーやアクセプタの不純物を添加する必要がないとしている。

この配合で機械的な硬さや剛性は、Si-Ge並みで、対酸化性にも優れているという。実際に小さな円形のウェーハでダイシングしてもチップは割れなかったという。


図2 発電機の上にお湯を入れたコップを載せ発電した Bluetooth LEでセンサデータを送りタブレットにデータを表示するデモを行った

図2 発電機の上にお湯を入れたコップを載せ発電した Bluetooth LEでセンサデータを送りタブレットにデータを表示するデモを行った


ゼーベック素子を並べて1cm四方のモジュールを4個組み込んだ発電機に手(体温)を充てると、発電しBluetooth LE(Low Energy)通信によりタブレットやスマートフォンに温度と湿度のデータを表示させるというデモを行った(図2)。

このチームにアイシン精機が参加しているのは、光通信モジュールを冷却するのにペルチェ素子を製造してきた実績があるためで、今後IoTの電源用途としても工場内の空調をもっと細かく制御するためのセンサにも使っていきたいとしている。

(2019/08/29)

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